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「そういう機会」

昨日、人に言われた。

「たまたまそういう機会がなかっただけで、○○さんはきっと仕事や役職を与えられれば、やれちゃうんだと思う。課長とかになっても、ちゃんと部下を使ってやっていけるよ」

それはお世辞で、課長とかになれる器でも、なってうまくやれる能力もない。
と思う。もしあれば、そりゃ嬉しいけど。

わたしは「どうかなぁ、できないですよ」と言ったし、心でもそう思っていた。

でも、よくよく考えてみれば――
というのは「場を与えられればこなせる」のところではない。
「そういう機会がなかった」の部分についてなのだが――

場を与えられたこともあったのだ。そういえば。

クリーニング店では、店長(マネージャーと呼ばれていた)を務めたこともあったのだ。
少ないながらも下に人がいたこともあったわけだ。
販促や売上改善などに努力したこともあった。

そんなこともあったなあ、と懐かしく思い出す・・・・・・
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きっかけ

なぜ、クリーニング店で働こうと思ったか。
アルバイトを探していたから。単純な理由。

なぜ、その業種にしたか。
ちょうど募集が載っていたから。情報誌に。
情報誌の時代だったのだ、そう、かなり昔。

住んでいるところと同じ最寄り駅で探し、
面接に行って採用された。

その辺りで何店舗か展開しているクリーニング店だった。

まわされたのは歩いて15分くらいかな?という店舗。
わたしの家は、駅を出て左側へ。
店は、駅を出て右側へ。
同じ駅だけど、生活圏が微妙に違う。

初日は面接をした工場内の事務所に出勤し、
そこから「課長」という人に連れられて店に行った。

それから10年、働くことになった・・・・・・

仕事内容

わたしはあまりクリーニング店を利用したことがなかった。
洗える服が多かったし、洗えなさそうなものも洗濯機で洗うことが多かった。
だから、いったいどんな仕事をするのか、漠然としか知らなかった。

イメージとしては、椅子に座っている。
お客が来たら立ち上がって受け付ける。おしまい。

しかし働き始めて3日もすると、忙しさに音を上げたくなった。
全然座ってなどいられない。

よく考えてみれば、品物を受け取って「はい、終わり」じゃ、誰の物か分からなくなる。
――そうよね。もちろん、そう。
だから、受け付けた物はタグをつけなきゃならない。

それに、受け付けるだけじゃなくて、渡さなくちゃならない。
――よね。もちろん、その仕事もあった。考えてみれば、そう。

渡すためにはすぐ渡せるように並んで、伝票がついてなきゃならない。
――なるほど。それは、そうだ。
工場から1日に2回配送がある。
洗った品物が届いたら、それを整理して、伝票つけて、それぞれの置き場に並べなきゃならない。

一日一日、わたしは疲れ果ててしまった・・・・・・

最初の1ヶ月

わたしが入ったのは3月24日。

仕事は思ったよりハードで体はきつい。
店は若い女性ばかりで、当時の言葉で言うと「きゃぴきゃぴ」していた。
わたしの年齢はやはり若かったけれど、「きゃぴきゃぴ」タイプではなかったので浮いていた。
また、若かったので、人に合わせていくのが下手だった。――今でも上手じゃないけど、当時よりまし。

仕事も人間関係も順調とはいいがたかったけど、なんとか持ちこたえた。
途中、辞めそうになることも、辞めさせられそうになることもあったけど。

しばらくすると、体は少しずつ慣れてきた。

そしてさらにしばらくすると、店が暇になってきた!

後から分かったが、クリーニング店は春が繁忙期。
一年の売上の大部分を春に稼ぐ!――くらいの気持ちで稼ぐのだそうだ。

そうだよねえ、やっぱり衣替えの時期が一番忙しいよねえ。
夏物から冬物への衣替えより、冬物をしまうときのほうが断然忙しい。

わたしは一年で最も忙しい時期に入ったのだ。それはつらいわけだ・・・・・・

店について

会社は、同じ地域に数店舗展開していた。
少し離れたところで営業している店も3つほどあった。

工場は別な場所にあり、店で預かった品物は工場へ集荷。
洗った品物は、また配送されてくる。

工場には営業さんと呼ばれる、自身で顧客を開拓して集配する人たちがいた。
また、各地に「取次店」と呼ばれるフランチャイズ店があった。
営業さんは基本給+歩合、取次店は売上のうち一定のパーセンテージが取り分。

事務所である本社は、工場とも店舗とも別に存在していた。

わたしが配属された店舗は、展開している店舗の中でも売上の最も多い店だった。

同じ繁忙期でも、売上の少ない店だったら、もっと楽だったと思う。
繁忙期は、売上の差による仕事量の差が大きくなるからだ。
だってもし売上が2倍なら、受け付ける作業も2倍、受け渡す作業も2倍、整理する作業も2倍、その他の細々した作業も2倍、合わせると2倍どころじゃなくなるからだ。

わたしは繁忙期用の人員だったようだが、辞める人がいたためちょうどよかった。

この店に4年ほどいた・・・・・・

当時を振り返る 若い忙しい店

わたしのクリーニング時代、ファーストターン。
4つの時代のうち、1番目。

入社して仕事に慣れるまで。

店は都心にあって、売上は会社の全店舗で2番目。
忙しい店で、仕事の手が早くないと勤まらなかった。
他の店が10分かけてやる仕事を3分や5分でやること。

この店での前半、若い人たちの中で働いた日々。

店舗マネージャーも若かった。
わたしより1歳くらい年下。
学生さんが3人、夜や土日に出る人たち。

この店に40代後半か50代なりたてくらいの人が入ったこともあったが、追われた。

みんな女の子で、若かった――わたしは若い部類に入ってなかったけど。
恋愛、合コン、短期留学、家族、映画、雑誌。
わたしのついていけない話題ばかり。

忙しいと言ってもそれは「この会社の中では」ということ。
暇なときにはお喋り――2人や3人しか一緒にいなくて無言のほうがおかしい。

仕事内容 その2

一日の仕事の流れを思い出してみよう。

朝、出勤したら、金庫からつり銭を出し、レジに入れる。
マネージャーは前日の売上を確認、過不足がないかも確認する。

時間になったらシャッターを上げて、開店。
軽く掃除。店の前なども掃いてみたりして。

午前のうちに配送がある。――「配送がある」って言い方はないかもしれないが、そう言われていた。
その時間になったら、工場への送り状に記入をし、配送の人に洗う品物を渡す。
そして洗った品物を受け取る。

洗った品物はついているタグの番号順に整理し、伝票をつけていく。
この作業は意外と時間がかかる。

終わると、渡した品物の伝票を整理する。
洗いあがってきたときのために、名前を書いたり、別置きになるものの小見出しを作ったりする。

当然、お客さんがやってきたら、品物を受けたり渡したりする。

閉店が近くなったら、「詰め」作業をする。
品物を渡したためにすいたポールや棚を詰めるのだ。
詰めていかないと、明日以降の品物が置けない。物が多いときは結構時間がかかる。

荷物などの整理をし、現金の過不足を調べ、閉店後金種表に記入。
現金を金庫にしまい、鍵をかけて帰る。

一日が終了・・・・・・

受付作業 品物を預かる_1

お客さまがいらしたら、受付をする。

まず、品物を出しにきたお客さん。

ざっと品物をつるし品とたたみ品に分ける。
なぜかというと、伝票はつるし品とたたみ品に分かれて出てくるからだ。
スーツ(つるし)、セーター(たたみ)、コート(つるし) と打つと、伝票は3枚になってしまう。
スーツ(つるし)、コート(つるし)、セーター(たたみ) の順で打てば2枚ですむ。

だから、持参した袋から1点ずつ自分で取り出すお客さんだと、ためいきがでる。
すべて出てくるまで打てないからだ。
お客さんとしては、1点出すごとに1点レジに打ち込んでほしい。確認したい。
でもつい言ってしまう――「全部出してください」。

レジによっては、適当に打ってもレジがまとめてくれる。
でもこれはあまり好きじゃない。
並べた順番にタグをつければいい、というわけにいかなくなる。
出てきた伝票をいちいち確認しながらタグをつけると、時間がかかって効率が悪い。

「つるし」と「たたみ」に分けたら、シミや損傷を確認する。
たとえば破れがあるのに気づかずに受け付けたら、後から「こんな破れはなかった」とクレームをつけられるかもしれない。
ボタンがとれていたり、糸引きがあったり、ほつれがあったり・・・・・・。
シミの場合は、しみ抜き料金をいただかなくてはならないし、何のシミか確認して工場に伝えなければならない。
シミによっては「落ちない可能性が高いですよ」とか前もって注意しておかなければならない。

それからレジを打つ。
まあ、この順番はどうでもいいのだけど。
すべて検品して並べてから打っても、1品1品確認してから打っても。

後の作業は他の業種のお店と一緒。
金額を伝えて代金を受け取る。おつりを渡す。

最後は伝票を渡す。これが引換券になるわけだから。
その時に、「仕上がり日はいついつです」と伝えて、それを伝票に書く。
レジによっては、仕上がり日が印字される。

お客さんはお店を出ていく・・・・・・

受付作業 品物を預かる_2

クリーニング物を出しに来たお客さんが、品物を置いて帰っていった。

わたしたちのすることは?

伝票に打たれているとおりの番号のタグをつける。
これはホチキスで。
何度もホチキスを使う人用のプロ仕様ホチキスもあるらしいが、会社の予算の都合上、一般的な事務用品のホチキスを使っていた。

日々何百何千回とホチキス留めをするので、手が腱鞘炎になりそう。
手の腹でホチキスを押すやり方を最初に教えられる。
やりにくいけれど、やがて慣れる。わたしは今でもこのやり方でホチキスを使ってしまう。

タグをつけたら、検品。
シミはないか、破損はないか。
見逃すと「こんなの最初はなかった」というクレームにつながるので、要注意。

それからポケット点検。
ボールペンなんて入っていたら、洗っているうちにドラムの中でインクが漏れて、その回の他の品物まで汚れてしまった、なんてことになるかも。
そんな危険なものではなくても、いろんなものが入っている。
何か見つけたら、引き取り時に返せるように、小さいものなら伝票につける。
大きいものなら「預かり品あり」と伝票に書く。

点検したものをそれぞれ配送用の袋へ。
ドライ品、ワイシャツ、水洗い品、特殊品(正絹の着物、毛皮、皮革など)。

伝票の整理をして、受付終了・・・・・・

受付作業 品物を渡す_1

お客さんが伝票を持って、品物を受け取りに来た。

まずは、品名を見る。
だってスーツやコートならポールにつるしてあるし、セーターならたたんである。
ワイシャツはワイシャツ置き場にあるし、毛布などは別置きになっている。
探しに行く場所が違うから。

それから、タグ番号を見る。
品物は番号順に並んでいるから。

あとは、「よしこの辺だ」とあたりをつけたところへ行く。

見つけ出したら、それをカウンターに持っていく。――あまり乱暴ではなく。

カウンターで、伝票の番号と品物についているタグ番号を照合する。
見つけにくい場所にタグがついているとなかなか照合できないので、なるべく見やすい位置につけるのが鉄則。
しかし客となった今は、「それは分かるんだけど、ここじゃ生地が破けそうで嫌だなあ」と思ったりする。

しみがあったものは、しみが落ちたか落ちなかったか伝え、確認してもらう。
これはしみ抜きカードに○や×が書かれているので、すぐわかるようになっている。

品物を袋に入れて、お渡しする。おしまい・・・・・・

受付作業 品物を渡す_2

簡単にすめばいいのだけれど、品物を渡すのに時間がかかることもある。

たとえば、「この辺りにあるはず」の場所にないとき。
これはいくつかの理由が考えられる。

 ・番号が入れ違って、多少ずれたところにある
 ・たとえば棚に入りきらないほど分厚いセーターだったりして、別置きになっている
 ・セーターだがつるされて来た またはジャケットなのにたたまれてきた
 ・遅れていて未入荷
 ・近い番号のお客さんの品物セットに一緒にセットされている
 ・何かのひょうしに思いもよらない場所にまぎれこんでしまった
 ・間違えてほかのお客さんに渡してしまった

最後の「ほかのお客さんに渡した」だったら最悪。

でもそれ以外の場合でも、なかなか見つからないこともある。
わたしが会得した秘訣は、「必ず店のどこかにある」と確信を持って探すこと。

たかが気持ち、されど気持ち。
新人時代はとかく「ないかも!」と不安になって探すので見つからない。
まず、落ち着いて! 店のどこかに必ずあるはず!と信念をもって。
すると見つかったりするのだ。不思議なものだ。

さらに経験値が上がると、「店のどこかに必ずあるはず」と思って探しつつも、「もしかしてこういうことか?」と見当がつくようになる。
「あ~、入荷チェックの間違いかな~、この品物、洗うのに時間がかかりそうなやつだったから」とか。「ここにいかにも間違いやすそうな番号の、同じ枚数のワイシャツがあるな~。間違えて渡したかな~」とか。

もうすっかりベテラン気分である・・・・・・

「間違って渡した!」

うゎー、考えたくないなー。

でも、あるんだな、やっぱり。
ちゃんと照合していても。

ない物が1つだけだった場合、その近くの番号の人の品物にくっついて行った可能性がある。
――これを、古い従業員の方は「おまけ」と呼んでいた。
そのお客さんの品物が1セットない場合、似たような番号の人に間違って渡している可能性がある。
――これを、古い従業員の方は「いれこ」と呼んでいた。

まず、最初の場合。――おまけ。
間違って渡した人を絞り込んでいく。
 ・番号が近い人
 ・なくなっているものがつるしならつるし品、たたみならたたみ品を出している人
 ・既に引き取り済みの人 (まだ引き取ってないなら一緒に渡すも何もないから)
可能性の高そうな順に、電話をしたりして「間違って多く渡してませんか~?」と確認していく。

これはドキドキだ。
自分の品物は受け取っているから、面倒だったら「ないです」と探さずに言われるかもしれないし。

次に、入れ違いで渡している場合。いれこ。
 ・同じ品物を、同じ数だけ出している人
 ・番号が近い、または似ている
 ・店にその品物が残っている かつ 既に引き取りに来ている

この3番目がやっかい。
「これかも」とあたりをつけた品物の伝票を、引き取り伝票の束から探すのだ。
これは引き取った日ごとに紐でつづられている。
引き取り日は、「出した日より後のはず」という絞込みしかできない。
1枚1枚めくっていくのの面倒なこと!

でも、引き取り伝票が見つかれば、その人に間違いない。
引き取った証拠があるのに、品物がある、つまり別な物を渡しているということだから。
それに、その人の品物はこちらにまだある。人質のようなものだ。
間違いなく交換に応じてくれる。

まあ、間違えないのが一番だけど・・・・・・

配送 受け渡し

さて、一日に二回、『配送』が来る。
わたしが入店した当初、これは工場勤務の男性社員だった。

やがてその後、委託になった。
社員を雇っておくより経費が浮くから。

それはともかく、配送がやってくると洗いあがり品がやってくる。
配送さんがたたみ品の入ったカゴを店内に運び入れたり、つるし品を店内のポールに移したりする間に、わたしたちは渡す品の準備をする。

ドライ品:番号XX番~XX番、何点 というデータを記した伝票を書き、ドライ品をまとめる。
水洗い品:番号XX番~XX番、何点 というデータを記した伝票を書き、水洗い品をまとめる。
水洗い品には、ワイシャツも含まれる。
ワイシャツは10枚を一組にして、数えやすいように結んである。

この品物を入れる袋は「ドライ袋」と呼ばれていた。
水洗いを入れても「ドライ袋」。

これは毎日どんどん渡してしまうものなので、少なくなると配送さんからもらう。
配送さんはそのために、常にある程度のドライ袋を持ち歩いていた。

ドライ袋の中には数やタグ番号を書いた伝票を入れ、外側には店名を大きく書いたものをピンで留める。
○○店 仕上がり日 ドライ(または水) XX番~XX番 ××点

配送さんはそれらを車に積んで、去ってゆく・・・・・・

配送 その後

さて、『配送』が帰る。
次は、届いた品物を整理して、番号順に置かなければならない。

順番は決まっていないけれど、まずたたみ品から見ていくと・・・・・・
届いた品物が入っているカゴから、1点ずつ取り出す。
取り出す際に、番号を読み上げる。
もう1人がチェック表のその番号を蛍光ペンで消す。(店によっては赤ペンとか。)
――お客さんが引き取りに来たのに品物がないとき、それが店に届いたのか未着なのか、このおかげで分かる。

番号を読み上げた品物は、だいたい50番ごととか、100番ごとに仕分けて置くと、後の作業が楽。
つまり、①-100番代、①-200番代、①-300番代ってこと。
①-000~999→②-000~999→③-000~999・・・・・・と続き、ラスト⑩-999の次は①-000という仕組みだった。

ワイシャツも同様に、取り出した品を10番ごとに仕分けながら、番号を読み上げる。
――ワイシャツは数が多いので、100番ごとではやりにくい。

つるし品は、まずすべてを番号の若い順に並べ替えてから、チェックをする。

あとは、1伝票ごとに品物をまとめ、まとめたものを番号順に置いていく。
遅れて届いた品は、だいぶ前の番号のところに入れ込まなければならない。

わたしが入店した店では、1伝票ごとにまとめていたけれど、比較的売上が少ない店では1品ごとに手書きの小見出しを書いてつけていた。
受け取る品が多い店は多いなりに、少ない店は少ないなりに、作業時間は似通っていたりする・・・・・・

閉店前に 詰め

一日、受付をしていれば、棚やポールから品物はどんどんなくなる。
引き取りに来るから。

隙間が空いたのをそのままにしておいたら、いずれ置き場所がなくなってしまう。
隙間は詰める。
そして日々送られてくる仕上がり品は、一番後ろに続けて置いていく。

この詰める作業を、わたしがいた会社では「つめ」と呼んでいた。
「つめをする」「つめた」と言いまわす。

つるしてある品物は、ハンガーを滑らせて隙間を詰めていく。
簡単。
上のほうのものは、棒で押してハンガーを詰める。
この棒は、上のほうの品物を取るときにも使う。
先がひっかかるようになっていて、そこにハンガーをひっかけて下におろす。

たたんである品物は少し時間がかかる。
隙間があったら、隣の山の一番下から抜いて前の山の上に乗せるからだ。
乱暴にやるとしわになってしまう。
時には山を全部出して、一点一点乗せ直すこともある。
わたしはたたみ品を芸術的にきれいに置くのが好きだった。

ワイシャツは襟が互い違いになるようにする。
同じ方向にばかり襟が並んでいると、斜めになって地すべりを起こす。
あまり入れすぎないこと。
襟がつぶれてしまってはいけないから。

わたしはつめは割りと好きだった。
等間隔にきれいに並べるのも好きだったし、繁忙期にできるだけきっちり詰めるのも好きだった・・・・・・

閉店前に 明日のために

閉店前に『詰め』をするのはもちろん明日のためだ。

それに他にも明日のために作業をする。
伝票は整理しておくし、閉店時の受付品の数も控えておく。
カウンターの上も整理する。
ホチキスはだいたい5~7個はあるが、すべて針をつめておく。

受け付けた品物の入った袋は、鉄枠からはずして口をしめれば渡せるようにしておく。
鉄枠にはあたらしいドライ袋をかけておく。
これは、午前中に配送がある店だったからだ。
翌日、朝から忙しくて準備できなかったとしても対処できるように、できるだけ夜のうちにやっておく。
品物と一緒にドライ袋に入れる伝票には、店名と「何番~」とだけ書いておく。
朝もまだ受け付けるから、何番までか分からない。
そこで始まりだけ書いておく。

余裕があれば、閉店前に一度、残高チェックをしておく。
レジのお金を全部計算して、売上とつり銭を足したものと照合する。
閉店後に計算するときになって「あ、合わない」となると焦るので、チェックしておくのがベター。
もし違うなら、ゆっくりと計算しなおしたり、なぜ違うか考えたりできるから。

エアコンやストーブや電気ポットの電源は切る。
自分の荷物も、帰れるようにすぐ用意しておく・・・・・・

繁忙期

クリーニング業には、「繁忙期」があった。
その逆の「閑散期」ももちろんあるわけだが、それは人の口に上らない単語だった。

「もうすぐ『繁忙期』だから」「『繁忙期』が終わったから」
繁忙期、という言葉は口にされるのに、その逆の言葉は会社内では特にないのだった。

クリーニング店の繁忙期は、もちろん春だ。
衣替えの時季だから、みんなクリーニング店にやってくる。
この時季の忙しさは、思い出してもため息が出る。

「クリーニング屋というのは、春で一年分稼ぐのだから」

その忙しさについて、そんなふうに聞いたことがあるけれど、衣替えは夏もあるのに、と思った。
でも、夏物をしまう季節が来ても、それほどでもなかった。

第一に、人は冬のほうが多く着る。
ブラウスやキャミソールだけでなく、ニットも羽織るし、その上にコートも着る。
マフラーやショールを使ったり、帽子や手袋を使ったりする。

第二に、冬物は水洗いできないものが多い。
家で洗ってしまうか、とはなかなか思えない。

そんなわけで、夏物をしまうときと、年末大掃除をしてついでにクリーニングに出すときも、多少増えるが、なんといっても春が一番の繁忙期なのだ・・・・・・

閑散期

たとえば、2月などは、一年のうちで一番静かだった。
わたしは大好きだった。

最初に想像した「クリーニング店」のイメージがあった。
座っていて、たまに人が来たら「いらっしゃいませ」とか言って立ち上がる。

クリーニング物を出しに来る人が少ない月。
当然、取りに来る人も少ない。
「配送」がやってきても、整理する仕上がり品も少ない。
閉店時に詰めるって言ったって、取りに来ないのだからすきまもない。
あまりガラガラでは見栄えもよくないので、週に一度くらいすればいいことになる。
出す人も受け取る人も少なければ、クレームやトラブルの確率も減る。

すべての作業が激減するので、心も静か。仕事も少ない。

8月も暇だった。
よく「にっぱち」、2月と8月は商売は暇だ、と言われるけれど、全くその通り。

お盆は閑散としていた。
お正月も。
そういうときに、わざわざクリーニング物を出しに来ようという人は少ない・・・・・・

繁忙期 その2

春の繁忙期が辛いのは、2月の後にやってくるからだと、毎年思った。

2月は仕事も少なく、のんびりと働いている。
最初に働いた店舗ではだいたい、一日の売上が3万円台や4万円台。
次に働いた店舗もほぼ同規模で、そんなものだった。

なんか今日は忙しかったね、という日は5万円台だったりする。
今日は暇だったね~、という日は2万を切ることもある。

それが春めいてくると一斉に客が押し寄せてくる。

4月には、一日の売上は15万前後となり、土日になると20万、30万になる。
割引セールをしていてそのくらいになるので、預かり点数で考えれば10倍どころではない。

受付点数が増えると、引き取り点数も増える。
仕上がり品もたくさん届く。
夜は必死で詰めないと翌日の分を入れる場所がない。
細かい仕事も倍、倍、と増える。

売上が倍なら、仕事は5倍、10倍と増えるものだ。
いきなりそんな状況になって、体はついていかない。

足が痛い。肩が痛い。疲れがとれない。

ようやくその仕事量に慣れてきて、体が楽になる頃には、繁忙期は終わっている・・・・・・

閑散期 その2

わたしが大好きだった2月は、暇だった。

仕事が少なくて楽、というのも好きだったと思う。
でももっと好きだったのは「閉じ込められた感」だったと思う。

寒い戸外と切り離されて、ストーブがついている店内。
外界とは壁やガラスで隔てられている。
誰も――というわけじゃないけど、滅多に――外界の空気を運んで来ない。
扉は開かない。

一人で一日店番をしていて、本を二冊半読んだことがある。
E・S・ガードナーのペリー・メイスンシリーズだ。
あれは読みやすかったから。

編物をしたこともある。
お客さん(と会社から見回りに来る人)に見つからないようにやるのは、コツがいる。

夏の猛暑に閉じ込められた感覚もよかったけど、やはり冬は格別。

だからわたしはお盆やお正月に出勤するのも好きだった・・・・・・
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