FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夏休み

夏休みが来た!

――と言っても、ただ単に、土日に仕事をしないだけだが。

しかしこれほど週休二日が有難かったときはない。
やっぱりなんとなくプレッシャーなのだ。

3週間は土日はオフィスを開けない。

どうせ隔週の仕事なのだ。
3週間といったら、ほんの1回か2回の話である。

それなのに、やっぱり気分が違う。
解放された気持ちよね!――ともう一人の土曜勤務さんとメールで話し合った。

そして、契約更新は絶対すまい、と改めて心に決めた。

この夏休み期間は、平日も終わりが1時間早くなる。
これは有難いのかどうか、分からない。

もしわたしが平日勤務だったら、1時間早いために収入が減るので、ちょっと嫌かも。

さらにお盆の時期は数日間オフィスを閉める。
これも自分が平日勤務だったら、嬉しいかどうかは微妙なところだ。

わたしのメインの仕事のほうでは、今年は土日連続の単発の仕事依頼が多く、このオフィスの仕事があって受けられないことが多かった。
しかしそちらも夏はあまり仕事がない。
だからオフィスが休みになったからと言って、具体的に「良かった~!」ということはなかった。

なのに、ものすごく解放感を感じた思い出が、鮮明に残っている・・・・・・
スポンサーサイト

飲み会

就職活動繁忙期も終わった。
最初の事務長さんは異動で本学のほうに戻り、二代目事務長・森さんがやってきた。
初代『平日勤務』さんは辞めた。
新しい『平日勤務』さんがやってきて、定着したようだ。

二代目『平日勤務』さんが定着したことを、わたしたち土曜勤務は連絡ノートで知った。

わたしたち土曜勤務と平日勤務さんは、顔を合わせることはない。
それを言うなら、もう一人の土曜勤務さんとも会ったことはない。
平日勤務さんとは連絡ノートだけのつきあい、もう一人の土曜勤務さんとはシフト相談のメールだけのつきあいだ。

そこで、親睦会をしよう、という話が出た。
たぶん、海原さんと森さんから出たのだと思う。飲むの、好きそうだから。

「就職繁忙期も終わって落ち着いたし、新しい事務長さんも来た。
平日勤務の方も変わったわけだから、ここらで親睦会でもしましょう。
あなたたち派遣さんは、お互いに会ったこともないから、いい機会でしょう」

この飲み会は「欠席します」とは言いづらかった。
だから派遣も全員参加した。
土曜勤務たちは、平日の仕事が終わってから集まってきた。

事務長さんの歓迎会も兼ねているからだろう、店はおいしくて高級そうだった。
もう一人の土曜勤務さんはお酒は飲めないそうで、ウーロン茶だったけど楽しそうにしていた。
平日勤務さんは、控え目に飲んでいた。

店を出て、海原さんは「時間も早いし、もう一軒行きましょう」と楽しそうに言い、森さんも賛成。

もう一人の土曜勤務さんは、美空さんに向かって、明日も早いし私はこれで失礼します、と言う。
まあ、彼女はお酒も飲めないし。

彼女が駅に向かった後、美空さんは「私も帰るわね。後は好きにしていいのよ」と言って駅に向かって歩き出した。
平日勤務さんに「行きましょ」と言い、平日勤務さんもついていく。

え、あの、あの・・・・・・帰るってことは、わたしじゃなく、後ろで「次に行こう」って言ってる二人に言ってくださいよ。

「どうしたの?」と背後から声が。
「あの、皆さん、明日が早かったり、おうちのご用がおありのようで――」
「え、帰っちゃったの!? なんだ~、そうなの? じゃ、3人で行きましょう」

あの~、あの~、・・・・・・そうですね、参りましょう・・・・・・

美空さんと初代『平日勤務』さんの攻防 4

ある日、出勤したら、平日派遣さんはいなくなっていた。
あー、やっぱり。

一緒に勤務することはないが、平日と土日の間には連絡ノートがある。
それに記入がなかった。
そして「平日の派遣さん、辞めたんだよ」と聞いた。

後に美空さんに聞いたところでは、派遣の営業に言ったそうだ。

「大変申し訳ありませんッ!! すぐ善処いたしますッ!」というような対応ではなく、落ち着いた「さようですか」的な対応で、納得がいかなかったらしい。
「そんなものなのかしら。派遣はそれでいいと思っているのかしら」と不満だったけれど、後日、きちんと対応があった。

――うーん、確かに。
彼女も若い営業さんだから、自分の判断だけで「では即刻、辞めさせます!」とは言えないだろう。

後日、若い担当営業さんとその上司の男性が、事情を聞きにやってきたそうだ。
美空さんは、デスクトップのフォルダも見せ、こういうことをやっていると言った。
上司の男性が「しかるべく対処する」ということを約束してくれ、平日派遣さんは辞めた。

派遣会社と平日派遣さんの間の経緯は分からない。

派遣会社はあまり間をおかず、次の平日勤務のスタッフを用意した。
『平日勤務2』さん、登場。
この人は、わたしよりも少し年上かも、と思う人だったが、実は若かったのかも。

年齢はともかく、彼女は誰をたてなければならないか、よく分かっていた・・・・・・

美空さんと初代『平日勤務』さんの攻防 3

ところでこのオフィス、パソコンは1人1台あるわけではない。
なんと職員さんのためのものさえ、1人1台に足りない。

全部で3台。
事務長さん専用パソコン、偉い人・海原さん専用パソコン、それ以外の人の共有。
他にもう1台あるのは、証明書発行専用のパソコンで、通常の用には使えない。
学生さん用のパソコンが数台置いてあるが、それらは厳重にログをとられていて、職員が使えるものではない。

だから美空さんは、自分宛のメールが来ているかどうか、共有パソコンで見なければならない。

「でも、平日派遣の彼女がずっとパソコンの前に座っていて、メールも満足にチェックできないのよ」
と美空さんは言う。
「他の仕事を全然しないで、ずっとパソコンに座ってるから、彼女がちょっとトイレに行ったときなんかにメールチェックしてるのよ。
でも彼女、帰ってくると、まるで席を取られた!みたいな顔するのよ。
だけど、これは彼女のパソコンじゃないのよね。私も使うのよ」

偉い人・海原さんに言わせると、それが一番美空さんを怒らせた、ということなのだが、まあそうかもしれない。
彼女は若かったから、女性が同性の上司や同僚を怒らせることの怖さを分かっていなかったのだ、きっと。

「ずっと自分の趣味のことをやっていて、何のためにお給料を払っているのか、分からないでしょ?
ときどきね、海原さんが、これパソコンで打っといて、って言って渡しても、すぐにやらないことがあるのよ。
彼女の能力なら後からやっても時間内に終わらせることができるのかもしれないけど、そういう問題じゃないでしょ。
自分の趣味を優先して、頼まれた仕事を後に回すなんて、おかしいと思うのよ」

うわー、彼女、ちょっとやばいところまで来ているみたいよ、と思った。
自分としては、とにかく巻き込まれたくなかった。
「土日の派遣さんにも聞いてみたけど、おかしいって言ってた」「こんなものをダウンロードするのは危険だって言ってた」
なんて言われたくない。

言質をとられないように、言質をとられないように・・・・・・

美空さんと初代『平日勤務』さんの攻防 2

「平日派遣H・Aさんは、空いた時間に自分の趣味のことをやってるのよ」

美空さんの衝撃発言で、一気に緊張感が増したわたし。
土日は職員1人+派遣1人が基本なので、オフィス内はわたしたち2人だけ。

「そうなんですか?」と控えめに言ってみることしかできない。とりあえず、様子見。

「彼女、お休みの日はバスケットチームのマネージャーをしているらしいのよ」
――バスケットだったか、バレー、ホッケー、ハンドボール?、忘れたが、とにかくスポーツチーム。

「そのチームの掲示板の管理を彼女がやっているらしくて、手があくとインターネット開いて何かやってるのよ。
そういうの、どうなのかしら? 派遣会社は何も言わないの?」
――派遣会社は、勤務態度を見ているわけではないからなあ。
「派遣会社ではそういう研修などはしないの?」
――派遣というのは通常は社会人経験者がなるものなので、そういうものはない。
事務職未経験という人のためには研修があるが、そうでない場合は強制的に研修をさせられることはない。

「しかも彼女、デスクトップにフォルダを作ってるのよ。
その中にいろいろ、自分の趣味のファイルだの何だの、入れているみたいなのよ。
それで、○○さん(わたし)、パソコン詳しいでしょ?(PCインストラクターだから)
これ、何かしら?」

それは、顔文字の辞書だった。
それをダウンロードすると、通常以上にたくさんの顔文字を変換することができる。

「こういうものをダウンロードして、パソコンに問題は起きないのかしら?」

――そうですね、勤務時間中にこういうことをしているのは、よくないですね。
というようなことを言った。
ここに至っては、どちらかにつくしかないもの・・・・・・

美空さんと初代『平日勤務』さんの攻防 1

「○○さん(わたし)なんて、優秀だから、ここの仕事は力を発揮できなくて退屈じゃない?」
美空さんがにっこり言った。

――え、そんな。なんて答えたらいいの?
「いいえ、そんなことは――。新しく覚えることがたくさんあって、いろいろ勉強させていただいています」

「派遣さんて、暇なときはどうしているものなの?
ほら・・・・・・言われたお仕事が終わってしまったときとか、手持ち無沙汰になるでしょ?」
美空さんは、ちょっと興味があるのよ風に聞いてきた。

「そうですね・・・・・・」
――サボれる職場なら適当なことしてますけど、できない職場なら仕事してるふり、とは言えないね、やっぱり。
「何か、仕事を見つけて、なるべく手を遊ばせないようにします。
散らかっているものがあれば片付けるとか、おつり銭(証明書発行料のためのおつり)のチェックをするとか。
本当に何もすることがなければ、布巾でちょっと埃を払ったりするとか――」
――あ、でもよく美空さんと適当な話してたりするな。
「なかなか実行するのは難しいですけど、なるべくそういうふうに努力したいと思っています」

「そうよねぇ。普通はそういうものよねぇ」
――ん? 何かおかしな雲行き。

「平日の派遣さんのH・Aさんはね、自分の趣味のことをやってるのよ」

そっちに持っていく前ふりか~!
これは危ない綱渡り、会ったことなくても同じ派遣会社から来ているスタッフ同士。

わたしの体温は瞬時にちょっと下がった・・・・・・

大学のプライド

勤務を進めるうちに、だんだん分かってくることがある。
職員の方たちには、大学としてのプライドがあるってこと。

わたしはもともと学歴ランキングに詳しくない。
中学高校だと「あの人、○×中学出たんですって!」と言われても、全然ぴんとこない。
大学についても、あまり詳しくない。

東大は日本一。早稲田と慶応はいつも並び称される。
この程度の知識。

なので実は、この仕事に就くに当たっても、あまり感激はしていなかった。
え~!あの大学で働けるなんて!、というようなものは、感じなかったわけだ。

派遣の仕事のひとつに、新聞に大学のことが載っていたら切り抜く、という作業がある。
「それから、早稲田や慶応のような同じレベルの大学についての記事も、注意しておいてください」

――同じレベル?
知らなかった~、そういう意識だったのか。
口をきくときに気をつけないと、間違いを犯しそうだと思った。

「うちのようなトップ層の学校の場合は、プレッシャーも大きいし、大変なのよ」
「有名大学の辛いところね」
「一流の大学には一流の大学の悩みがあるということね。有名税みたいなものね」

はぁ、そうなんですか・・・・・・

就職のための繁忙期間

何回か言っているけれど、4月5月は就職のための繁忙期間だった。

そのためオフィスを開けておく時間も延長。
通常、土曜日は9:00~12:00の3時間だが、16時までになる。

最初は「職員1人+派遣1人」ではなく、「職員2人+派遣1人」のこともあった。
(平日は職員も2~3人いる。2人の日というのは土日の代休の人がいるからである。)

オフィスが長く空いているだけでなく、ちょっと賑やかでもあった。
お客さまがいらしたりするからだ。

それは会議室利用の人などではなく、大学の人。
就職課(という名称なのかどうかは知らないが)の人がやってくることが多い。
学長や、それ以外の役職の人がやってくることもある。

この時季に、だいぶ前に書いたお茶の淹れ方知識が活躍する。
――はずなのだが、まだこちらも勤務に入って間もなくて、全然覚えていない。

えーと、事務長さんにお客さんが来たときは、お茶なし。
海原さんにお客さんが来たときは、出す。ん? お客さんにだけ出す? 両方に出す?
誰だったか、誰かが来たときはコーヒーで・・・・・・???

結局、誰かが指示してくれるのだ。
「お茶をお願い」「コーヒーをお出しして」「僕とお客さんと両方にお茶を」
海原さんはもしかしたら、本来は出さなくていい組み合わせのときも「僕にも」と言っていたかもしれない。

この時季は学生さんも確かに多かった。

けれどどんなに忙しいと言ったって、サービス業の長かったわたしには、南国リゾートのようにのんびり見えた・・・・・・

地図作り作業

OAを使う仕事はあまりなかったが、一度、地図を作ったときは楽しかった。

このオフィスには、周辺地図が用意されている。
「駅を降りたけど、どうやって行ったらいいか分からないよ」
という方が電話をかけてきたときは、地図を見ながら説明する。

それから、学生さんがもしオフィスの開いている時間外に時間を潰したかったら、このあたりに無料休憩所がある、ここにインターネットを使えるカフェがある、と資料を集めている。

ターミナル駅は広くてややこしいので、その地図があったらいいと思う。

そういうものをPowerPointで作成した。
PowerPointは縁ぎりぎりまで使えるので、こういうポスターなんかに向いている。

この作業は楽しかった。
いい暇つぶしになった。

もともとそういうものを作るのが好きで、作業自体が楽しい。
しかしセンスはないので、地図という地味なものだったのが良かった。

漠然と、こういうときはここが使えます、こう訊かれたらこう答えてください、と言われて覚えるより、自分で地図を作るほうがよほど覚えた。

何日もかけてやる仕事ではなかったけれど、一枚一枚、地図のスライドが増えていくのは楽しくて、手の空いたときはよく作っていた。

今でも役に立っているとは思えないけど・・・・・・

海原さん用OAを使う作業

OAはあまり使わない職場だったが、特別な場合がある。
海原さんと勤務したときだ。

海原さんはパソコンを使う必要がない人だった。
秘書がいたからだ。
海原さん専用秘書の場合もあったし、3人くらいの偉い人共有の秘書の場合もあったそうだ。

「ところが、ここには、あなた、秘書っていうのがいないでしょ?
あなたがたは秘書じゃなくて、他の仕事をするために雇われている派遣さんだから。
そうそう僕の仕事を頼むわけにもいかないしねぇ」

と言いながら、海原さんがどこかに送る文書は、わたしたち派遣スタッフが入力する。
海原さんは完璧に書式も整えて、手書きで紙に書く。
鉛筆で。
間違ったところは消しゴムで訂正する。

そして完璧に仕上がった手書きのビジネスレターを、派遣がWordで作成するのだ。

出来上がったものはプリントアウトして、見ていただく。
「この海原菊人という僕の名前ね、海 原 菊 人じゃなくて、海 原 菊 人にしてください」
「ここ、ぴったり上と揃えて1マス開けてください」
「ここね、もう少し空いていたほうがいいですね」
もう既に何枚もプリントアウトしていて、かつての会計事務所の経費にうるさい先生だったら、顔面蒼白になっているところだ。

「僕はね、官庁にいたからね、こういうの、うるさいんですよ」
ビジネス文書のよい勉強になった。

海原さんはExcelを使うことはなかったが、メールはやむを得ず使っていた。
「これね、どうして返信すると、ここに僕の署名が入っちゃうのかな。
これ、入れたくないんですよ。変でしょ? ここに僕の署名があったら。二重に入ってるの?」
――これは、こういう仕組みになっているものなので、入ってしまいます。
でも、これは海原さんがつけた、というわけではなくて、前の文面に入っているだけなので。
「あとね、メールをね、来ているかどうか確認したいんだけど、どうしたらいいのかな?」
――そんな基本的なことまで!?

このオフィスでは、OutlookやOutlookExpressではないメールソフトを使っていた。
メールソフトはだいたい同じような作りだけど、このソフトは微妙なところが違っていた。
わたしはそれまで見たことがなかった。

――すみません、このメールソフトを使うのは初めてなので、お答えする前に操作を確認させていただいてもいいですか?
「あ、そうなの? どこでもこれを使ってるのかと思ってた。メールっていろんなものがあるの?」

あるんですよ、これが・・・・・・

OAを使う作業

派遣の単発募集では、ときどき「OA操作なし」というのを見かける。
パソコンが使えなくてもOKということだ。

普通に考えてOA操作というと、WordやExcelなどオフィス製品を使った作業になる。
でもこのオフィスでは、そういうこともそれほど高度に必要とはされなかった。

Wordで簡単なビジネス文書を作ることもあるが、たいていは前に使った文書を変更して作成していた。
日付とか、名前の部分だけ変えればいいのだ。
これも平日勤務さんはよく使うかもしれないが、土曜勤務のわたしたちはあまりしない。

Excelで釣銭表を作ってあり、そこに日々記入していた。
釣銭というのは、証明書発行手数料を徴収するので、常に釣銭を用意してある。
ちなみに両替などは平日勤務さんがしておくので、土曜のわたしたちはしない。

表は既にできていて、今日の欄にただ入力するだけ。
そして残高と実際の現金が合っているか確かめる。
むしろ、この現金を数える作業のほうでミスは起こる。

後はメール操作。
ただ、わたしたち派遣にメールアカウントがあるわけではない。
共用メールアドレスに連絡事項が来ていたりすれば見る。
必要な資料を共用メールアドレスから添付送信する。
でも、これもまた、平日勤務さんがしている。

わたしにとって、そういうものよりどきどきするのは、前も言ったがFAXだった。
それから会議室利用の人が使う機器。
マイクやプロジェクタなどの一式セット。

それから、同じパソコンでも、証明書発行専用パソコンは、長いこと慣れなかった。
独自のシステムが入っていて、その回線をつなぐ度に大昔の電話回線インターネットくらい、料金がかかる。
証明書を発行したら、すぐに回線を切断する。
万が一切断し忘れたりすると大変だ。

これがなぜかうまく切断されず、システムごと電源が落ちたり、切れたと思ったら切れていなかったり、どきどきさせられた。
わたしの操作がいけなかったのだろうか・・・・・・

FAXを送る

FAXは何かと送る。
でもわたしはFAXが苦手だった。

クリーニング店時代、毎日のように本社や工場宛てにFAXを送っていた。
でもそれは、FAX付き電話機だった。

このオフィスのFAXは、コピー機 兼 プリンタなのだ。
そこにFAX機能もついている。

コピー機は苦手だ。
事務仕事に不慣れなわたしは、こういったオフィス機器が大の苦手。

このボタンを押して、これを選んで、これを押して、ここからグループを呼び出して・・・・・・??

FAXを送る仕事は割とあった。
・新聞から切り抜いた記事を送る
・海原さんが文科省から持ってきたチラシ類を送る(後にメール添付になったが)
・海原さんが書いた文書などを送る

新聞記事は大学だけに送ればよかったし、文科省のチラシ類は大学本部となんとか科とかんとか室に贈らなくてはならない。
海原さんが書いた文書の場合は、「学長と教授たちに送っておいてください」「教授会だけに送ってあればいいです」といろいろ指示される。
そのときは、送信先グループを選択、設定する。

うーん。
そういう操作が一番苦手だ。
どうせ暇なんだし、1人1人送っちゃだめですか?、と言いたくなる・・・・・・

新聞切り抜き作業

新聞を切り抜く作業は、なかなか楽しかった。
何種類もの新聞を見ることができるから。

でも見たい記事だけ丹念に読んでいるのも変で、難しい。

何を切り抜くかというと――
 この大学のことが載っている記事
 大学名が載っている記事
 この大学の教授が載っている記事
 (美空さんによると)同じレベルの大学についての記事など

大学のことが載っている記事といっても、いろいろだ。
そのものズバリ、××大学ではこのようなことに取り組んでいて・・・・・・云々、という記事は少ない。
見出しは「東大、これこれに取り組む!」。
だけど、記事の途中にちょこっと「同じような取り組みを・・大学、・・大学、××大学なども試みていたが」と書いてあるかもしれない。
見出しだけでは判断できない。

大学教授はいろいろなところに顔を出す。
発見された遺跡に関して、歴史の教授が顔写真付きで載っていて、「××大学、史学科、・・教授」と紹介されているかもしれない。
経済の動向についての記事の途中で、「××大学経済学部、・・教授もこう語っている」と出ているかも。
日曜版のような記事で、「今週のこの人この顔!」みたいな人間紹介ページに出て、好きな食べ物や日々の暮らしを語っていたりするかも。

平日勤務の人が忙しかったりすると、何日分かたまっていて、時間がつぶれるから有難い。
記事は切り抜いたものをまとめて、大学本部にファックスする。

大学だってもちろん大きな新聞はたいてい取っている。
でもわざわざこうして切り抜いて送るのは、大学のある地方版と東京版とで記事が違うことがあるからだそうだ。

へぇ、そうなの。新聞って、土地によって載っている記事が多少違うんだ。
と、当たり前のことに感心するわたしだった・・・・・・

会議室利用の人が来る

会議室利用の人がやってくる。
大学のある土地から来るかもしれないし、東京や他の土地からかもしれない。

会議室は、いろいろな目的で利用される。
教授が学会のようなことをするために使うこともある。
東京に住んでいるOB会が、何かの打ち合わせで使うこともある。
OBや大学関係者だったら使えるので、そういった人たちが入会している何かの会が使うかもしれない。

この会議室のメリットは、安いということだ。
外部の人は使えない。
関係者向けの一種のサービスなのだ。

安い、と聞いてはいたけれど、同じような会場を借りた場合の相場は知らない。
でもきっと安いのだろうな、と思う。

会議室利用は頻繁にはなかったので、この仕事もわたしはなかなか覚えられなかった。
いや、正直に言うと、最後まで完全には覚えられなかった。

人が集まる前にしておくべき準備。
マイクを使う申請がある場合は、マイクセットを用意、使えるようにセットしておく。
プロジェクタを使う申請がある場合は、普段はしまいこんでいるプロジェクタセットを準備する。
開始時間が近づいてきたら、ドアを両方開けておく。
というのは、出入口ドアは2つあるが、通常は1つしか開けていないからだ。
入口に「○○会議 ○○○会様 13:00~16:00」というような張り紙を貼った、小さなボードを置いておく。
室内には、トイレの位置案内図を貼っておく。

人が集まったら、責任者の方に書類にサインをしていただく。
ちょっと遅れてきた人を会議室に案内したりする。
人数分の飲み物を頼まれた場合は、買いに行く。
同じビルの別な階にあるドトールだのスターバックスコーヒーだのに行って、注文してくる。
頼んでお金を払って帰ってくれば、15人分とか20人分の飲み物を運ぶのは店員さんがやってくれる。
わたしたち派遣が1つ1つ給仕するのではなく、袋ごと責任者の方に渡して、好きにやってもらう。

後は会議が終わるまで、することはない。
ただ大きな物音を出すのは厳禁だ。

心配なのは、会議の途中で呼ばれることだ。
「マイクが故障しているみたいだが」「プロジェクタの調整をしてくれ」
なんて言われたら、わたしはたぶん対応できない・・・・・・

学生さんが来る

学生さんが、大学のある土地から東京にやってくる。
たいていは就職活動のため。

遠くからスーツを着てやってくるわけにはいかない。
スーツがしわになってしまうからだ。
そういう人たちは、スーツをケースに入れて持参する。
そしてこのオフィスで着替えて面接や説明会に行けばいいのだ。
大きな荷物は、終わるまで預かってもらえる。

時間が余ることもある。
遠くから交通機関を予約してやってくるわけだから、早く着きすぎることもある。
または、1つめの約束を終えて、次の約束まで時間があることもある。
そういうとき、このオフィスで待つことができる。
新聞を読んだり、インターネットで会社情報などを検索したりすることもできる。
履歴書を書いたりするためのテーブルや椅子もある。

このオフィスで証明書を発行してもらうことができる。
卒業見込証明書などの書類だ。
学割のための証明書も発行できる。
手数料はいただくけれど。

学生さんが来たからといって、お茶を出すわけでもないし、難しい仕事はない。
パソコンを使いたいと言われたら、特別なキイを渡す。
それがないとパソコンは使えないし、それを差し込んだらすべてのログが取られている。
学生証を見て渡しているので、何かが起こったら誰が使用しているときだったか分かる、という仕組み。

証明書の発行は、最初のうち苦手だった。
土曜の午前だけしか勤務していないので、あまりチャンスがなく、何度やっても覚えられない気がした。
いつも説明書を見ながらやっていた。

東京に面接に来る人はもっとたくさんいるのかもしれないけれど、このオフィスを利用するとは限らない。
ホテルに泊まる人だっているだろうし。

だから商売繁盛っていう感じではなかった・・・・・・

日曜勤務

日曜勤務はいわゆる「ビミョー」。

土曜の午前中だけの勤務では、収入にならない。
だから給料が増えるので有難い。

しかしやっぱり面倒な気持ちにはなる。

面倒な気持ちにはなるのだが、土日続けて勤務するなら割と平気。
土曜だけ勤務するより、いっそ土日続けてシフトに入っているほうがいい。

だから、土曜日はもう一人の土曜勤務さんで、日曜だけわたし、というのが一番嫌だ。

それから日曜には落とし穴がある。

土曜日の午後に会議室利用の予約があった場合、勤務時間は延びる。
午前は会議室を使わなくても、オフィスそのものは開けておかなくてはならない。
だから朝からの勤務に変わりはなく、終業時間が遅くなるだけだ。

しかし日曜は違う。
本来オフィスは休業なので、朝から来る必要はないわけで、最悪の場合
「会議室の予約が14時~16時なので、13時半から16時半の勤務でお願いします」
と言われてしまうかもしれない。

それでは土曜の午前中3時間勤務するのと同じ給料だ。
その上、勤務しているのが午後では一日つぶれてしまう。

なので日曜勤務は内容による。
変な時間帯に予約が入っていると、うわぁ~これ、どっちがシフトに入ることになるだろう?と心配。

二人しかいない仲間なので、用もないのに「わたしこの日できません」とは言えない・・・・・・

午前勤務

土曜日に働くというのは、不思議なもので実に面倒なのだ。

かつてクリーニング店時代は、月曜から土曜まで働くのが普通だったというのに。
月-金で働くことに慣れてしまうと、土曜日に別な仕事にわざわざ行くのがとても面倒になる。

ましてそれが一日中だと、「あ~、今日は午後もあるのか」と、行く前から疲れてしまう。

かといって、午前勤務がいいとも言えない。
なんといっても給料が少ないのだ。
派遣はたいてい交通費は自腹なので、往復の交通費で1時間の時給がだいぶなくなる。

そう思うと、仕事帰りにどこかでランチして帰ろう、なんて考えは浮かばない。
なけなしの給料がなくなってしまう。

そんな少ないお給料のために、1時間弱の時間をかけて通うのが、また気をくじく。

8時に家を出る。
10分前に着いて、仕事を始める。
12時に仕事が終わる。
すぐの電車に乗れても、家に着くのは13時。

東京の地下鉄の駅の中には、恐ろしく広いところがある。
××駅で乗り換え、と言ったって、とても同じ駅とは思えないほど歩くことがある。
××駅を降りてすぐ、駅直結、と言ったって、自分が出た改札と「A3出口」やら「C2出口」やらが10分も離れていることがある。

電車に乗っている時間はもっと少なくても、そういう時間を含めると結構時間がかかる。

なんか行きたくないなぁ、なんて、思ってしまうのである・・・・・・

一日勤務

ときどき、一日勤務の日がある。
普段は午前中3時間だけだけれど、会議室利用があるときと4月5月は6時間勤務。

そういうとき、勤務は9時から16時で7時間拘束されるけれど、12時から1時間休憩をとる。
このお昼休みの時給は、当然支払われない。

ちょっと器の小さいことを言うようで自分でも情けないけど、給料が出ていないのでお昼はちゃんと休みたい。

お昼になると職員の方から、「どうぞお昼を買いに行ってください」と言われる。
「買いに行って」というのは、「食べてきて」というのとは違う。

「お先にどうぞ」と言ったりすると、「あなたが買って来てから自分も行くから」と言われたりする。
そう言われているのに、「買ってこないで食べてきちゃいました~」と何十分も席を外すことは、なかなかできない。

お弁当を買ってくる。
カフェ風になっている小さなテーブルを使って、食べていいですよ、と言われる。
でも、もし学生さんやお客さまがやってきたら、お弁当を食べているのってちょっとバツが悪い。
味わって食べるより、早く食べるほうに傾いてしまう。

それにもし学生さんが来たり来客があったりしたら、お昼の途中でも仕事をしないわけにはいかない。

もともと忙しい仕事ではないので、お昼に休まないと体力が持たないということはない。
けど、やっぱり、引かれている時給分は休みたいなぁ。

「買ってきて」と言うのは男性の職員の方。
男性職員の方、(特に偉い人・海原さんは)、派遣がするような雑用をしたくはないらしい。

女性の美空さんは、「買ってこさせてここで食べさせたら休憩にならないじゃないの。ねぇ。
いいのよ、そういうときは、好きなところに食べに行っちゃって」と言ってくれる。
でも実際、美空さんと2人きりで勤務すると、やっぱり買ってくることになる。
美空さんは雑用的な仕事もやってくださるのだけれど、なんとなくそれぞれ1時間休憩しようとは言いだしにくい。

「どこかで食べて来てもいいのよ」ニッコリ。
「でも、せっかくですから、美空さんとお話しながら食べたいですし」

男性、女性、結果はどっちも同じ・・・・・・

美空さんと事務長・森さんの攻防

事務長・林さんはわたしたちが4月に入って、2ヶ月ほどで異動した。
後任の森さんは、林さんとは少し違ったタイプの人だった。

林さんが事務方なら、森さんは営業方のようなところがあった。
事務方の林さんは、偉い人・海原さんにもルールを適用しようとして、海原さんからもちょっと煙たがられていた。
その点、森さんは杓子定規にするよりも、柔軟な対応。
何かちょっとした衝突や行き違いがあっても、「まあまあ」で収めるタイプ。

だから、美空さんに対しても、大きく事を構えるようなことはしなかった。
林さんは割と「こうしろ」「ああしろ」と言っていたようだけど。

それでもやはり、森さんにとっても美空さんは煙たい存在だったようで、遠まわしには言っていた。
遠まわしに言われても美空さんは言うことを聞かないので、もうちょっと直截的に言うようになる。
でもやっぱり言うことを聞かないので、そうなると割と大きく衝突していたようだ。

ただわたしは平日いないし、6月以降の土日はどちらか一方しか出ないので、聞いた話と推測だけど。

偉い人・海原さんにはかなり柔軟な対応で、「まあまあ」「よしなに」という感じの森さんも、美空さんにはそうはいかなかったらしい。
第一に、美空さんは自分より地位が下である。
第二に、美空さんは女性だから男性を小馬鹿にすべきでない。

わたしはそれほど女権論者ではない(と思っている)のだが、この大学は男性優位なところがあった。
大学とういものがすべてそうなのか、分からないけど。

だからといって、別に美空さんと森さんの攻防、美空さんに100%理があるというわけではない。

まあ、その――どっちもどっち?・・・・・・

美空さんと事務長・林さんの攻防

ある別な地方の大学の東京オフィス――。
このオフィスの責任者は、やはり事務長・林さんということになる。

でも美空さんも、少し前までは同じようにオフィス責任者だったのだ。

美空さんのいたオフィスは経費削減の折、なくなって今のオフィスに統合された。
――というか、なくなっただけだ。
そこではパートさんたちを雇っていたが、彼女たちはオフィス閉鎖に伴って退職した。

かつては同じようにオフィスの責任者職だった美空さんに対して、やはり林さんとしては気負いがあったと思う。
「負けてはいられないぞ」というような。

よく美空さんについて、ぼやいていた。
派遣のわたしたちに「美空さんの指示に従う必要はない」というようなことを言っていた。
自分の作成した分厚いマニュアル、または責任者たる自分のやり方にそぐわない指示の場合、ということだが。

――でもなかなか、指示に従わない、ということはできない。
できれば、職員の方たちの間で統一していただけると、下っ端の派遣スタッフとしては助かる。

美空さんのほうも、林さんのやり方に異論があるようだった。

やはりこれまでご自分のやり方で采配をふるってきた人としては、他人のやり方はあらが見えるのだろうと思った。
「あれはどうかと思うのよね」「こういうやり方は派遣さんにも悪いわよね」
などと、時々こぼしていた。

「それに林さんは、デスクトップの背景に水着のお姉さんの写真を使っているのよ。
そういうのは派遣さんも、通りすがりに見えちゃったりするわけでしょう?
気分よくないと思うのよ。配慮に欠けているわよね」
「林さんはいつもアダルトのようなホームページを見ているのよ。
よくそういうページが開いているから、嫌になっちゃうわ。
職場のパソコンですることじゃないと思うのよ」

へぇ~、あの神経質そうで融通がきかなそうに見える林さんに、そんな一面が?
それはいわゆる、ムッツリなんとか、というやつですか・・・・・・

事務長・林さんと初めての勤務

林さんはいわば、このオフィスの責任者だ。
しかし偉い人・海原さんとどちらが上なのか、ちょっと分からない。

具体的な役職とはまた別の問題があるのかも。
わたしが心の中で勝手に「天下り官僚の人」と呼んでいた海原さん、こういう方は何しろ特別な存在なのだろうと思う。
事務長・林さんとしては、海原さんに気を遣わなくてはならないけれど、でも規律は守りたいところ。

たとえば「お茶くみ、コピー取りなどは自分でする」という決まりがあるとしたら、やはりそれは海原さんにも適用される。
そういうところは細かくてきちんとしている方だった。
(林さんは2ヶ月ほどで大学のほうに異動し、新しい事務長・森さんが来た。
彼は、ルールを守ることより、海原さんをたてることを重要視する人だった。
海原さんとしては、当然、林さんはあまり気に入らず、森さんのほうが良かったようだ。)

最初に林さんと勤務するときは、緊張した。

この人は例の分厚いマニュアルを作った人物である。
当然マニュアルは読んで覚えてきてくれたよね、当然いきなり仕事できるよね、と思われていたら?
わたしは心配でならなかった。

事務職の経験がほとんどないせいもあった。(今でもそうなのだけど)。

なんとか勤務ごとにごまかしているうちに、林さんは異動していった。
それほど何度もご一緒したこともなく、正直、「寂しいです」と言うほどのつきあいはなかった・・・・・・

美空さんと初めての勤務

初めて職員の方と2人だけで勤務したのは、美空さんと一緒だった。

美空さんは同じ女性同士だが、人生においてもキャリアにおいても大先輩。
わたしたち同性の派遣スタッフたちにも優しかった。
(仕事そのものには厳しかったけど。
ぎりぎりに着いたとき「もっと早く来るように」と言われたことがある。ごもっともだが)

この日はまだ4月か5月、学生さんたちの就職活動が活発だからと、夕方4時までオフィスを開けておく時期だった。
(当時は、ということだ。今では学生さんたちの就職活動期も変わったかもしれない)。

ポットの電源を抜いて、PCの電源が切れているかどうか確認して、ブラインドを下ろして・・・・・・
「○○さん(わたし)、お時間あったらお茶を飲んで帰りません?」

え――。
微妙な問題である。
仕事も終わったし早く帰りたいところだが、上司からのこういう誘いを断れるだろうか?

「素敵ですね。ぜひ、ご一緒させてください」

たとえばビジネスマナーの教本などに、こういう状況が書いてあったりして、説明があるのを見たことがある。
――上司はごちそうしたいのではなく、あなたに仕事の状況などを聞きたいのである。

今回、ごちそうされたわけではなく、洒落たお店の高いお茶代は自分で払ったが、そういうことだったのだと思う。
オフィスがあるのは大きな駅のすぐ近くだったので、美空さんはついでにあちこち案内してくれた。
実は「大学関係者や会議室利用者が、駅に着いたが道順が分からない、と電話してくることがある。そのときはこのように説明する」という仕事もあって、オフィスには地図が置いてある。
そのために、こうして案内してくれているのだろうな、と察しがついた。

「ここがとても大きくて目印になる建物なのよ。ここを曲がるとすぐにうちのオフィスなの」
「ここはうちのオフィス以外で、パソコンを使えるカフェよ。学生さんにはここも教えてあげるのよ」

そういうことばかりでは味気ないので、他にもいろいろ教えてくださった。
「ここは眺めがとてもいいのよ。このビルの中に○×大学の東京オフィスもあるわ」
「この駅ビルはたくさんのお店が入っていて、帰りにちょっと寄るのは楽しいわよ」
「お昼を食べることは少ないかもしれないけれど、一緒に食べる機会があったらここで食べましょう」

うーん・・・・・・でも、3時間の勤務で2000円のランチセットなんて食べてたら、給料なんてなくなってしまう。
(3時間×時給)-(交通費+高いランチ代)=1時間分の時給も残らない・・・・・・

偉い人と話す

ある日海原さんと会話をしていて、わたしは悟った。
自分の気の利かなさを。

僕が前に大学本部にいたときは××(派遣会社名)の派遣の子がついていてね。
××の子はしっかりしていたね~。

朝、僕が行くとね、お茶をいれて持ってくるんだけど、上手にいれられたね。
あなた、会ったことがあるかどうか知らないけど、前にここに派遣でいた△△さんね、彼女は沸騰しそうな熱いお茶をいれるんだよね。
△△さん、これじゃ、お茶のおいしさも何もないでしょ、ってよく言ったよ。

僕は10時にはコーヒーを飲むんだけど、××(派遣会社名)の子は10時になると何も言わなくてもコーヒーを持ってきたね。
3時には、何を飲むか聞きにくる。
僕のその日の体調によって、コーヒーよりお茶がいいこともあるからね。

――うゎお。そんなこと、全くしなかった。
ものすごく気の利かないやつだった、わたし。

今は、あなたも『土曜勤務B』さん(もう一人の土曜勤務の人)もそんなことしないでしょ。
『平日勤務』さん(平日の派遣の人)もしないんだよ。

――あ、そうなんだ、ホッ。

僕はねー、それは前の所長の○○がいけないと思うんだよ。
あなたがたに「やらなくていい」って言ったでしょ。
彼はコストのことばっかり気にしてね、でもそれじゃだめなんだよね。
予算予算って言って点数稼ぎばっかりしてもね。

――会話は続く・・・・・・

役職不明の偉い人

「海原さん」と呼ばれていて、正式な役職名が分からない方がいた。男性。
もと文部科学省の官僚だった方。
「もと」なのかどうかも分からない。出向とかそういうものがあるなら、そうなのかもしれない。
曖昧にぼかされた真実は、1年かけても分からなかった――出勤日数にしたら2ヶ月にも満たない一年ではあるが。

何が仕事なのか、よく分からない。
たぶん、有力な人とのおつきあいを続けたりするのがお仕事だったのだと思う。
毎日文部科学省に行って、広報などの紙をもらってくるのも仕事の一部だったし。

この方はほとんどPCを使わなくて、書類なども手で書く。
ここまでやったら手書きのまま出したら、と思うほど完全に手で書き、派遣の女の子に渡す。
出来上がったものは、何度も修正される。
「ここ、もう少しあけて」「空きすぎだから、もう少しつめて」
校正をすごくしっかりしていらした。

「自分は地位の高い人間だ」と自然に納得しているレベルの人と近く接したのは初めてだったので、とても勉強になったし、興味深かった。

もしかしたら『天下り』というものなのかなぁ?と思うこともあったが、不明。
とにかく大学というのは、こういった元文部科学省関係の人を雇っておくことが重要なのだろう。
そうすれば何かと便宜を図ってもらえる――かどうかは知らないが、雇っていなければ不利なのではないかと想像する。

タレントばりのかっこよさでなかったとしても、オリンピックの金メダルを獲った人はかっこよく見えたりしません?
その人の自信が放つオーラのためなのか、こちらが金メダル評価を付加して見ているためか――

そういうのが学歴や職歴にもあると思う。
わたしはこの人は嫌いではなかった。

ちょっと魅力的に見えたものである・・・・・・

事務長

いわゆる「正社員」のことを、大学ではどう呼ぶのか、分からない。
個人的には「職員の人」とか「本当の職員」とか思っていたけど。

その『正社員』クラスの人たちの中で、一番偉いのは、オフィスの責任者の方――なのかな?
事務長さん、所長さん、室長さん、なんと呼ぶのか正しくは知らない。
「○○さん」と名前で呼ぶことが多かった。

「ウチは、上下間で隔てがないように名前で呼び合う決まりなのよ」
と最初に説明された。
そういう会社はよくある。
でも呼び方くらいで上下間の隔てがなくなるのなんて、見たことない。

事務長、林さんは、最初の面接のときと、働き始めて1ヶ月いらしたが、異動でいなくなった。
そして、大学本校から異動してきたのが、森さん。

どちらも男性。
最初の方、林さんが最も大切にしていたのは、コスト削減。
次の方、森さんが最も大切にしていたのは、ことなかれ主義。
――というように見えた。

真実は分からないが。わたしの勤務日数は少ないし。

どちらの方も、いい方ではあった。たぶん。
――上司だから、完全に文句なしってことはないと思えば。

嫌な面をたくさん見るほど長くは、一緒にいなかったのだと思う・・・・・・

女性職員

美空さん。女性の職員の方。
わたしがこの仕事を辞めて数年後に定年(65歳)を迎えたそうなので、この当時既に60歳前後だった。
きちんとされていたので、60歳には見えなかった。
・・・・・・と言っても、わたしは人の年を当てるのは苦手なので、客観的に見てどうだったのか分からない。

この方は、以前はバリバリのキャリアウーマンで、どこか別の場所のオフィスの責任者だった。
――そう、この大学は裕福らしく、東京に2つもオフィスを構えていたのだ。

でも、経費削減の折、オフィスは合併し、1つになった。
女性責任者もここに移ってきた――もう責任者ではないけれど。
そこで働いていた人たちは、パートさんたちなので、異動はせず退職。

とても優しくしてくださったけど、長く一緒に働いていたらどうだったろう?
バリバリの女性は厳しい。
わたしは一見まじめそうだけど、怠け癖があるから・・・・・・。

土日は、必ず一人、職員さんも出勤することになっている。
派遣一名、職員一名、事務所にいることになる。
この方はいつも朝早くいらしてた。
(事務長さんも時間通りに来ていた。元文部科学省官僚という偉い方は、重役出勤だった。)

どの方ともそれほど多く一緒に勤務したことはない。
土日÷2(派遣同士)、それをさらに÷3(職員さん)だから。
この女性の方には、周囲のお店などをいろいろ教えていただいたりした。

結局、この方と勤務した回数は10回に満たなかったと思う・・・・・・

細かいこと 2

何度も同じことを繰り返して恐縮だが、わたしともう一人の土曜要員は、勤務時間が短い。
どうも細かいことを覚える熱意に欠けるのである。

ルーチンワークについて事務長さんである林さんが、分厚いマニュアルまで用意してあれこれ話してくださるが、全部は把握しきれていない。

やはり正式な大学職員である美空さんという年配の女性が、女同士ということで派遣スタッフを可愛がってくれて、親切に教えてくださるが覚えきれない。

――お茶出しは基本的にしなくていいです。でも、外部からの来客には出してください。
・・・・・・はい。
――事務長や海原さん(東京オフィスの人)に普段出す必要もありませんし、お客さんでも大学内部の人が来た場合は出さなくていいです。(大学は関東以外の土地にある)。
・・・・・・あ、そういう意味ですか。
――でも、お客さんが大学の人でない場合は、出してください。

・・・・・・どの人が内部の人か分からないので、外部の人かどうかも分からないんですけど。

――内部でも学長には出してください。
・・・・・・学長の顔、知らないんですけど。

――もし、外部の来客や学長が海原さんあてに来たときは、海原さんにもお茶を出してください。
  林さんあてに来たときは、林さんはお茶はいらないので、お客さまにだけ出してください。
  学長はコーヒーを飲むので、学長が来たときは、お茶ではなくコーヒーを出してください。
  そのときは、学長にはミルクだけつけて。海原さんはミルクもお砂糖もなしで。
  他の方は分からないので、両方つけて出してください。

――会議室を使用する場合に、出席者が集まり始めたら、・・・・・・

いや、もう、お茶だけで頭がパンクです・・・・・・

細かいこと 1

わたしたちは土日のみ。それも隔週。

しかも時間は短い。
通常の土曜ならたった3時間。
就職活動期の土曜でも6時間。
日曜に出ても5時間とか6時間。

そんなわけで、わたしともう一人の土日派遣の方には「自分たちは補助的位置」という認識があった。
でも、当たり前ではあるのだけど、外から来た来客には「ちょっとしか来ないパートなので」なんて分からない。
相手は「このオフィスの事務員」と受け取るわけだから、プロとして接しなくてはならない。
分かってはいても、この勤務日数で細かいことを把握しろと言われても、モチベーションが上がらない。

顔合わせとは別に、引き受けることが決まってから見学に行った。
研修というほど何かしたわけではなく、ざっといろいろなことを教えてもらった。
教えてくれたのはまもなく辞める派遣スタッフさんだったが、事務長さんもいた。
オフィスの事務仕事の長である林さんという男性だ。

そしてどういう仕事をすることになるか、事細かに説明してくれた。

派遣スタッフの方は簡単な説明だけで、「難しいことはないですよ~」と言っていたが、事務長さんは気合いが入っていた。

たった土曜のみのスタッフにも、分厚いマニュアルを用意してくださっていたのである!
こんな細かい字でびっしり書かれたマニュアル、全部は覚えきれません!
――とも言えないので、初日までに家で見ておきます、と一応言っておいた。

中にはビルの見取り図まで入っていて、「朝はここにある受付まで行って、預かっている郵便などがあるかどうか聞く」というようなことが書いてあった。

しかし土曜日は開いていなかったので、一度も行ったことはなかった・・・・・・

どんな仕事?

憧れの事務の仕事――とは言っても、小さい支所で人数も少なく、たいした仕事があるわけではなかった。
いろいろな雑用が仕事だった。
かっこよく言うなら「秘書」、卑下して言うなら「雑務」。
たぶん、その中間の「庶務」ってところだったんだろうな。

1.朝、鍵を開けます。
2.届いている新聞を中に入れます。新聞ラックの新聞を新しいものにします。
3.ポットや洗い物をかごに入れて、ワゴンを押して給湯室に行きます。
4.ポットのお湯を入れ替え、湯のみなど前日の洗い物があれば、洗います。
5.軽くいろいろなところを拭いたりする、という仕事もあったけれど、たいてい省略。
  だって、月―金の方も毎日やってるはずだと思って。
6.ブラインドを開けてまわります。会議室のも。

順番が決まっているのはこのくらいまでで、後はたいしてすることもない。

学生さんが来たら、そのお世話する。
パソコンを見るという人には、パソコンの鍵を渡し(セキュリティはしっかりしていた)、着替えをするという人は更衣室に案内する。
地図が欲しいという人には地図を配布し、座って履歴書を書いたり新聞を読んだりして、面接までの時間をつぶすという人はテーブルに案内する。
学割や卒業見込書などの発行を依頼されたら、発行する。

会議室を予約している方々が現れたら、案内する。
書類にサインをもらったり、備品を用意して貸し出したりする。
会議室を使う予定がある日は、トイレの場所を示す張り紙を貼ったり、会議名を記したものを貼ったりする。

時には偉い人から「これをWordで打って」と言われたりすることもある。

時間が余ったら、前日までの新聞の切り抜きをする。
その大学の名前が出ている記事を探して。
大学名が出るってことは滅多にないので、つい油断しがち。
いったいどんなところに名前が載るやら分からないので、面倒。でも時間はつぶれる。

それでもすることがなくて困る日もあったかな・・・・・・

誤算

その頃、職を変えたために収入が不安定になったわたしは、土日に仕事があったら少しは足しになるかと期待した。
それに、毎週ではないから、もし用事があったりしたら休めるし、とも思った。

でも、始めてみると、いろいろと思ったように行かないことがあった。

わたしの新しい職は、パソコンインストラクターで、経験の少ないわたしはできるだけ多くの仕事をしたいと思っていた。
インストラクターの仕事をたくさん扱う派遣会社にも3箇所登録した。
そのうちの1つが、よく土日の講座のインストラクターを募集していたのだ。

「用事があったら休めばいい」とは言っても、そううまくはいかないものだった。
大学事務のほうはいつも、前月の早い時期に予定をきかれる。
それが決まってから、急にインストラクターの募集のメールが送られてきたりするのだ。
あぁ~!もっと早く分かっていたら、この日の仕事に応募できたのに・・・!
と思うこと、しきり。

もうひとつ。
「収入の足しになる」というのもそれほどでもなかった。
土曜日は午前中のみ。たった3時間。
日曜に仕事があったとしても、会議室を使う時間だけでいいから、「午後からね」なんて日もある。
毎週出勤するわけでもないので、月の勤務時間数は実に少なかった。

3時間のために往復に時間がかかることの面倒さといったら!

割と早々と、「早まったかな」という気持ちになったわたしである。
更新はすまい、とかなり早くに決めた。

なのになんとこの仕事、1年更新だったのだ・・・・・・
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。