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入力画面の作成

Webプログラミング言語や、Web作成言語を知らなくても、ソフトを使えばWebページを作成できる。

ここにボタンをつけて~、ここをクリックすると別のページに移動して~、ここに画像を挿入して~
そういうことを、WordやPowerPointでファイルを作るときみたいに作成できる。

そのアンケートバージョンがあるので、なるほどと思った。

自力でやるとなると、HTMLだけではだめで、そこに何かしら動的画面が生成できる言語を入れこんでいかなくてはならない。
――わたしはもちろん、そんな言語は駆使できない。

でもそういうものでさえ、ホームページビルダーやDreamweverのように、ボタンや右クリックやメニューでコマンドを選んで作れちゃう。

何らかのWebアンケートに答えたことがあったら、分かると思う。
「はい」だの「いいえ」だの「その飲料を飲むのは一週間に一回」だの、回答を選択して「次へ」をクリックすると、次の画面に遷移する。
こんなふうに、アンケートをいくつかの画面にするならば、「挿入→ページ」とすればいい。

さて、1ページめには、こんな質問を入れたい。

Q1 ご希望のプレゼントをお選びください。
 A クマのぬいぐるみ
 B カエルの置物
 C リスの貯金箱

「挿入→設問」
すると「Q1」が挿入されるので、「Q1」という文字を「Q1 ご希望のプレゼントをお選びください」に修正する。

「選択肢の個数」のところを、「3」にする。

そして「回答」欄を、「単数選択」にする。
これでラジオボタンができあがる。(丸いボタンで、3つのうち1つしかチェックできないやつ。)

もし設問が「この雑誌を買った理由は何ですか?」とかで、回答を複数選んでもいいのなら、「回答」欄は「複数選択」だ。
そうするとチェックボックスができあがる。(四角いボタンで、いくつでもチェックマークを入れられるやつ。)

またはその設問にはフリーアンサーで答えてもらうってことなら、「自由回答」にする。
そして何文字分のボックスを表示するか、設定する。(200文字にすれば4~5行分の高さのボックスだし、20文字にすれば1行分の高さで短めのボックスというわけ。)

1ページめは設問はこれだけ。
あとは2ページめにするというのなら、「挿入→ページ」。

まだこのページに設問を入れたいというのなら、「挿入→設問」。

実に簡単だ。

メニューからもできるし、右クリックでもできる。
似たような設問を作る場合は、設問のコピーもできる。

普通程度にパソコンを使って事務をしている人なら、誰でも問題なく使える。
できあがったアンケート画面に不備があったとしたら、操作ミスか、不注意ミスだ。
そして確認したときも気づかなかったという、チェックミス。

今はこんな便利なものがあったとは!

わたしは職業訓練時代に、HTMLとJavaScriptを少しと、Perlをほんのちょっぴり、習っていた。
ああいうのを何も知らなくても作れちゃうんだもんなぁ、と思った。

足立さんなんて、フォルダ名を日本語にしてしまって、リンクがうまくいかなかった。
「なんで? どうしてこれ、うまくいかないんだろ? えー、ちゃんとなってるのにー」と悩んでいた。

「あ! もしかして、フォルダ名に日本語って使えないの!?」

足立さんが辞めてずっと後に入ってきた渋谷さんは――
「渋谷さん、リンクがうまくいってなかったので、直しておきましたよ。
今回のはわたしが直しちゃいましたが、他のもうまくいっていないと困るから」
「あれ? うまくいってませんでした? なんでだろう? ちゃんと設定したんですけどねぇ」

――え、設定し忘れたんじゃなくて、設定したんですか? じゃあ、なんでだろう?
見てみたら、指定しているファイル名が違っていた。
「渋谷さん、URLをよく見てみたら、ファイル名が違ってましたよ」
「あ、え? ? ファイル名が?? でもURLは特にいじってなくて、201101のところを201102に変えただけなんですけどねぇ」
「・・・・・・もしかして、URLは今まで通りに一部分だけ直していて、フォルダの中のファイルの名前自体を今回から変えました?」
「はい。今までのファイル名は00201101で長かったので、分かりやすくしてみたんです~」

渋谷さん、それならURLのほうも変えないと。
URLっていうのはドライブやフォルダのパスを見ているものなんだから。

「ああ~、そっか、そうなんですね~、これはどのフォルダの中のなんていうファイルっていうのを指定しているものだったんですね~」

いや、ホント。それでも作れちゃうんだから、すごいよ、このソフト・・・・・・
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人手不足

中野さんが異動すると決まったとき、目黒さんは全員と一人ずつ面談した。
「これから大変になると思うから、協力してね」という話と、具体的にどういう仕事を割り振りたいかという相談だった。

わたしも呼ばれた。
わたしの場合は、「中野さんがいなくなるから大変になる→あなたの業務が増える」ではなかった。
「中野さんがいなくなるから大変になる→アルバイトさんの業務が増える→アルバイトさんが今やっている入力を少し負担して欲しい」
――ステップがひとつ、多い。立場がひとつ下ってことだね。

それまでは、季節ごとに発刊されるムック本のアンケート入力だけが、わたしの担当だった。
手が空いたときモニターアンケートやお便りアンケートを渡されたりしたが、それらは「担当業務」というほどのものではなかった。
本当はアルバイトさんたちがすることになっているけれど、今は忙しくて手が回らない。
そして、ちょうどわたしは手が空いている。
そういうときに「お手伝い」という形でしているものだった。

目黒さんと話をしたときに、モニターアンケートは正式にわたしの仕事になった。
これからは、アルバイトさんが入力するとしたら、それは「わたしの手が回らないので手伝っていただいている」という形になってしまう。

お便りアンケートのほうは、「完全にわたしの仕事」にはできない。
締切日が厳しいからだ。
毎日必ず来るという勤務スタイルではないので、締切日付近が出勤日でないと困る。

だからこれは現状のまま。
誰かが担当して、その人が入力してCSVデータにして、お便りとデータを編集に渡す。
この「編集」は「編集部」という意味で、渡す相手は編集部アルバイトの三鷹さん。

わたしは、ちょうどその近辺に出勤日があったら、頼まれたときだけやる。

それ以外に、機会があったらアンケート画面の作成もしてみよう、ということになった。

これはちょっと興味がある。
今までは、作ってもらった画面に入力するだけ。
「あれ、ここ、選択肢が足りない」「ここの理由欄が抜けている」ということがあったら、担当の人に言っていた。

モニターアンケートなら墨田さんに。
――そしてほとんどがモニターアンケートだった。
これだけが、毎回微妙に違う画面だったので、間違いが起こりやすかったのだ。
季刊誌は読者と同じアンケート画面なので、間違いがあったらわたしが入力する前の段階で発覚する。

墨田さんが忙しいときは、自分でアンケート画面を作ってみて、ということになった。

これは楽しみだ。
知らないことを知るのって、ちょっと楽しい・・・・・・

倉庫に足を踏み入れる

アンケート用紙は、個人情報の塊だ。
だから厳重に管理しなければならない。

――まあ、本当に厳重な会社に比べたらのんびりしたものだったけど、きちんと管理していた。

個人情報が書いてあるアンケート用紙は、帰るときは鍵のかかる「倉庫」にしまって帰る。
「倉庫」とは、社内にある物置のことだ。

社内には、こういう物置となっている小部屋がいくつかあり、この倉庫はどこの部署と決まっていた。
読者ホットラインが使っていたのは、読者ホットラインのある島からトイレに行く通路の左側にあって、近くて便利だった。
右側には広告部の倉庫もあったが、広告部はもっとフロアの真ん中に位置しているので、遠くて出し入れが面倒そうだ。

読者ホットラインの使う倉庫は他の部署と共有で、どんな部署が使っていたのか、わたしは知らない。
入口を入ってすぐの3つのキャビネットだけが、読者ホットラインの「倉庫」だった。

帰るときはここにアンケートなどは片付ける。
(他にも、お料理教室用のいろいろな用具やら、読者プレゼントの残りやら、いつでも雑然とした「倉庫」だった。)

わたしは長いこと、ここに足を踏み入れたことはなかった。
そういった個人情報記載のアンケートも置いてあるような場所だし、単発がふらふらと入って行ってはいけないかと遠慮した。

わたしのために誰かが「今日やる分」のアンケートを取りに行ったりするとき、すぐ受け取れるようについていく。
でも、中に入ることはなかった。
ドアは開いているけれど――そして、手を伸ばせば触れるところに「誰か」さんはいるけれど、入らなかった。

「入ったら?」と言われたこともなかった。

でも人が辞め、足立さん一人が「先輩」という状況になったとき、初めて一人で「倉庫」に入った。
いつものように足立さんにお願いしたが、足立さんはどう見ても忙しそうだった。
入ったばかりの荒川さんと小金井さんに頼むこともまだできず、足立さんは「ちょ、ちょっと待って」と言っていた。

そこで初めて「もし、問題なかったら、自分で持ってきていいですか?」と聞いてみたのだった。

「ごめ~ん。悪いけど、そうしてもらえますか~」

なぁんだ、いいんだ。

長いこといるので、使ったことはないけれど、置き場所は知っている鍵。
「じゃあ、鍵を借りま~す」と持っていき、中に入ってアンケートの入ったファイルボックスを持つ。
どこに置かれているか、入口までは来て見ているので、すぐ分かる。

「倉庫」に入れるようになって、非常にやりやすくなった。

これが終わったから、次はあれ、あれの途中でもそれを先にやらなきゃならない。
――そんなふうに自分で締切を調節しているとき、勝手に行ってアンケートを取ってくることができるのだ。

で、まあ、その後はなしくずしに、常に自分でしまったり持ってきたりするようになった・・・・・・

閑話休題

アンケートをやりたいと思う人がいる。

理由はいろいろ
・社会参加をしているという気持ちになる。
・自分の意見が商品などに反映されるのが嬉しい。
・ポイントなどが貯まる場合は、お小遣い稼ぎになる。
・その他

ハッピーの場合は、毎回ポイントを加算したりすることはないので、「お小遣い稼ぎ」はできない。

でも「自分の意見の反映」を喜ぶ人は多いようだ。
だいたい登録している人は、ハッピーの読者が多い。
「今回たまたま買って、たまたまアンケートを書いて、たまたまネット会員になって、ずっとメールマガジンを読んだりアンケートに答えたりしている」なんて人は、あまりいない。

それに、だいたい登録を続けている人は、ハッピーが好きだ。
ほとんどの場合、看板雑誌ハッピーライフが。
中には、ハッピーキッチンが好き、ハッピーヘルシーが好きという人もいるだろう。

その人たちがアンケートに答えるのは、ハッピーに協力したい、ハッピーをよくしたい、という気持ちからだ。
――たぶん。

FAXで答えてくるモニターさんたちも、任期の終わりによく書いてくる。
「私が書いたことが、実際に特集になっているのを見ると、とても嬉しく、「ああ、こんな私の意見でも役に立ったんだな」と感動しました。」
――実際にその人の意見が目にとまったのか、たまたま偶然なのかは知らない。
でも、モニターさんたちの側に、そういう喜びがあることは事実。(もちろん全員とは言わないが。)

アンケート用紙に、「アンケートに協力できる」と○をつけてくる人も、余白に書いてくる人がいる。
「私の意見で役に立つなら」「私の意見でよかったら」「ぜひお役に立ちたいです」

あなたの意見を知りたい、あなたの意見が重要。
そう言われるのって、やっぱり気分いいものね。

わたしは今まで、そういう気持ちになったことがなかったけれど、きっととても好きな雑誌があれば、同じように思っただろう。
――わたしはガメツイので、「とても好き」な雑誌でないと、そこまでしないかもしれないが。

さて、そういう気持ちでアンケートをしたいなら、ぜひパソコンメールアドレスを記入することをお勧めしたい。

やはりお金がかからないので、ネットアンケートが圧倒的に多い。
アンケートをやりたい人はメールアドレスを書くべきだと思う。

郵送や電話やFAXもないわけではない。
ただ――数が少ない。
「今回だけは、FAXがOKの人を30人集めたい」と探すことがあったとして、何人もの「FAX OK」の中からたった30人だ。
このOKは、1回のアンケートではなくて、「過去4回のハッピーキッチンとハッピーヘルシーのアンケートから」かもしれない。
そうなると、候補者の数はさらに膨れてしまう。

だからあっても自分に連絡が来る確率は、ネットアンケートに比べて少ない。

今や、「マーケティングではすごいよ!」と自負する大手広告代理店でさえ、ネット会員でアンケートを取っている時代だ。
何百万も取る分析報告書が、ネットで集めた回答を基準にしていることもあるそうで――

だから、社会参加型の人も、ネットアンケートに登録するのが良さそうだ。

ハッピーの名誉のために付け加えておくと、決してネット偏重主義ではなかった。
むしろ紙ベースを好んでいた。さすが活字に関わる人たちばかりらしく。

ネットアンケートを主に使ってはいたが、目黒さんは言っていた。
「でも実際のうちの読者は、紙ベースのところに寄っていると思うのよね」

いろんな人がインターネットを使いこなし、本も雑誌も好きだけどネットもできる、という人も増えた。
だから目黒さんが思うよりも、もしかしたらインターネットは普及していたかもしれないけど。

目黒さんの言うことにも一理ある・・・・・・

その後のアンケート許諾 イエスノー

荒川さんと日野さんの時代の中間くらいに、システム改変があった。
頼んでいるシステム会社ごと変わるくらいの勢いで、会社全体がちょっと大変そうだった。

それに伴って、読者ホットラインが使っているアンケートシステムも変わった。

そのついでに、仮会員登録についても見直されることになった。

世の中は「個人情報の保護」について、とても厳しくなってきていた。
これまでの「「協力できる」に○をつけているから、会員登録してメールを送っちゃえ」方式は、ちょっとばかり通用しなくなってきた。

いきなりアンケートが送られてきた!という苦情も何件かあった。
――それはあなたが「Yes」に○をつけたからだよ、というのは、少し前なら言えたが、今は言えない。

基本的にはこれまでと同じで、「Yes」や「協力できる」に○がついていたら、Yesだ。
そして、氏名・住所・電話番号など、基本情報に不備がある場合は、仮登録もしない。

ここからが違う。
仮登録した人には、いったん、本登録を促すメールが配信される。
「このメールは、アンケート許諾で「Yes」に○をつけた人に送っていますよ、本当に登録してもよければ、下記のURLをクリックして本登録してくださいね」というメールだ。
このメールで本登録までした人にだけ、アンケートメールやメールマガジンが送られる。

ついでに時代は、ネット時代になっていた。
なんといっても、郵送のアンケートは100人に配信するのに、80円(または50円)×100人の費用がかかる。
ネットアンケートなら、1000人に配信しても、コストはゼロだ。

この頃になると、雑誌業界は斜陽になったと言われ、ハッピーも少しは生き残りを意識し始めていた。
雑誌の特集のためにアンケートを取るのももちろんだし、お得意の広告主様のためにちょっとアンケートを取ってマーケティング分析みたいなことをするようにもなっていた。
(まあ、またしても詳しいことは分からないんだけど。わたしは末端すぎて。)
こうでもしないと広告が取れなかったのかもしれない。
(前も書いたけれど、雑誌そのものも、雑誌を作る会社も、支えているのは広告費である。売上だけでは会社は立ちゆかない。)

そんなにたくさんのアンケートをやるというのに、郵送や電話では費用がかかりすぎる。

というわけで、圧倒的にアンケートはネットアンケート主流になった。
ハッピーは、まだネット以外も大切にしていたほうだと思う。

ネットアンケートを送るのは、パソコンメール。
携帯メールは、料金なのか、システムなのか、いろいろ問題もあるらしく、アンケートにはあまり使われなかった。

そこでアンケート許諾の仕分けにこういうルールが増えた。
「パソコンメールがない人は、No」

これで圧倒的に「ノーの人」が増えた。

わたしはまず、パソコンメールのあるなしで分け、あった人をさらにYesとNoで分けるようになった。
これまでの「Yes」「No」の比率と、まったく逆転してしまった。

実は、入力は「ノーの人」のほうが楽である。
会員登録の部分がなくて済むので、3分の2くらいの時間で終わる。

でも今度は、新たなイライラが登場した。
「パソコンメールアドレス」という欄の記載を、会員登録システムに入力しようとすると、エラー。
なぜ? と思ってよく見ると、xxxxx@docomo.ne.jp ――携帯じゃん!!

パソコンメールアドレスはないけど、携帯ならあるよ! と書いてくる人は、結構何人もいる。
ハッキリと「PCメールアドレス」「パソコンメールアドレス」と書いてあるにもかかわらず。

中には「携帯ですが」とわざわざ断りながら書いてくる人もいる。

ダメなんですよ。
携帯は登録できないんですよ。
エラーになっちゃうから、書いてきてもわたしが困るだけで終わっちゃうんですよ。

それもやがて解消された。
仕分けのときに「書かれたアドレスが携帯じゃないかどうか?」も確認するようにしたからだ。

こればっかりは、人力である・・・・・・

アンケート許諾イエスノー

昨日の話からちょっと続いているのだけれど、アンケートにはたいてい「アンケート許諾」の質問がついている。
「これからもアンケートに協力していただけますか?」というもの。

ここに「Yes」と答えた人は、会員登録し、次にWebその他でアンケートを取る時に、メールが送られる。
「Yes」と答えたアンケート用紙は、読者ホットラインでは「イエスの人」と言われ、「No」とか「協力できない」と答えた用紙は「ノーの人」と呼ばれていた。

Yesの人は仮会員登録をした上で、アンケートを入力。
Noの人は、登録しないので、会員システムと連携しない形で入力する。
つまり、入力URLがちょっと違うのだ。

わたしが入社したとき、わたしの業務管理をしていたのは、中野さんだった。
わたしは単発としてやってきたし、最初は完全に管理されて働いていた。

「今日はこれ」と言われたものをやる。
「この人はイエスの人です」と言われたら、その人たちはイエス。

やっていて「ノーの人」がイエスに入っていると、よけておく。
――これは、悲しいことだ。
アンケート許諾の質問は最後のほうにあることが多かったから、そこまでせっかく入力したのに、×でブラウザを閉じる。
入力は無効だ。
一日70枚というノルマがあった当初は、「えー!」と思ったものだ。

最後に、中野さんに「これは入力済みです。これは未入力です。これはNOの人が混じっていた分です」と渡す。
そのように付箋も貼ってある。

翌日になると、「今度はNOの人をお願いします」と渡されたりする。
その中に、昨日自分が発見した、「イエスに混じっていたノーの人」を見出したりする。

その後、中野さんが忙しくなり、(あるいは異動後)、墨田さんや足立さんが「Yes」「No」の仕分けをするようになった。
墨田さんと足立さんは、「今日の分」という渡し方はもうしなくなっていて、全部渡してくれた。

わたしは分けてもらったものを、もう一度自分でチェックするようになった。
最後の最後まで入力して「あ~あ」というのは悲しいからだ。
自分が仕分けて間違えたものなら、自分に怒ればいいし。

そのときに、実際どういうものを「Yes」「No」と言うか、知った。

アンケート許諾が「Yes」「協力できる」 → 仮会員登録
アンケート許諾が「No」「協力できない」 → 登録なし

さらに、Yesの人は会員に登録するわけだが、名前・住所・TELがないと仮会員登録はできない。
ということは、Yesであっても、これらの情報に不備がある人はNo扱いになる。

それまでわたしは律義に中野さんに返していた。
「この人は名前がなくて登録できませんでした」(名前なしのため登録できず、という付箋を付けて)
「これはTELがなく、登録できませんでした」(TELなしのため登録できず、という付箋を付けて)

それらは結局、ただ付箋を外されて(あるいはついたまま)、NOとしてまたわたしに渡されるだけだったのだ。

――なぁんだ。

わたしはYesとNoを分け、さらにYesはもう一度チェック、不備があるものをNoに移した。
これだけしておけば、途中で「あれ? この人Noだ」ということがない。

わたしの作業は事前チェックをしっかりすることで、気持ち的にとても楽になった・・・・・・

書き方に注意

アンケートをたくさん入力してきたので、だんだんルーチンワークになる。
ルーチンワークは、リズムに乗ってやりたい。
だからリズムを崩すことに出会うと、イライラする。

「作りたいと思ったお料理を3つ書いてください」
こういう質問に4つ書いてくる。

「1.作りたいと思ったお料理3つ  2.作りたくないと思ったお料理3つ」
『2.作りたくないと思ったお料理3つ』を二重線で消して、『作りたい』に書き換え、書いてくる。

「3.どちらともいえない 4.あまりよくない」
両方に○をつけてくる。
「いくつかはおいしそうだと思ったけれど、いくつかはおいしくなさそうに見えたので、どちらとも言えない。でも主人はどれも食べたくないと言ったので、作らないかもしれない。それを考えると、あまりよくないのだが、私一人のお昼になら作ってもいいかもしれない。」
――回答を読んでも、やっぱりどっちなのか分からない。

「今後、ハッピーのアンケートにご協力いただけますか? 1.はい 2.いいえ」
「はい」に○がついている。
チェックを付けた後に、ちょっと離れたところに「郵送なら」とか「送るのは1ヶ月に1回くらいにしてください」など、但し書きを発見。
またマウスを戻して「2.いいえ」にチェックし直す。
心の中でちょっと舌打ち。

「今後、ハッピーのアンケートにご協力いただけますか? 1.はい 2.いいえ」
「はい」に○がついているけれど、但し書きを発見して、「2.いいえ」にチェック。
でもよく見たら「喜んで!」「待ってます」などだったため、「1.はい」に直す。
心の中でちょっとため息。

「この手帳を使いましたか? 1.はい 2.いいえ」
「前の質問で 1.はい と答えた方に質問です。どのように使いましたか?」
最初の質問は「2.いいえ」なのに、次の質問に答えてくる。
「使っていないけど、いつか使う予定なので」と注意書きがあったりする。

要するに、紙は自由がきく。
でもそれは、自由のきかない電気信号みたいなデータになってしまうのだ。

「3つ」と言ったら、「3つ」。
4つ入力する枠はありません。

「1つ選択」と書いてある選択肢があったら、1つしか選べない。
2つ選んでも、こちらは入力できません。

そこで、どうしたらいいか判断するため、ちょっと作業が途切れる。
それがわたしのイライラの原因になる。

でもそれも、さらに時が経つと、感じなくなる。
人はだいたい同じことをするから、自分の中にルールができる。

4つ書いてきたら、上から順に3つだけ入力。
二重線には敏感になり、線が見えたらチラッと確認。書き換えられていたら、入力しない。
どちらにも○をつけてきたら、基本は悪いほう。
(以前、調査会社に単発で行ったとき、そうしてたから、プロに倣うことにした。)
アンケート許諾は、最初に完璧に仕分けてしまうようにした。

もうイライラもしなくなっていくのだ・・・・・・

みなちゃん 2

墨田さんと足立さんの時代の「みなちゃん」の手紙には、かなりの確率で松前聖子の写真が同封されていた。
そのうちの半分くらいは、ななみ猛との婚約のときのもので、400倍に拡大コピーされていることが多かった。
「あんまり幸せそうな笑顔だから」この写真を送ります、という添え書きつきで。

その後、荒川さんと日野さんの時代の「みなちゃん」は、松前聖子の写真はあまり送ってこなくなった。
この時期の「みなちゃん」は、職場の憧れの人の話か、自分の話か、どちらかだった。

「みなちゃん」は、どうやら施設に住んでいるか、通っているかしているようだった。
そして短時間、企業で働いていた。
企業側は障害者雇用の一環だったらしく、「みなちゃん」の担当者がいた。

「みなちゃん」はその担当者の八王子さんに、乙女らしい憧れを抱いていた。
片思いの彼、と言ってもいい。
20年近く前の自分が懐かしくなるような、一途で疑いのない片思いで、アンケートのお便りはあまずっぱかった。

二人でコーヒーショップでコーヒーを飲んだときなど、とても有頂天になっていた。
読んでいるとマンガの主人公のような、目の大きい少女をイメージしてしまう。

――でも実際は、年齢も40近く、外見もかまわないのでバサバサッとしている。
そう、外見は、一度自分の写真を同封していたことがあって、見たことがあった。
お便りの可愛らしいイメージとはかけ離れていたので、ちょっと驚いた。

八王子さんの話をしていないときの「みなちゃん」は、普段の自分の話をする。
・今日も**のドトールでなんとかラテを飲んだ、おいしかった、とレシートが貼ってある。
・今日は**のドトールでトーストを食べて、カフェオレを飲んだ、とバターの蓋が貼ってある。
・今日もダイエットのために、裏の庭でなわとびをした、と書いてくる。
・医者に言われて痩せるためになわとびを毎日500回しているけれど、疲れてやる気になれなくて、今日は300回でやめてしまった。こんな自分が嫌になる。と書いてくる。

それから「みなちゃん」は、昔の自分の話もする。
・お母さんと一緒に1980円のうな重を食べたときは、とってもおいしかった。1980円のうな重はもう一回食べたいと思った。まだ1980円のうな重をもう一度食べていないけど、またいつか1980円のうな重を食べてみたい。と語る。
・家族みんなで、お参りに出かけようとしたことがある。結局行けなかったけれど、行けなくて残念だったけれど、家族みんなでお参りに出かけたら楽しかっただろうと思う。と語る。

「みなちゃん」は女の子だから、アクセサリーや可愛いものが好きだ。
わたしも好きだけど、年も年だし、外見も外見だし、なかなかそうも言えない。
でも「みなちゃん」は自分の気持ちに素直でいられる人だ。
・今日は、デパートでポリエステルのブラウスを見かけた。ピンク色でフリルがついていて可愛かったけれど、2000円だったので買えなかった。あと2日したら施設のお小遣いの日だから、それまで取っておいてください、と店員さんに言った。とっても恥ずかしかったけれど、あのブラウスが買えたらすごく嬉しいと思う。と言う。
・サンストーンのネックレスを買った。とっても高かった。(もしかして詐欺まがい?と思う話だった。)とっても綺麗だから、大切にしようと思う。新月の夜には塩水につけて、きちんと保管しようと思う。(この保管方法を売った人から聞いたらしい。)綺麗なアクセサリーをもっと欲しいと思う。と言う。

「みなちゃん」のお便りを読んでいると、ちょっとだけ素直な気持ちになる。
頑張ろうかな、って気持ちになる・・・・・・

みなちゃん 1

お便りアンケートを送ってくる人の中に、名物読者がいた。
通称「みなちゃん」である。

わたしが入社してから1年くらいの間の「みなちゃん」は、松前聖子が大好きだった。
「みなちゃん」風に言うと、“松前聖子さん”だ。

「あ、みなちゃんだ。今回も松前聖子の写真を送ってきてる!」
「あ、ホントだー。みなちゃん、ホントに松前聖子が好きだねぇ」

隣同士の墨田さんと足立さんが喋っている。

墨田さんに聞いてみると、「みなちゃん」とは長野みなさんという読者さんだという。
「いつもお便りアンケートを送ってくれるんだけど、なぜかよく松前聖子の写真も一緒に送ってくれるんですよ」

見せてもらうと、お便りアンケートには普通にお便りが書かれていた。
「ハッピーライフさんへ。ハッピーライフさん、今回もいろいろ勉強になる記事をのせてくれてありがとう。一生懸命読んで、勉強して、読んでいきたいと思います」とこんな感じで始まり、熱烈に賛美。

そしてお便りと一緒にホチキスで留められていたのが、とても大きな松前聖子の笑顔。
そしてメモ用紙に書いた追伸。
「ななみ猛さんとの婚約発表のときの、松前聖子さんの笑顔がとても素敵だったので、400倍に拡大コピーして送ります」

それは、もうとってもとっても前の話で、松前聖子さんは既にななみ猛さんとは破局を迎えていた。
その上、別の男性と結婚、女の子も生まれ、その男性とも離婚。
女の子ももうかなり大きくなっていた。

なのになぜ今頃、「ななみ猛さんとの婚約発表」のときの写真を?
そしてなぜ400倍に拡大してコピー?

やがてそのお便りアンケートも編集部に渡され、次の号のお便りアンケートをナンバリングしていると――

また「みなちゃん」は熱烈な「ハッピーライフさん」へのファンレターを書いてよこし、そこには400倍に拡大してコピーされた松前聖子の写真が。

「みなちゃん」は、通称「みなちゃん」だが、実際の年齢はわたしと同じくらいだった。
だから松前聖子ファンであっても不思議はない。
時代は流れても、「みなちゃん」は流行に流されない。
松前聖子が素敵な笑顔をしているから、松前聖子が好きなのだ。
「あんまり幸せそうだったから」、ななみ猛との婚約発表のときの写真が好きなのだ。

この写真をいつもいつも見せてもらった。
「みなちゃん」は読者ホットラインでも有名人だったし、編集部でもちょっと有名人だった。

契約社員の中野さんも知っていて、「みなちゃんはずっとお便りを送ってくれてるんですよ」と言っていた。
「お母さんと一緒に住んでいたんだけれど、お母さんが亡くなったときは可哀想だったわ」
そういう日々の心の襞を、ずっと「ハッピーライフさん」に宛てて書いている人なのだ。

他にも毎回のように送ってくれる人はいたかもしれないが、「みなちゃん」ほど強烈な印象を残した人はいない。
彼女は本当に本当にハッピーライフを愛し、「命より大事な本だから」と書いてくるのだった・・・・・・

納涼会と新年会

前もどこかでちらりと書いたけれど、ハッピーは大会社ではない。全然ない。
従業員数は200名に満たない。

毎週月曜日には、一番大きな会議室で、全社員の朝礼があるくらいだ。
(全「社員」。アルバイトと派遣はその場に残って、月曜のみ簡単な掃除をする。)

年2回、宴会もあった。
新年会と納涼会だ。

これはアルバイトや派遣も出席できる。

一番大きな会議室と、二番目に大きな会議室が会場だ。

準備は総務部がする。

会場には会議用のテーブルが、宴会用に並べられる。
そこにはいろいろな料理が並ぶ。
買ってきたものもあるけれど、作ったものも多いのが、料理雑誌も出しているハッピーらしいところ。

総務部には料理の上手な人がいて、その人が腕をふるう。
レシピは当然、ハッピーライフやハッピーキッチンから。

紙皿や紙コップが用意され、手軽に食べられるようになっている。
お酒やジュースも用意され、紙コップで飲む。

この日の総務は、終業が近づくにつれ、大忙し。
総務のキッチン(キッチンは総務と編集と2つある)に近い島には、料理の香りがたちこめる。

会場分けは、そのときによって指定される。
「携帯番号の末尾が奇数の人は会議室A、偶数の人は会議室B」とか。
「内線電話の番号の末尾が奇数の人は会議室A、偶数の人は会議室B」とか。
「誕生日の日付の末尾が奇数の人は会議室A、偶数の人は会議室B」とか。

親睦会みたいなものなので、できるだけシャッフルされるわけだ。

あまり長い時間ではない。
会社内でやっていることだし、1時間か2時間くらいで撤収されるらしい。

実は参加したことがないので、現場はよく知らない。
他部署の知り合いが少ないので、シャッフルされたら知らない人だらけだろうと思って、出たことはない。
もし同じ島の社員さんがいたとしても、社員同士の交流があるだろうから、くっついているわけにもいかないだろうし。

――そのための親睦会だろうとは思うけど、わたしには無理。

経営企画や経理など、ほぼ定時に帰る部署は、タイムレコーダーでIDカードを切ってから参加する。
編集部みたいにもともと夜が遅くて、会の後も仕事をする場合は、「途中で抜けたよ」という意味の打刻をしてから参加する。
そして仕事に戻るとき「仕事に戻るよ」という意味の打刻をする。

わたしもいつかはこの会社を辞めることになる。
辞めてしまう前に、一度くらいは出てみてもいいかなぁ。

とは思うけど、なかなか勇気が出なかった・・・・・・

会社の仕組み

年の半分くらいは来ている株式会社ハッピー。
でもわたしの立場は「単発派遣」のままだったから、社内の情報には疎かった。

もしかしたら、もっと積極的に行動したら違う結果になったのかも。
でも自分でもこの「末端」の位置が居心地良かったし、あくまで第二の仕事だから責任が重くても困ると考えていた。

そういうわけで、社内の仕組みもよく分からないし、異動があっても自分の島の人に関係がなければ興味がなかった。
――たとえ興味があっても、知りようがない。
メールアドレスもないから全社お知らせメールも来ないし、社内ネットも見られる設定になっていなかった。

知らない間に異動は発表され、完了していた。

ある日、お昼に中野さんが言った。
「昭島さんが異動になってね」

え! 昭島さんて、本誌ハッピーライフの副編集長だった人ですよね?

この人は座談会のとき「副編集長」として、わたしの脳にもインプットされていた。
――あの人が本誌から異動しちゃったんですか!

「本誌から――どこだったかしら? 確か、書籍に移ったんじゃないかしら」

ハッピーの刊行物は雑誌が主だが、雑誌内の連載をまとめたとか、人気の人のエッセイなど、本も出していた。
それを総称して「書籍」と言っている。

少し前に、社内掲示板で「昭島さんが新聞に載りました」という切り抜きを見たばかり。
「女性として副編集長として」みたいな内容のインタビュー記事だった。

なのに、もう違うんだ。

わたしはなんとなく、この人が次の本誌編集長になるものかと思っていた。
どうやらそういう持ち上がり方式じゃないんだなあ。
当たり前か――会社って普通ピラミッド型になってるものだもんね。

「一応ハッピーライフは20代30代をターゲットにしてるからねぇ。
やっぱり編集の人たちはすごく情報収集もしてるし、新しいことにも敏感だけど、それでも年齢が上がっちゃうとついていききれないところが、出てきちゃうんですって」

――は~、そういうもんですか。

「だから若いうちは編集部に入って、だんだん年齢が高くなると、他の部署の管理職になっていくんだそうですよ」

――は~。そんな仕組みなんですね~。

そういえば、正社員として入社する新入社員は必ず編集部に配属されますもんね。
創業初期の中途入社の人たちは、最初から編集以外の部署にも行ったのだろうけど。

じゃあ、いろんな部署のいろんな人がかつての編集部員なんですね・・・・・・

社内巡礼

ときどき、社内を巡礼して回る人がいる。
順番に1つ1つの部署で「これ、どう思いますか?」と意見を聞いている人たちだ。
1人で回っていることもあるし、2人くらいで回っていることもある。

意見を聞くために巡礼しているのは、だいたい通販部か編集部。

まず、誰かがやってきて、「ちょっと質問してもいいですか?」と言う。
席にいる人は皆、仕事の手を止めて、その人を見る。

その人は、旅行バッグを持っている。(ということは、通販の人なのだろう。)
「このバッグを今度通販するんですけど、裏地はどれがいいと思いますか?」
そして布見本を取り出す。3つくらい、正方形の布が貼り付けられた厚紙だ。

回し見たり、席を立って人と一緒に見たりする。
「あたしはこれかなぁ?」
「どれも派手っていうか、華やかですね」

目黒さんや品川さんなど、社員の人は質問もする。
アルバイトや派遣でも、立場や年数や性格によって遠慮なく質問できる人はする。
「外側は全部その色なの?」「そうです」
「外側の材質は何? 合皮?」「合皮です」

一通り見てちょっとがやがや雑談があった後、巡礼の人は言う。
「じゃ、この布がいいと思う人は、どのくらいいますか?」
手をあげる。
巡礼の人は人数を数えて、持参の表にメモする。(見本の隣に「正」を書いていく人もいる。)

「じゃ、この茶系の色がいい人は――」
手をあげる。メモをする。

終わると「ありがとうございました」と去っていく。

そして今度は隣の島の辺りから、声が聞こえてくる。
「次に販売するバッグについて、ちょっと質問してもいいですか?」

少しするとがやがや相談する声や、「デザインはこれひとつだけ?」などの質問が聞こえてくる。

――これが巡礼。

編集部はそれほど来ない。
というか、よく見たのは、イメージチェンジ前後の「ハッピーヘルシー」だけ。

編集長と副編集長がやって来る。
「今度の号なんですけど、こっちとこっちと、どっちがいいですか?」
試し刷りの2枚の表紙を持っていて、かざしている。

それぞれ決を取り、「やっぱりこっちが多いのね」とか「あら、ここは他と逆になったわね」とかつぶやく。
「こっちがいいと思った人、なんでそう思いました?」

2つの表紙は、絵面は同じだが、色合いが違うことが多い。
かたや、白バックにタイトル文字は赤、小見出し文字はピンク。
かたや、クリームイエローをバックに使い、タイトル文字は水色、小見出し文字は青。

表紙はごくごくまれに、本誌(ハッピーライフ)の編集長も聞きに来た。

たとえば、今回はいつもの表紙とガラリと変えてみた、とか。
なんかそういう、特別なことがあったときだけ。

年に一度発売される、ハッピー手帳やハッピーカレンダーなども、色見本や写真見本を持って巡礼の人がやってくる。
でもこれは、通販でも編集でもないと思う。

ただ、「じゃあ、どこなのか」と言われると、わたしには担当部署が分からないのだが・・・・・・

すさまない目黒さん・・・

「バックナンバーが欲しいのですが、どうしたらいいのでしょう?」
お便りアンケートにチラリと書いてある。

――目黒さん、こういうのがありましたが。
すると、「じゃ、対応しなきゃね~」

「先日、ハッピーライフを買ったら、付録がついていなかったんです」
ハッピーキッチンのアンケートの余白にポツンと書いてある。

――目黒さん、こんなこと書いてありますが。
「じゃ、すぐに連絡しなきゃね~」

目黒さんは、さすがだ。
こんなに長い期間やっているのに、全然すさまない。

でもこういう意見もある。
ずっと後に入った若い葛飾さんのセリフだ。
「目黒さんは自分でやらないから、このつらさが分からないんですよ」

まあ、確かに「連絡しなきゃね」の後は、「××さん、これ**部に伝えておいて」と紙を手渡して終わり。
5年も経つ頃には、わたしに直接「そう~、それは宣伝部ね」と言ったりもするようになった。

いや、そう言われても、わたしどうしていいか分かりませんから。

目黒さんはわたしたち下っ端仲間にしてみたら偉い社員さんなわけだから、当然そんな雑用はアルバイトや派遣に命令していい。
そのためのアルバイトや派遣なのだから。

でもそれがあるからすさまない、偉い人ほどすさまない、ってことはあるかもしれないなぁ・・・・・・

すさむわたし・・・

「ハッピーライフは購入したことがありますか?」
回答:ほとんど毎号、2号に1号、3,4号に1号、たまに購入、ほとんど買わない

答え:4.たまに購入
主婦になって10年、最初は買ってスクラップもして、とても参考にしていたけど、最近は家事にも慣れ、「たまに」になった。

――言い訳しなくていいよ。
余白に書いてあるから、何かと思って読んじゃったよ。
時間が数秒無駄になった。
アンケート許諾やその他について何か言ってるかもしれないから、読まないわけにはいかないんだよねー。

――そんなすさんだことを言われたら、相手の読者さんも言うかもしれない。
「あんたみたいな下っ端に読ませるわけに書いたんじゃないわよ!! あんたの前か後に読む編集者さんのためよ!」

ごもっとも。

じゃ、次の事例。

「この家計簿をこれまでにも購入したことがありますか?」
回答 購入した、もらった、知ってはいた、初めて知った、その他

答え:5.その他
2000年から毎年使っています♪

――それ、「5.その他」じゃなくて「1.購入したことがある」だよ。
気持ちは分かるけど、そういうときは1にしといてよ。
5をクリックして、( )内を書こうと思って気づいたから、また1をクリックし直しじゃん。
統計としては困るんだよねー。

――そんなすさんだことを言われたら、相手の読者さんも言うかもしれない。
「あんたの手間なんか知ったことじゃないわよ!! あんたはクリックし直せばいいでしょ!
編集者さんはこういう熱い気持ちも知っておきたいに違いないわよ!」

ごもっとも。

なんだかすさんでいく自分である・・・・・・

読者層

毎日は勤務していないけれど、行けばずっとアンケートを入力している。
なんとなく、読者層みたいなものが理解できてくる。

もちろん、アンケートを送って来る人は、全体からすれば少ない。
100冊売れて、100枚アンケートが戻ってくることなんて、ない。
いつも出す人もいるだろうし、いつも出さない人もいるだろう。

だからわたしは、全体の何分の1だかの気持ちを読んでいるにすぎない。
それに、いつも出さない人の気持ちは分からないから、偏った層かもしれない。

でもなんとなく、少なくともこの何分の1かについては、感覚で分かってくる。
「あ、もしかしてこう考えるんじゃないかな?」っていうのが。

雑誌によっても、ちょっと違った。

たとえば、「ハッピーヘルシー」。
この雑誌は、一度イメージチェンジをした。

イメージチェンジ前の読者は、ちょっと保守的なところがあり、イラストレーターが変わったりすると表紙の評価が下がる。
美容より健康に興味がある。
美容に興味がないわけではないが、美容の記事がたくさんあったり、突っ込んだ内容だったりすると、拒否反応を示す人がある一定以上いる。
曰く「メイクに興味がないから」「美容に興味がないから」「この雑誌にそういう情報を求めていない」

たとえばあるとき、加圧トレーニングの記事が載った。
軒並み評判が悪かった。
「そんなの聞いたことがない」「こんなのあまり体によくないと思う」「興味がなかった」
まだ加圧トレーニングなんて、あまりあちこちで言われていない頃だった。

しばらくして、テレビや雑誌で「加圧トレーニング」の文字をよく見かけるようになった。
「今度は加圧トレーニングを特集してください」「今人気らしい加圧トレーニングについて詳しく知りたい」

新しい情報をくれるのこそ雑誌かもしれないけど、新しすぎても拒否される場合があるんだな、と思った。
だけど、あまりあちこちで紹介されている内容は、「どこでもやっている」「もう知っている」「今さら」「またかと思った」と言われてしまう。
絶妙のタイミングで出さないといけないんだなぁ――。

でもイメージチェンジ後は読者層が少し変わり、以前より美容記事寄りにシフトした。
そして「知らなかった情報」に価値を見出す感想が増えた。

これが「ハッピーライフ」の読者だと、また違う。

「ハッピーライフ」の読者はかなり素直だ。
たとえばこんなふうに言う。
「キッシュなんて食べ物、知らなかったので、知ることができて嬉しい」
知らない情報を知るのが楽しい人が多い。

そして、素直だなぁ、と思う人も多い。

たとえば、「小さなストレスがたまった状態を解消! プチスト特集」というのがあったとする。
「プチスト」という言葉は、ハッピーライフの編集者が作った造語だったとする。
そんな単語、どこでも聞いたことがない。

感想には、「小さなストレスがたまった状態をプチストと言うとは知りませんでした」なんて書かれてくる。
「プチストという言葉を初めて知ったので」「プチストという病名があるとは驚きでした」

もちろん全員じゃない。でも、一人でもない。

それから家計簿のアンケートに答える人たちは、「今後のアンケート協力:NO」が多かった。

調査会社のアンケートじゃないから、ネットなどでアンケートに答えてもポイントがたまるわけでもない。
せいぜい「回答者の中から抽選で5名様に500円分の商品券をプレゼント」くらいの謝礼だ。

そういうアンケートを今後継続して受け取るなんて、時間の無駄。ってことかな?
さすが家計簿を長年つけている人は、コスト感覚がシビアだと思った。

生活情報誌ハッピーライフや料理雑誌ハッピーキッチンの読者は、アンケートに参加するのを好む。
「YES」の横に「はい、喜んで」「ぜひお願いします」「待ってます」「ぜひ協力させてほしいです」と付け加えてくる人も多い。

これらの人たちにとっては、謝礼が重要なのではなくて、アンケートをすること自体が楽しいようだ。
「自分の意見を言う」「社会参加する」という一貫なのだと思う。

健康美容雑誌ハッピーヘルシーの場合は、おおむね参加OKだが、不可の人が本誌やキッチンより多い。
健康状態やメンタル状態が不調だから、その参考のためにヘルシーを買う人は、自分のことでいっぱいだからアンケート不可。
または、アンケートで体調その他個人的な情報を答えるのが辛いから、不可。

もしかして自分もこういういろんな人たちの感性に染まっていたりして、と考えるとちょっと怖い。
人の声を聞きすぎて、自分を失くしてないといいけど・・・・・・

割と普通

最初わたしにとって単なる「時給××円の単発」だった株式会社ハッピー。
今でも「メインの仕事の穴埋めに最適なダブルワーク」という認識のハッピー。

でも、そう思わない人もいる、ということは、さすがに分かってきた。

「出版社」というと「へぇ~」と思う人もいる。
ハッピーの親会社は固い企業で、そこに単発の仕事で行ったときもそうだった。
担当者に「本社または系列企業の経験」を聞かれて、「ハッピー」だと言ったら驚かれた。
「じゃ、編集とかやってるんですか!」――いえ、全然。

「ハッピー」という名前のもとで働けるなら、正社員じゃなくてもいいと思う人もいる。
給料が安いアルバイトでもいいから、ちょっと働いてみたい。
読者ホットラインにも、すぐ使い物になる立派な経歴の人が何人もやってきた。

もし募集したのがわたしの以前の職場クリーニング会社だったら、やってきたアルバイトにこれだけの仕事をさせるには、1年くらいかけてしっかり教育しないと無理かも。
――もちろん、わたしも含めて。
そしてやってきたアルバイトは、「こんなに社員みたいな仕事させられて、アルバイト? 社員にしてよ」と思うか、辞めるだろう。
――もちろん、わたしも含めて。

ここでちょっと断っておくと、どうやらこれは読者ホットライン特有のことらしい。
ずっとずっとのちになって分かったが、部署によってはアルバイトはアルバイトらしく、雑用をすることが多いらしい。
ちなみにこの会社、派遣は少ない。
なのに読者ホットラインには、今や2人もいる。

目黒さんのところは、他とはちょっと違うようだ。

ともあれ、そんなに特別な「出版社」勤務。
でもわたしにはよく分からなかった。

最初にわたしをここに連れてきた営業さんは、駅から歩きながら言っていた。
「出版社って雑然としているところが多いんですよね。
この会社は、出版社としては、とても綺麗なオフィスだと思いますよ」

その通りで、特にわたしがいる場所は、総務部や経理部に挟まれた穏やかな地域。
わたしがイメージする、昔のテレビドラマ風の「出版社」らしい雰囲気はない。
普通の会社だった。

同じ島の人たちは、だいたい定時に帰る。
わたしも残業をすることはほとんどない。

一度事情があって、数日ずっと1時間ずつ残業したことがある。
終業時間になってわたしが帰る頃に、まだいつも会社にいるのを見る人たちも、30分も経つ頃にはすっかりいなくなる。
残業していると目立つので、実にやりにくかった。

これが編集部となると、さすがに残業もよくしているらしい。
そしてその分、朝が遅いこともあるようだ。
だから社員はフレックス制なのだけれど、少なくとも総務、経理、経営企画の人たちは始業時間に常にいる。

ハッピーのお昼の休憩時間は、早い。
普通の会社より30分遅く始業するのに、お昼は普通の会社より15分早い。
だから午後がとても長く感じる。

「この時間だとまだお腹すかないんですよね」と言ったとき、品川さんが言った。
「前はこの会社、**にあったからね。あそこは早めに終わらないとどの店も満席になっちゃうのよ。
それに、編集部の連中は遅く来ることが多いからね。
昼を12時半とか1時からにしたら、来てすぐ休憩になっちゃう。
このくらいにしておけば、午後の開始から出勤するのにちょうどいいのよね」

なるほど、そういうわけですか。
じゃあ、他の部の人は合わせるしかないですね・・・・・・

火曜日は要注意

わたしには「一日70枚」の縛りがあった。
それは割とすぐにどうでもよくなってしまったが、最初のうちはあった。

また、ログでカウントされなくなってからも、わたしは自分で目標値を設定していた。
「今日はハッピーヘルシーだから、7時間で80~90枚やりたいかな」とか。
「今年のモニターさんはたくさん書いてくるから、1時間4件として、明日は午後だけだから16件やりたいな」とか。

こういう自分なりの予定、または「一日70枚」のノルマを達成するのに、要注意なのが火曜日だった。

火曜日は経理部が何かすることになっている。
毎週やっているのだから、週ごとのまとめか何かなのだろうか?

その作業が大変重い作業らしく、火曜日の午後3時から4時頃、アンケートシステムも大変遅くなるのだった。
だいたい火曜日の午後だけど、3時のこともあれば、3時半くらいのこともあり、なぜか遅くて4時を過ぎてから急に重くなることもあった。
この重い状態は、これも日によるが、だいたい20分から40分くらいで解消される。

慣れてきてからは、「トイレやちょっと休憩などは重くなってから行く」とか、自分で対策するようになった。
忘れていて急に重くなると、「あー、今日は火曜日だったかー」と思う。

火曜日になると「抽出していいですかー」「作業始めまーす」など、不思議な声がかかる。
でもそれと同時に重くなるわけではない。

たとえばアンケートを作成することに関係ない部署の人は、アンケートシステムを見たことがない。
そういうのがあるということは知っていても、その画面も見たことがなければ、使ったこともない。
必要のない人には使用が許諾されていないのだ。

同じように、経理部の人はアルバイトさんでも知っているだろうけど、他の部署の人は経理システムを見たことがない。
わたしも当然見たことがなく、そもそもそのシステムでどのような作業があるのかも知らない。

ただ、とにかくその作業は、わたしが使っているアンケート入力用のWeb送信速度にも影響を与えるほどなのだ。

「ご希望のプレゼント番号は?」○番
2を選んで、次へボタンをクリック

シーーーーン

画面下には、「このくらい進行しているよ」という印のオレンジ色の帯が出る。
でもなかなかゴールに行き着かない。

何もできずに待っていると、ようやく、パッ。次の画面に移動する。

「どこで買ったか?」「買った理由は何か?」「良かったテーマは?」「良くなかったテーマは?」・・・・・・
次へ
シーーーーン
何もできずに待っていると、ようやく、パッ。次の画面に移動する。

「何歳ですか?」「どの都道府県に住んでいますか?」「未婚、既婚?」「お子さんはいますか?」・・・・・・
送信(このページで終わりだから)。
シーーーーン
何もできずに待っていると、ようやく、パッ。やっと1件終了。

でも待っている時間は、実際は5分もかからない。何もすることがないので長く感じるだけなのだ。
15分くらいかかるというなら、他の仕事をする手もあるが――

と、いっても、わたしには入力以外の仕事はないか・・・・・・

慣れ、そして成長

ここまで、品川さん登場前後を見ながら、流れを追ってきた。
今度は、わたしの業務面から歴史をたどってみる。

どうもこの会社に長く通いそうだと分かった頃、わたしは入力の工夫をしてみることにした。

このままずっと働くとしたら、今のようなやり方をしていたのでは、手が痛くてたまらないと思ったのだ。
「でも来週はもういなくなる」と思えば我慢できるけれど、その後も来るとなったら話は別だ。
痛む手はあと3日したら使わなくなる、ということなら治るだろうけれど、ずっと続くとしたら治る暇もない。

それまでのわたしは、タッチタイピングとは言っても、手をべったり机に置いていた。
腕と掌の腹の一部分が机をこすっていた。
指がキーボードの上下左右を行き来するとき、常に手首の少し上の掌部分が机をこすって動く。
腕も机にべったりついているから、袖が汚れる。

7時間×3日、4日、仕事をすると、掌が痛くなる。
一晩休めば翌日はまた使えるけれど、でもやっぱりまた痛くなる。

わたしのこれまでのキーボード使用率だったらこのやり方でもいいけれど、入力の仕事をする限りこれではダメだ。
わたしはそう考えた。

そういえば、タイプライターだったかワープロだったか忘れたけど、本当に早い人は手を浮かせて打つって、誰かが言ってたな。
職業訓練時代のクラスメイトだった気がする。
それを聞いて一度練習してみようと思ったけれど、挫折したのだった。

あれなら掌を机につかない。

やってみると掌はつかなくなったので、痛くなることもない。

――ただ、遅かった。
慣れていないので、キーからずれたりすることも多い。
指の角度も違ってくるので、変にリキんでしまったりする。

しばらくは我慢して練習しようと思った。
幸い、仕事をする間ずっとこの方法にするだけで、自動的に一日何時間も練習できる。

そして気がつくと、手を浮かせたままでスムーズに打てるようになっていた。
今ではこれが当たり前だ。

また、これは目にも良かった。
以前は、キーボードをモニターに近付けて、手前にアンケート用紙を置いていた。
これだと、モニターが近すぎて、目が疲れるのが早い。

手を浮かせて打つようになって、モニター・アンケート・キーボードの順で置くようになった。
キーボードは机の端あたりにあり、わたしの手や腕は完全に空中。

手は痛くならない、目にも優しい、服も汚れない。
いいことづくしのやり方だったが、たまに不具合も起きる。

手の重量を自分自身で持ち上げておかなければならないので、肩がこる。
わたしは肩こり体質でないからまだいいけれど、こる人は辛いかも。

それとも肩こりにならないようなやり方というのも、工夫次第であるのだろうか・・・・・・

Vol.09

入力のみから業務拡大へ

喫煙所について

喫煙所は、のちになくなった。

前回と前々回の話の時点でも、既に世の中は「建物内禁煙」だったのだから、残るほうがおかしい。
このときも、確かに社内では吸えなかったけれど、どうして建物の中に喫煙コーナーを設けられたのか、不思議に思った。

「もとからあったものだから」とぎりぎりまでねばったようだ。
ねばっていた総務の武蔵野さんはタバコを吸わない。
吸う人たちは花形部署に多かったから、できる限りは建物管理の人に談判していた。

ハッピーが入っているビルの裏手のほうの道沿いに、コンビニがある。
ときどき、一番近いコンビニではなくて、気晴らしがてら裏側のコンビニに行った。
そのときは、ハッピーが入っているビルの横を通り抜けていく。

かなり建物から離れて歩かないと、とてもタバコ臭かった。
こちら側の壁面に沿ったところが、このビルの喫煙所だったのだ。

いろいろな会社から出てきた人たちが、タバコを吸っている。
冬ならポケットに片手を突っ込んで。
夏なら暑い外の空気にうんざりしながら。

下まで降りてきて吸うのは、時間もかかるだろうなぁ、と見ていた。

本当はこの建物脇の通路を行くのが一番の近道だったけれど、一回だけ通ってみてやめた。
息を止めているにはちょっと長い距離だし、ちょっとでも息をするとタバコ臭かった。
なにしろビル中の喫煙者が集まっているのだから。
夏は暑い炎天下を歩くより、ビルの影になるこの通路を行きたかったが、無理だった。

そしてある日、ついに「4月からこの喫煙コーナーを廃止します」という張り紙が廊下に貼られた。
期日はやってきて、煙を吸い取っていた機械も撤去された。

突当たりのはめごろしの窓は、いつ行ってもあまり人がいない。
わたしは疲れたときは、ここでゆっくり外を眺められるようになった。
――あまり長いことたそがれていても変なので、いいとこ1、2分だけど。
トイレが近いので、人通りがないというわけではないのだ。

ハッピーの社員は、1階でよく見かけるようになった。
外の喫煙コーナーに向いた出口の辺りで・・・・・・

カードを手に入れる

前回、喫煙所からの煙が臭いので、扉を締め切ることになった話をした。
そのとき、わたしと日野さんにだけ、セキュリティカードがなかったことが判明した。

最終的には品川さんのカードを借りるということで収まったのだが、そこに至るまではちょっとピリピリした騒動があった。

「ねえ、東大和さん、うちのさー、○○さんと日野さんにはセキュリティカードが支給されていないみたいなんだけど」
品川さんが総務の男性に言う。
「あー、それは」
東大和さんは小さい声で説明。全員には支給しなくても大丈夫だと思われるから、と説明された模様。

「え、でも、それっておかしいでしょう?」
「・・・・・・」
「同じ部署で、この人は持ってる、この人は持ってないっていうのもおかしいし、二人持っていれば大丈夫っていう根拠も分からない。
それを言うなら、彼女たちだって、あたしや大田さんが朝来ていれば入れるわけだから、要らないってことにならない?
そもそもセキュリティカードって、朝ロックを開けるためだけに配布されるものなの?
だったら、あたしはいつも大田さんより出社するの遅いから、あたしも要らないってことになるでしょ?」
「・・・・・・」
「違う? あたし、間違ってる?」

品川さんが異動すると言われたとき、千代田さんは「お手柔らかに」「お手柔らかに」と何度も言ったという。
その意味が、ようやく分かった気がする。

東大和さんは、金額が高いから全員には支給しない、という話をした模様。
コストのことを出されて、とりあえず品川さんも引くことにした様子。

「じゃ、あたしのカードをここにいつも置いておくから、○○さんと日野さんはここから勝手に持って行ってね」
と、自ら不便を忍んでくださることで、決着した。

最初の1回2回はわたしも使わせてもらった。

でも落ち着かないので、やめた。

トイレに行って、1分で戻ってくるなら気軽に借りられる。本当はそれでもちょっと気を遣うけど。
でも階下にジュースを買いに行くとか、ほんの2軒先のコンビニに飴玉を買いに行くとか、そういうときは1分じゃ済まない。

――それから、正直に言うと、息抜きに出かけたら、1分じゃ済まない。
なにしろひたすら入力する仕事なので、目が極端に疲れる。
手も極端に疲れる。
頭も疲れるし、気持ちも疲れる。
だからときどき、1階のトイレまで行って、帰りにその近くの窓からゆっくりと外を見たりする。
一番近いコンビニじゃなくて、裏側の二番目に近いコンビニまで行ったりする。

そういうとき、気持ちが落ち着かない。
今こうしてのんびり歩いている間に、他の人がトイレに行きたくなったら?
それが品川さんだったりしたら?

そこで、来客のためにいつでも開いている正面扉を使うことにした。

トイレにはちょっと遠いけれど、それもまた休憩だと思えば。
何より気が楽だ。

しかし品川さんは決して鈍感な人ではなかったので、すぐに気づいた。

「もしかして、中央の扉使ってる? 気にしなくていいのに」
そう言いつつ、でも自分のほうが地位が上なのだから、気を遣わないわけにはいかない、と品川さんは分かっていた。

その2日後くらいに、わたしと日野さんにセキュリティカードが支給された。
東大和さんが渡してくれるときに、言っていた。
「このカードは2000円くらいします。退社の際には返却してください。
失くした場合、弁済していただくことになるので、気をつけてください」

どう考えても、品川さんが手配してくれたに違いない。
きっと、千代田さんとか、誰か上の人にきちんと話を通して、あちこちにきちんと話を通して、そういう手筈を整えてくれたんだなぁ、と思った。

うーん、有難いが、またひとつ、身軽でなくなってしまった・・・・・・

タバコ臭くない?

経営企画の島は、ちょうど扉の正面あたりにあった。

扉から通路が続いている。通路の両脇は、それぞれいろんな部署の倉庫。
その通路を抜けると、横通路とT字にぶつかる。
そして横通路の向こうがコピー&プリンタと、経営企画。

そんな感じだった。

この通路は、トイレに一番近い。
そしてトイレの近くには喫煙コーナーがある。

いちいち閉めるのは面倒なので、扉はいつも開け放たれていた。
ひどいときは、タバコの臭いがわたしの机まで流れてきた。

あるとき、品川さんが突然言った。
「くさい!!」

「ねえ、タバコくさくない!?」
――そうですね、くさいかも。

でもわたしなどは下っ端だから、「うわぁ、くさいな」と思っても文句は言わない。
品川さんは社員だし、マネージャーだし、なんといっても品川さんだし、敢然と立ち上がった。

「あそこがいつも開けっぱなしだからいけないのよ」
そして総務にも。
「ねえ、あそこさぁ、いつも開けっぱなしだと防犯上もよくないし、閉めるべきじゃない?」

経営企画にはあまりタバコを吸う人はいなくて、いつも「臭いなぁ」と思ったりしていたが、誰も表立って言う人はいなかった。
けれど品川さんは、「間違っていない」と思うことに関しては毅然としているし――強硬だ。

翌日にはドアは常時閉めておくようになった。
品川さん自ら張り紙を印刷。貼付。
「セキュリティ上、この扉は常に閉めてください。開けっぱなしにしないこと!」

おお! 確かにタバコ臭さは劇的に減りますねぇ!

――しかし不便も生じた。
扉はどれもオートロックタイプで、閉まると自動的に、「シャー、ガチャ」という音がしてロックされる。

「トイレに行く時とかは、ちょっと面倒になっちゃうけど、セキュリティカードを使ってね」

え?
セキュリティカードって何ですか?

「セキュリティカードよ、ほら、これ」と品川さんが見せてくれる。

――わたし、持ってません。
すると日野さんも、「あたしもないです~」。

「え? ないの? どういうこと? 荒川さんは持ってるよね? 杉並さんは?」

そうして判明したのは、わたしと日野さんだけ、セキュリティカードが支給されていなかった、という事実。
日野さんより後に入った杉並さんも持っているのに、日野さんにもなし。

なぜかというと、高いから。
一枚2~3000円するらしく、全員分は支給できないという総務側の説明。
とりあえず社員は持っているし、荒川さんと杉並さんが持っていれば、困ることはないだろう。
日野さんより杉並さんが選ばれた理由は、日野さんが週4勤務で、杉並さんは普通に週5だから。

まあ、納得したし、ダブルワークのわたしはもともともらえなくて当然だから、全然気にならない。
でも日野さんはちょっと可哀想かな。

品川さんは、厚紙で小さな箱をササッと作り、自分の机の端に貼りつけた。
「じゃ、あたしのをここにいつも置いておくようにするから、二人はトイレに行くときはここから勝手に持って行っていいからね」

品川さんはそつない人なのである・・・・・・

長期契約

「派遣」という存在が、どうなるか分からなくなる、と揺れていた時代をご記憶だろうか?

わたしはメインにしている職場を気に入っていたので、その職場だけでは足りない収入の穴を埋めてくれるハッピーも大切だった。
ここを辞めるとなると、メインの職場のほうも進退を考えなければならない。
不安定な職場だから「できる限りは働こう」という気持ちだったのだけれど、まさかこんな形で穴埋め単発派遣側から落とし穴が来るとは。

「派遣はもうできなくなる」
「半年未満の短い期間の派遣は禁止される」「いや、3ヶ月未満の派遣が禁止される」
「単発の派遣でなければ許される」
「業種によっては許される」

そのときどきでいろいろな話が出て、ドキドキさせられた。
派遣会社もドキドキさせられていた。

わたしの場合、いかにも一番禁止されそうな働き方だったので、本当に不安だった。
他の派遣さんにとっては有難かったかもしれないけれど、わたしにとっては規制は有難迷惑だった。
そのおかげで逆に不利益をこうむるからだ。

でもまあ、それもやがて落ち着いた。社会の状況も、わたしの状況も、収まるところに収まった。
それがいい収まり方か、そうでないかは、わたしには分からない。

で、この騒動の初期の頃、派遣会社の女性営業さんが面談にやって来て、言った。
「今後は2ヶ月未満の派遣を認めないという案も出ていますので、これからは3ヶ月更新にしていきたいと思いますが、大丈夫ですか?
もちろん、契約は3ヶ月ですけど、勤務はシフト制ということで、今のようにもうひとつの職場と並行していくということで。
○○さんも、これまでもう3年近く毎月来ていますし、3ヶ月更新にしても何かしらお仕事はあると思うんです。
それを先方にお願いしてみようかと思っているのですが、その前にまず○○さんの希望を確認しておかないといけないと思いまして」

3ヶ月――。
わたしは「でも短期間だけのこと」と思うから、単発派遣ではあまりストレスがたまらなかった。
それが3ヶ月になったら、大丈夫だろうか?

確かにここまで3年近く働いてきたわけだから、居心地がいいってことなのだろう。
今までできたことなのだから、これからもできるだろう。
でもなんとなく縛られた気持ちになる――

一瞬そんなふうにも思ったけれど、背に腹は代えられない。
ここを辞めたら、もうひとつの職場だって辞める羽目になるかもしれないのだ。

「ありがとうございます、ぜひよろしくお願いします」

こうしてわたしは3ヶ月ごとの継続更新、つまり長期派遣となった・・・・・・

年賀状グループに参加

その年の暮れ、またいつものように島内に表が配られた。
年賀状用の住所リストだ。

第一期黄金時代の墨田さんと足立さんも、自分たちで社内ネットから社員簿の住所をコピーして、リストを作っていた。
社員簿は、当然社員さんとアルバイトさんしか載っていない。
派遣は、派遣会社に雇われているからだ。

だからわたしの住所はなく、わたしは年賀状のやりとりには参加しなかった。

年が明けて、千代田さんが墨田さんに出した年賀状がまだ届いていなくて、千代田さんは郵便事情の劣悪さに憤慨したりしていた。
目黒さんは年末のある一日をかけて会社で作成した年賀状で出したので、「あの写真を加工したのは」なんて話をしていた。
(付記すると、目黒さんは自分のために会社で作ったわけではない。
経営企画の社員が使えるように、経営企画の年賀状図案を自作するのだ。毎年。
それを千代田さんや大田さんが使っているかどうかは、知らない。)

今回は、荒川さんと日野さんに変わっている。
荒川さんは前の年の年末にはもう入社していて、足立さんからリストを渡されている。
だからまた同じように、自分たちでリストを作って、配り合っていた。

そこには、単発派遣のわたしの住所はやっぱりなく、長期であっても派遣なので杉並さんの住所もなかった。
名前はあれども、空欄になっていた。
わたしにとってはハッピーに入ってから3度目のお正月なので、空欄でも気にならない。
深入りせずにいることが、わたしのストレス軽減策だからちょうどいい。

「あ、リスト? あたしにも印刷してくれる?」
品川さんにとっては、初めての経営企画での年末年始。
荒川さんがもう1枚印刷して渡す。

「ありがとう。――あれ? ○○さんと杉並さんの住所はないの?」
「あ、派遣さんはないんですよ」
「あ、そっか。じゃ、○○さん、杉並さん、ここに手書きで書いて」

え、わたしたちも参加?

リストを貰っておきながら書かないことはできない。
千代田さんと大田さんに初めての年賀状を書いた。
(目黒さんは個人的に「よかったら○○さんの住所教えて~」とおっしゃったので、2年目からわたしも出していた。)

ああ、またひとつ、深みに・・・・・・

顔写真

株式会社ハッピーでは、入社すると写真を撮られる。
人事担当の人がやってきて、デジカメで撮る。

そしてそれが、社内ネットの「ハッピーフレンズ!」のページに載る。

ブラウザを起動すると、社内ネットのトップページが開く。
そこから、「ハッピーフレンズ!」というボタンをクリックすると、別ウィンドウでページが開く。
表があって、部の名前が書いてある。
部の名前をクリックすると、その部に所属する人の顔写真と名前が表示される。
写真なり名前なりをクリックすると、その人宛てのメール作成画面が起動する。

メールを送るために使うことはないけれど、顔を確認するには便利だった。
少なくとも、問い合わせなどを受けたら、それまで接触のなかった人にも報告書を出す必要が生じるので、読者ホットラインの人は便利に使っていた。
――わたしは所属は読者ホットラインでも、仕事が入力だけだから、ほとんど使わない。

「目黒さん、こういうお問い合わせがありました」
「それ、誰の担当記事? 広告ページ? じゃ、広告の、えーと、そこは××さんかな?」
「どんな方ですか?」
「ハッピーフレンズ!に写真が載ってない?」
「ああ、なるほど、この方ですね?」
そして席図で座席を確かめて、そこに行ったら写真の人を探してみる。

ここにはアルバイトさんも載る。長期派遣さんも載る。
でもわたしは単発だから、載らなかった。
写真を撮られることもなかった。

わたしは写真写りが悪いので、このことはとても嬉しかった。

このままひっそりと働いていきたいと考えていた。

でもある日――写真を撮られてしまった。
××さんという人事担当の人に。

そして後から聞いた。
「××さんが撮った写真は、どうもよく写らないのよね。
△△さんのはなぜかよく写ってるのが多いんだけどね」

その上、ハッピーフレンズ!のページを開いて、追い打ち。
「ほら、この**さんの写真とか**さんの写真とか、なんか可愛くないでしょ?
本人はもっといい顔なのに。これは××さんが撮ったのよ。
**さんとか**さんはよく写ってるじゃない? この人とこの人よ。
こっちは△△さんが撮ったのよ、確か」

まあ、誰が撮っても元が元なので、ステキには見えないからいいんですけどね・・・・・・

本誌、配布される

前に書いたと思うけど、「本誌」と呼ばれる看板雑誌ハッピーライフは、全社員に配られていた。
(社員さんには、本誌以外の刊行物も配られていた。)
さらに本誌は、アルバイトにも、派遣にも配られていた。

しかしわたしには配られていなかった。

わたしは長期契約ではなかったため、そういった対象にはならなかったのだ。

ときどき、わたしももらうことがあった。
急に世田谷さんが辞めてしまって、総務部に配布冊数を減らす手続きをする前に届いてしまったとき。
少し時間が経って、もうこれはいらないな、と思った目黒さんがくださったとき。
でもそれは、余りをもらったのであって、わたしの分ではなかった。

それがあるときから、わたしにも配られるようになった。

目黒さんが言ってくれたのか、人事の人が気を配ってくれたのか分からない。
ハッピーはそれほど大所帯ではなく、たぶん従業員は200名いなかったと思うから、人事の人の可能性もある。
派遣会社とやりとりをしている人は、美人の女性だった。

毎号、発売日の少し前に配られる。
これは総務部のアルバイトさんがする。
慣れないうちは、社内の席図を持ち、「この机は置く、この机は置かない」と見ながら配る。
座っている人には手渡すし、いない人の机には置いていく。

自分もいただくようになって、配られたらさっと見るようにした。
どんな特集が次に載るとか、一応さらっと見るべきかと思って。
でも自分の業務からして、今すぐその情報が必要になるわけではないので、さらっとだ。

そして、すぐには持ち帰らないようにした。
お便りアンケートの入力の際、不明点を確認するのに使うからだ。
そしてモニターアンケートのときにも。

今までは、不明点があると、読者ホットライン用のを見ていたが、自分用が配られるようになったのでそれを見ることにした。
だって、きっと、こういうことのためにくれたんだよね? と思って。
でも違うのかも。単なるサービスなのだろうか?

モニターアンケートは、締切がゆるく、後回しになりがち。
それが終わってから持ち帰るので、いつも時季外れになる。

もう3月も終わる頃になって「お正月特集号」とかね・・・・・・

ライトメッセージの利用

ハッピー社内では、ライトメッセージというものが使われていた。
フリーでも「ペタろう」というような、付箋ソフトかつメッセージ機能付のものがあるけど、あんな感じ。

離れた部署の人とちょっとしたことを連絡しあうのに使われていた。

メールはその人が見ないと分からない。
でもライトメッセージを送ると、相手のパソコン画面にパッと現れる。
だからすぐ分かる。

読んだら×ボタンで閉じる。
するともうその文面は見られない。
メールと違って、保存できない。離れた人と会話をしている感覚だ。

また、もうひとつメールと違うのは、相手がパソコンを起動していないと送れないこと。
送りたい相手をリストからクリックして選ぶが、起動していないパソコンはリストに現れない。

業務でも便利に使っていたと思うけれど、ちょっとした内緒話にも積極的に活用されていた。

たとえば読者ホットラインでも、お料理教室イベントの仕事で目黒さんとやりとりをしていた足立さんが、墨田さんにちょっと愚痴を送ったり。
または、墨田さんがちょっと一言、足立さんにこぼしたり。

隣同士の席にいても、目黒さんがいるところでは言えないこともある。
どんないい上司でも、何一つ愚痴もヤレヤレということもない、なんてありえない。

そういうことにも便利に使われていた。

逆に、離れた部署の人の席まで行くほどではないけど、ちょっと話したい、というときも使われていた。

当然、わたしのパソコンにはこのライトメッセージというものはインストールされておらず、使えなかった。
あなたの業務には必要ない、と言われればそれまでだ。

これも、あるとき品川さんが気づいた。
品川さんは、隣の席になってからよくしてくださって、いろいろお話するようになった。
ちょっと大声で言うのははばかられる、という話をライトメッセージでしようとしたら――
「あら? ○○さんはパソコンを今使っているのに、リストに名前がない」

「○○さんて、ライトメッセージ、ないの?」
「ないんです」

それからしばらくして、わたしは新しいパソコンを手に入れた。
プリンタにつないでもらったり、アンケートシステムが自分のパソコンから使えるようになったり、便利なことが増えた。

「とても便利になりました」
設定に来てくれた武蔵野さんに、わたしが言う。
その機会を捉えて、品川さんはサラッと言った。
「あ、それから武蔵野さん、○○さんのパソコン、ライトメッセージが入ってないの。
そうよね、○○さん? それもついでに使えるようにしてもらったら?」

こうしてわたしも、こっそり噂話ができるようになったのだった・・・・・・

メールアドレスができた

社内の人はメールアドレスを持っている。
たとえば、目黒さんなら「meguro@happy.co.jp」とか。(もちろんこれは仮の例)
足立さんはアルバイトだけど、メールアドレスは全員ある。「adachi@happy.co.jp」
墨田さんの場合は、「墨田」という人が他にもいたため、「sumida-n@happy.co.jp」。
下の名前の頭文字nがついていた。

でもわたしにはなかった。
単発だったからだ。

毎月行くようになっても、業務柄メールが必要というわけでもなかったので、そのままだった。

全社メールで知らされる、本のリサイクル会とか、それ以外のリサイクル会の開催は、墨田さんが知らせてくれた。
「○○さん、今度またリサイクルがあるらしいですよ」
「えー、そうなんですか? いつですか?」

通販品の社販セールなども、全社メールでお知らせが来る。
それも墨田さんが知らせてくれる。墨田さんが辞めてからは、足立さんや荒川さんが知らせてくれた。
申込書が添付されているが、もちろんわたしには届かないから、プリントアウトしてくれる。

飲み会というものの少ない部署だったが、年に一度くらいは忘年会などがあった。
アルバイトや派遣はその場ではお金を出さず、偉い誰か(たぶん千代田さん)が一括で支払ってくれる。
そして翌日あたり、「マネージャー社員は***円」「アルバイト・派遣さんは***円」とメールで請求される。
わたしにはこのメールが出せないので、目黒さんはわたしにだけは口頭で言ってくれる。

このメールアドレスがひょんなことから、わたしにも与えられた。

品川さんがやってきて、しばらく経つと、忘年会や暑気払い会などの幹事は品川さんがするようになった。
品川さんは広告部で長年やってきただけあって、こういうことが得意だった。

そしていつものように千代田さんが一括で払ってくれて、翌日、千代田さんや大田さんと相談した品川さんは請求お知らせメールをしようとした。
「あら? ○○さんのメールアドレスがない」

そこでさっそく品川さんは総務部のシステム管理担当者に、
「武蔵野さん、○○さんのメールアドレスがないみたいなんだけど、不便だから作って」

メールアドレスは非常に簡単に、あっという間にできた。

こんなに簡単にできるとは。
わたしには業務上必要ないから制限されているのかと思っていた。
でもそういうわけじゃなかったのね・・・・・・

アンケート画面作成ソフトのショートカット

読者ホットラインのメンバーなら、誰でも使えるようになるのが、Web画面作成ソフトだ。
これはどうしても業務に必須なのだ。
なにしろアンケートの多い業務で、誰もが何かしらアンケートに関わっている。
そしてアンケートを作るのは、このソフトなのだ。

ソフトの概要については、またいずれ述べることにする。

このソフトは、例によって、わたしにだけは関係のないものだった。
わたしは入力をするだけだからだ。
入力前にアンケート画面を作ることもなし、入力後に集計データを加工することもなし、報告書を作ったこともなし。

そんなわたしも、この頃にはアンケート画面を作ることだけはできるようになっていた。
その経緯も、またいずれ述べることにする。

一応できるようにはなっていたが、毎日のように使うわけではない。
というか、ほとんど使わない。
人手が足りないときに、何度か手伝ったときに使ったきりだ。

というわけで、このソフトのショートカットは、わたしのパソコンには作られなかった。
わたしは使うときは共有パソコンで作業していた。
それも人員が落ち着いてからは、ほとんどしていなかった。

それが今度、新しくなったついでに、わたしのところにも入れてもらえることになった。
なぜそんな話になったのか、ちょっと思い出せない。

このソフトは、たぶんサーバー上にあって、各自のパソコンにはショートカットしかないのだ。
どういうライセンス契約になっているのか知らないが、これをあちこちの部署の人が使っている。
だから社内全員にショートカットを渡してしまうことはできない。
あまり多くの人がいっぺんに使ったら、果てしなく重く、遅くなってしまう。

そういう配慮から、わたしには与えられていなかったのだと思うが、それができるようになった。

これはわたしにとって有難いというより、他の人にとって良かったと思う。

入力をしていると、作成画面のミスに気づくことがある。
これまでは、そのつど、作成者に言って直してもらっていた。
「墨田さん、今やっている5月前半号のモニターアンケート、Q5の理由欄がないので、修正してもらえますか」
――すると墨田さんは、自分の作業をいったんやめるか、急いできりのいいところまでするかして、直してくれる。
「○○さん、修正してアップできましたよー」
「ありがとうございます」
――で、わたしは、更新ボタンを押して入力を再開する。

共有パソコンは、ライセンスが全員分ない高価なソフトが入っている。
たとえばIllustratorやPhotoshopなどだ。(Quarkなどは読者ホットラインにはない。)
誰かが使っていることも多いから、少しの修正は作成者に頼んでしまう。

それがわたしのパソコンからも使えるようになったことで、少しの修正は自分でしてしまうようになった。
別にわたしが悪いわけではないけど「お手数かけてしまって」と恐縮するし、直すのを待つ間することもないし、自分でやってしまったほうが面倒がない。

こうしてまた一歩、入り込んだわけである・・・・・・

社内ネットが見られるようになる

株式会社ハッピーには、社内ネットがあった。
――そういう会社はきっと多いと思う。

ブラウザを起動すると、初期画面は社内ネットのトップページになっている。
公開はされていない。インターネット上にページがあるわけではないからだ。

トップページの上のほうには、総務部からのお知らせがニューストピックのように並んでいる。
溶解ゴミは何月何日にまとめて出すので、処分するものがある人は何番のブースに持ってきて下さい、とか。
全社員参加のデモ販は何月何日に行うので、予定を右のリンクから確認して下さい、とか。

トップページのリンクからは、いろいろなページに飛ぶ。
社員の予定表――これを見れば「あ、××さん、今日は出張か」などと分かる。
イベントの予定表――これを見れば、いつどこで広告部のイベントがあり、いつどこで編集部のイベントがあるか分かる。
アンケート速報――果たして何人が見ているのか知らないが、読みやすい形にしていないけど結果は確認できるよ、というページ。読者ホットライン担当。

その他いろいろなことが分かるわけだ。

でも入力のためだけに単発で来ているわたしには、要らないものだった。
だからわたしのパソコンからは、この社内ネットは見られない。

しかしパソコンが新しくなり、設定に来たシステム担当者は、ルーチンワークで見られるように設定してしまった。
というか、「え、今まで見られなかったの?」みたいな感じで。

ええ、まあ。
見られませんでした。

社員さんの予定表だのは、どこから見るのかも実は知らない。
教わっていないし、わたしも聞かなかったし、見られるようになっても誰も教えてくれなかった。
それにもしかしたら、アルバイトや派遣は誰でも見ているわけではないのかもしれない。
必要な人にはパスワードが配られているようだった。

だから社内ネットのすべてが見られるようになったわけではない。
見られるようになったからといって、便利になったというほどのこともない。

でもまたひとつ、できることが増えた。
また一歩、ハッピーに入り込んでしまった気がした・・・・・・
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