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本当のテープ起こし

本物のテープ起こしってどんなものなの?

そう思って調べてみた。
やり方の種類があるらしい。

1.「あっ」「えー」などの間投詞や「正直言って」「ちょっと」などのくせ言葉といった清書の段階で削るべき言葉も残らず文字にする素起こし
2.前項で挙げた読む妨げとなるだけの言葉を削るケバ取り
3.書き言葉として読みやすくするための整文

起こす人によって違うという。

実際にわたしがやっているのは、かなり自由なものかもしれない。

まず、座談会会場でも、テープ起こしでも、素起こしとケバ取りの中間くらいでやっていく。
迷っているという雰囲気を残したほうがいいかな?と思うところは「えーと」なども残しておく。
でもだいたいは、要らない言葉はそのときに削ってしまう。

いったん素起こしをして、それからケバ取り――なんて、面倒なことをやっている時間はいつもない。

整文はあまりしない。
座談会の雰囲気みたいなものが伝わるほうがいいかな、と勝手に思っているからだ。

Excel表にまとめるときはもちろん整文する。
だから、またもう一度一から入力しているようなもので、結構時間がかかる。

わたしがまとめたものを見たら、「何これ?」とプロの人は思うかもしれない。
だからわたしはテープ起こしを仕事としてやってみたいと思っても、応募できない。
――たまに、こういうの、やってみたいなぁ、と思うのだ。

でも、こんな自由なやり方では、「経験があります!」とはとても言えない・・・・・・
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いざ、テープ起こし

ひとつ座談会が終わると、テープ起こしが始まる。

わたしは座談会の報告書は遅くなりたくなかった。
なんとなく、「旬」というものがあるような気がしていたから。

座談会をするとなったら、出席する編集スタッフはそれなりに身構える。
メモを持参し、筆記用具を持参し、メモノートや資料に自分なりに何か書きつけている。

終わると出席スタッフの間で「今日は・・・・・・だったねぇ」「・・・・・・って意識が結構あるものなんだね」なんて話し合っている。
たぶん、編集部に帰ってもそういう話はするだろう。
二、三日は何かの折に「あのときああ言ってたよねー」なんて話が出るかもしれない。

一週間くらいは出席した人や、話を聞いた人の記憶も鮮明かもしれない。

でもだんだんと薄れていく。
すっかり忘れた頃になって、「はい、報告書です」と渡されても、チェックする気になるだろうか。
「いつか役に立つかもね」としまわれて終わりにならないだろうか?

だってその頃には、自分の中で情報は消化されてしまっていて、「今さら」という気にもなろうってものだ。
覚えておく必要のあることは適切な形で脳の引き出しにしまわれていて、今さら逐一知らなくてもいいというか。

テープを起こして報告書の体裁を整え、さらにExcel表にまでするような場合は、時間も手間もかかる。
それが見てももらえないなんて、悲しいことだ。

だから少しでも早くやろうと思う。

聞いてみたら「見ないなんてことは絶対ない」と言うかもしれないけど、そんなこと聞けないし。

テープ起こしを始めてみたら、わたしにとってはWord文書にしたことは正解だった。
枠の大きさとか、他の人の回答との量のバランスが不揃いだと整えにくいとか、そんなことは考えなくていい。
ただダラダラと、聞いたことをほぼそのまま打っていけばいい。

当日のうちにかなり入力しているので、もっと時間がかからないのでは、といつも思うが結構時間がかかる。
「あ、抜けてたな」という文章もある。
その場でも聞きとれていないと分かっていて、「・・・・・・」と自分の記号を入力している部分もある。
わたしの自分だけの方式では、「・・・・・・」が入っている部分は、ここで何か話していたけど聞き取れてないという意味だ。
「あ、これ間違ってたな」というのもある。ちょっとした聞き間違いとか。

聞きながら自分の入力したものを見て、「あ」と思うところがあったら一時停止。
入力。
また再生しながら自分の入力してものを見て、「あ」と思ったら一時停止。入力。

それだけなのに、2時間の座談会のテープを聞くのに6時間も7時間もかかるんだなぁ、これが・・・・・・

続続 ハッピーヘルシー編集部

ハッピーヘルシーは「読者の声を丹念に読む」ことで有名だ。
実に読み込む。

アンケート用紙は「ざっと回覧」どころじゃなくて、全員順番に回覧されて、じっくり読み込み、打ち合わせなどにも使われる。
アンケートを入力する立場からしてみると、厄介な話だ。

締切が来たからアンケート画面の公開を停止し、さていよいよ入力しようと思うが、編集部がまだ見たいからと渡してくれない。
これはハッピーヘルシーの報告書担当のアルバイトさんが交渉する。
編集部がなんといっても優先だから、文句は言えない。

でもこちらにも都合というものがある。
これ以上遅れると、他のアンケートの入力予定が入ってしまうから、重なって困難になる。
または、わたしは毎日来ているわけではないから、お休みに入ってしまう。

渡してもらった後も油断はできない。

「もう一度見せてください」なんて言われたりする。

えー、もう入力始めちゃったよー。
まだ最初の頃、墨田さんの時代に渡したら、わたしが綺麗に順番にしておいた用紙はバラバラになって戻ってきた。

そして、入力の続きをし始めてみると――
あれ?これ入力した気がする。このフリーアンサー部分に覚えあり!

入力済みも未入力も混ざってしまっていて、たぶん全部正確には仕分けられないままだった。

そんなにまで丹念に読んでいる編集部だから、アンケート用紙に書いてあったことが後から誌面に出てきたりする。
「痔について知りたい」「知りたいこと:痔」「その他:痔」
なんだか今回「痔」が気になる人が目立つなぁ。
――と思っていたら、2号くらい後に「ちょっと気になる不調の話 Vol.36 痔」なんてページがあったりする。

ずっと後になってから、「あれ? これってもしかして座談会で皆が気になるって言ってたよね?」という記事を発見することもある。
もう年単位で時が過ぎてから、「あれ? この企画って、もしかしてずーっと前の座談会で誰かが熱心に語ってた内容と似てない?」と思ったこともある。

現場で聞いているときも、テープを聞いているときも、Excel表にまとめているときも、自分にとっては特に大切とも思えなかった話が、活かされている。
――かもしれない。絶対あのときのあれとは言い切れないから「かもしれない」程度だけど。

自分が「そんなの、この人だけの個人的意見だよね」思ったことも、こうして記事や企画にまとめられてみると、なんだか一般的に合うものに見える。

うまいことやるもんだなぁ、と思ったりする・・・・・・

続 ハッピーヘルシー編集部

そりゃ、ハッピーヘルシーの座談会のほうが、わたしとしてはやりがいがあった。

どうも報告書なんていらなさそうなハッピーライフより、必要としてくれそうなハッピーヘルシーのほうがやりがいがある。
「ここに座って必死で入力してるけど、この作業に意味はあるのだろうか」なんて思うことはない。

座談会を運営する目黒さんや担当アルバイトさんはいいだろう。
ハッピーライフだって座談会自体に意義がないわけじゃないのだから。

でもハッピーライフは、もしかして報告書までいらないんじゃないのかなあ?
――そんな疑念がどうしてもぬぐえない。

でもまあ、そういうことがあるからハッピーライフはWord文書だけを渡すことにしたので、報告書にかかる時間もその分少ないのだが。

ハッピーヘルシーの人たちは、熱心に紙にメモをとったりしている。
質問も真剣な感じがより濃く、準備もよくしてきている。
終わった後は、編集スタッフ同士でああだこうだと話し合っている。

ハッピーライフだって話し合うけど、ちょっと違う感じ。

ハッピーライフのは「いや~、こうだったね~!」「こうだったよね~!」と女子高生が面白がっているような色がある――少しだけね。
ハッピーヘルシーはもっと具体的。
「ああいう人たちがハッピーヘルシーを買うかなぁ?」
「結局、買わない人は何を特集しても買わないのかもね?」
「でも歯のホワイトニングは全員興味持ってたよね」
「それなら買うって全員言ってたもんね」

この人たちなら報告書もよく読んでくれそうじゃない?

でも、必要とする人たちへの報告書は、その分手間はかかる。
渡された進行資料に沿った見出しをつけたりするし、必要なら形式を一部分変えてみやすくしたりもするし、工夫する。
そして最後はExcel表も作る。

手間はかかって、面倒ではあるんだよね・・・・・・

ハッピーヘルシー編集部

ハッピーヘルシーの座談会は、進行が細かく決まっていた。
もちろんハッピーライフも大まかに決めてくるけれど、もう少し大雑把で、そしてその場で変更あり。

ハッピーライフは、たとえば――
●挨拶、自己紹介
●ハッピーライフの印象
●料理について
●それ以外の家事について
●その他
●ハッピーライフへのご意見、ご要望など

ハッピーヘルシーだって、ざっくりはしてるんだけど――
●編集部挨拶
●参加者自己紹介(健康や美容で最近気になることを交えながら)
●ハッピーヘルシーの表紙の印象について
●他社の雑誌を見てもらい、話を聞く(表紙、内容、イメージなど)
●今、健康や美容で気になっていること(項目を列記した紙資料を渡して、それをもとに)
●付録について
●ハッピーヘルシーへのご意見、ご要望など

ハッピーライフの場合は、座談会の途中で編集長が突然、指名。
「何か質問ある?」と居並ぶ編集部員を眺めながら。
「××くん、どう? 料理について聞きたいんじゃない? 彼女は最近料理部門担当になったんですよ」
――前半は××くん、後半は参加者に言っている。
突然言われた××くんは、焦って考える。「えーと――好きな調味料ってありますか?」

ハッピーヘルシーの場合は、出席者はそれぞれ自分なりに聞きたいことをまとめている。
質問時間はとれないかもしれないが、自分の考えがまとまっているので、話の途中でも知りたいことがあれば割って入れる。
もちろん時間がとれたら質問する。(盛り上がり過ぎて、「あ、もう時間」というときは一人一人質問する時間はとれないかもしれないから。)

たとえばメイク担当の××さんは、どのくらいの価格帯の商品を紹介したらいいかつかみたいと考えている。
もし自分が質問できる時間があれば、「普段お使いの化粧品はいくらくらいですか?」と聞いてみたい。
「基礎化粧品とメイクアップ化粧品では価格帯に違いがあるか?」「具体的に化粧水は今いくらのものを使っているのか?」「美容クリームや保湿パックなどは使っているか?」なども聞いてみたい。

たまたま「最近気になっていること」で、誰かが「睡眠」と答える。
「睡眠をよく取らないといけないとTVで見たので、お風呂から出たらすぐ寝ます。
あ、寝る前に肌の手入れだけはしますけど。化粧水を使って」
するとすかさず××さんが口をはさむ。「化粧水以外にもなさいますか?」
もっと聞けそうだったら、話のついでに「いくらくらいの化粧水ですか?」と聞いてみる。

進行もほとんど予定に従っていて、非常にやりやすかった・・・・・・

ハッピーヘルシーの副編集長

ハッピーヘルシーは、女性向けの健康の雑誌なのに、副編集長は若そうな男性だった。

料理やそれ以外の家事を紹介するいわゆる「主婦向け」雑誌は、まだ分かる。
家事は男性だってする人も多いし、料理好きという男性も増えている。

でも女性向けの健康雑誌となると――
婦人科系の病気の話も出てくる。子宮筋腫とか、卵巣のう腫とか、乳がんとか。
生理の話も出てくる。生理痛とか、生理周期とか、生理の量や質とか、基礎体温とか。
その他にも女性向けのものが多い。骨盤を矯正してダイエットするとか、美肌対策とか。

これを男性が編集してるのか~。

そして座談会にも出ちゃうのか~。

ハッピーヘルシーの座談会は、常に編集長と副編集長が出席した。
副編集長の男性、国分寺さんは、若くて爽やか青年そうな人だった。
――若いというのは、わたしから見てということで、副編集長になっているくらいなのだから、22,3とは思えない。
普通の男性に見えた。普通の爽やか青年。

男性がいるということで、参加者の方は気にするかもしれない。
その点については、最初にフォローを入れましょう、と清瀬さんと目黒さんは始まる前に話していた。

「ハッピーヘルシー編集部、編集長の清瀬です。今日はよろしくお願いします」
「副編集長の国分寺です。僕は男性ですが、子供もいて、家ではかみさんと体調のことなんかも話しますし、慣れてます。男性だと思わずどんどん話してください」
「気にするなと言っても気になるかもしれませんが、国分寺は普段から記事の編集もしていますので、本当に気にせず何でもお話しください」

座談会に来る人たちは、話す気まんまんで来る。
わたしだって、そういうところに行くとなったらそうだろう。

だから始まってしまえば、参加者さんたちも全く気にせず話していた。
「私は生理が重いほうなので。生理痛もひどくて、なんとかしたいと思っていて――」
「私は冷え症なんです。だから毛糸のパンツを愛用してますし、冬なんかは二枚ばきで――」

まあ、知り合いの男性の前で話すわけじゃなし、気楽だしね・・・・・・

ハッピーヘルシーの編集長

ハッピーヘルシーの編集長、清瀬さんは女性で、落ち着いた感じの人だった。

声はアルトで落ち着いている。
でも小さい声というわけではなく、滑舌もいいし聞き取りやすい。
目黒さんの声は高く、響く声なので、テープに笑い声や感嘆詞が入っていると、耳に突き刺さる。
しかし清瀬さんの声はハッキリ聞こえながらも、耳に優しい。

顔立ちは整っているが、派手ではない。
華やかな顔をしているけど、よく見たら鼻筋は通っていない、というような人もいるけど、その反対。
上・中・下で言ったら上かな、並以上ではあるよな。と軽く思っていたけど、よく見たら綺麗だね~、この人の顔! と驚く。

きちんとメイクし、素敵な服を着ているけど、派手ではない。
個性的で目立つということもない。

態度も落ち着いていて、笑うにも相槌を打つにも感嘆するにも、激しくない。
日頃一緒にいるわけではないので知らないが、たぶん普段も感情の起伏が激しいほうではないと思う。
激しいかもしれないが、表には出ない。

あまり落ち着いた人に見えたので、わたしの中の印象は「大人」だった。
自分よりできた人、自分よりレベルが上の人。

でも年を聞いたらわたしより若かった。

驚いたけれど、よく考えれば当然だ。
肌だってわたしよりずっとハリがあるし、髪だってわたしよりずっとフサフサしている。

でもそんなふうに驚くくらい大人イメージだったのだ。
お子さんがいるというのに、所帯じみた感じはまったくなかったし。

わたしはこの人に少し憧れている・・・・・・

ハッピーライフの副編集長

もうこの頃には、かつて墨田さんが担当した座談会で見た副編集長は、いなくなっていた。
ハッピーライフの女性副編集長、昭島さん。

本誌編集部は若い人のもの。
年をとったら、だんだん別なところに移っていく仕組み。

でも男性は割とハッピーライフの上のほうに長くいるようだ。
女性の副編集長がいたこと自体が、異例のことだったのかもしれない。

主婦向けと世間一般からは思われている雑誌なのに、編集長は男性。
というか、だからこそ、男性なのかもしれない。
そのほうがうまくいくのだ、きっと。
男性料理研究家のほうが女性受けがいいように・・・・・・。

この年の座談会シリーズは、ハッピーライフはあまり副編集長は来ていなかった。

編集長は顔なので毎回出席していたけれど、副編集長は忙しければ来ない。
そしてしょっちゅう忙しいらしく、「出る」と言っていた回も直前に欠席ということが相次いだ。
副編集長は料理部門とそれ以外部門と2人いたけれど、どちらもそうだった。

若いスタッフたちはいろんな人が出席していろいろ質問していたけれど。

あの副編集長だった人はどうしているのかなぁ・・・・・・

入力方法、キュー

座談会時にわたしが自分の中で用いている方法は、キュー。
First In First Out方式だ。

耳から入ってきた情報は、脳にどんどん蓄積されていく。In
そして先に入ったものから、どんどん手に流れ、入力される。Out

筒状の短期的記憶領域に、上(耳)からどんどん入ってたまっていく。
ということは、先に耳に入ったものが下になり、後から入ったものは積み上がっていく。

そして筒状の短期的記憶領域の下(手)から、どんどん流れ出ていく。
ということは、先に入って下にあるものから順に出ていく。

こういうイメージで入力している。

-----------------------------------------------
川越から来ました、Aと申します。
私は主人と、小学生の息子と三人家族です。
まだ息子に手がかかるので、仕事はしていません。
主人は商社に勤務しております。
えー、・・・・・・趣味は、週一回のバドミントンと、最近始めたバイオリンです。
-----------------------------------------------

喋るスピードと全く同じ速さで入力できるわけはない。

わたしの脳には下からどんどん積み上がって、短期的記憶ができている。

たとえばこんな感じ。
-----------------------------------------------
3.まだ息子に手がかかるので、仕事はしていません。
2.私は主人と、小学生の息子と三人家族です。
1.川越から来ました、Aと申します。
-----------------------------------------------

でも、「3」が記憶に入る頃には「1」はもう手から出力されているので、こうなる。
-----------------------------------------------
3.まだ息子に手がかかるので、仕事はしていません。
2.私は主人と、小学生の息子と三人家族です。
-----------------------------------------------
「2」も本当は「息子と三人家族です。」くらいしか残っていない。

どんどん出て行くが、話すスピードにはかなわないので、だんだん遅れ始める。

しかし最後の「5」の「えー、・・・・・・」のところで話者は2,3秒考えて、ゆっくり話し出す。
ここで一気に追いついて、「6」からはまた耳から入ると同時に手から出る。

また遅れ始めるが、途中、「そうですね・・・・・・」なんていうところで追いつく。

これを繰り返している。

自分ではかなり聞き取っているつもりだが、短期的記憶に格納している間に自分の言葉に置き換えていることもある。
「趣味は、週一回のバドミントンと、最近始めたバイオリン」と入力していたが、テープを聞いてみると若干違っていたり。
「週一回のバドミントンと、バイオリンがはまっていることですかねぇ。バイオリンは最近始めたんですけど」

「はまっていること」を「趣味」と言ってしまっていいかは、わたしの立場では判断できない。
できる限り正確に残したほうが、編集にとってはいいのかも、と思う。

だからテープは必要だ。

ただ、この報告書をどのくらい見て役立ててくれているかは、疑問が残るところである・・・・・・

入力方法、報告書形式

第一期黄金時代の墨田さんが担当していた最初の座談会シリーズ、わたしはExcelに入力していた。
目黒さんに「どういうふうに筆記すればいいか」と聞いたら、Excelのフォーマットを作ってくれたからだ。

正確には、「これが前に使っていたフォーマットなの~」と探してくれて、でも「あら? どこ行っちゃったのかしら?」と結局見つからず、「確かこういうのだったのよ」と目黒さんがササッと作ってくれたのだ。

簡単な構成の表だった。
上に質問内容、左端の列に出席者名で、その質問に対して誰がどう答えたか書く、というもの。

しかしこれは、ちょっとやりにくかった。
特にハッピーライフの座談会のように、皆でわいわい話すのが理想というようなときは、なおさらだ。
途中で編集長が何か質問したのは、新しい質問として別な列に入力するのか? それともまだ続きなのか?
それに、今誰が喋っているのか、混乱しそうになるときがある。
もともと一覧の並びと席順が違うのに、さらに「次は逆回りで」なんて言うからだ。

わたしは「次に座談会があったら、Wordでベタ打ちみたいにしてみようかな」と思っていた。

荒川さんが、自分も筆記に入ることになったので、質問してきた。
「いつもどうやって記録とってるの? Excel?」

「Excelでやってたんだけど、どのセルに入れたらいいか迷うし、長い回答になると入りきらなくなっちゃう。
わたしは社員じゃないから、要約しちゃっていいものかどうか、どこを削って要約すればいいか分からないから、それも迷っちゃうんだよね。
だから今回はWordでダラダラ打っていって、必要なら後からExcel表にまとめようと思ってたの」

「そのほうがいいかもね」
――ということで、わたしも荒川さんも日野さんも、Wordでダラダラ打つことになった。

目黒さんにも言った。
「Wordでそのまま打っていったほうが早いし、やりやすいと思うので、Wordでやろうと思います」
目黒さんは「いいわよ。○○さんのやりやすい方法で」とあっさり承諾。
――ホントに放任主義というか、個性重視主義の上司なのである。

ハッピーライフは報告書はあまり重視していないらしい、ということで、ハッピーライフにはベタ打ちWord文書のみ。(一応体裁はきちんと整えるが。)
ハッピーヘルシーは初めてだし、結果を重視するということで、WordとExcelふたつの報告書を作成することになった。
Wordでは省略のないものを記録として渡す。
そして要約したものを、以前と同じようなExcel表にして、これも渡すことになった。

ハッピーヘルシーのほうが、報告書に時間がかかるのである・・・・・・

シフト

わたしはダブルワークをしていた。
第一の職場はOAインストラクターとして勤務していて、コースがあるときだけの勤務。
断続的な仕事なので、穴埋めのために第二の職場としてハッピーで働いている。
さらに第一の職場では「午前だけ」という変則的勤務もある。
そしてハッピーの上司目黒さんは「午後からだけでもいい」と言ってくれた。

普段はアンケートの入力をしているので、午後からだろうが朝からだろうが、どうでもいい。
あまり遅くならない時期にアンケート入力が終われば、それでいい。

でも座談会となると、そういうわけにもいかない。
午後からと言っても「14時から」という勤務で、13:00~15:00という座談会には、対応できない。
当然、もし午後からの日に午前の座談会があれば、それにも対応できない。
全く休みの日だったら、朝だろうが午後だろうが、対応できない。

わたしが対応できないところは、日野さんや荒川さんが筆記に入ることになった。

どこも、あまり夜の座談会などしたくないが、ハッピーライフはまだ対応可能だ。
若い編集部員が多くて、もともと朝遅くて夜遅い出勤体制。
かなり遅くまで残業している様子。

しかしハッピーヘルシーは、編集長からしてママ。(とてもそうは見えない颯爽とした感じだが。)
夜の座談会はあまり歓迎できない。
――どうしても夜でなければ聞けないフルタイム勤務の人の回以外は、昼間行われた。

まずわたしが、入れる回を全部埋める。
それから荒川さんと日野さんで、分担していた。

杉並さんは、主たる業務が読者ホットラインの電話受けだったため、筆記からははずれていた。
常に席にいて欲しい人だからだ。

半分以上は埋めたけれど、たぶん荒川さん分が2回くらい、日野さん分が1回か2回あったと思う。

このときのシリーズは回数が多くて大変だった・・・・・・

言いにくいこと

前の記事で書いた「カラダ」が「体」になっていた事件。

ずーっとずーっと時が経って、日野さんも辞めて一年以上経ってから、目黒さんに話した。
「そんなときは言ってよ~」と冗談半分、本気半分で言う目黒さん。
「わたしも今なら分かるのですが、日野さんもわたしも遠慮するタイプだったので」

ちょうどそれから数日後、その年、初の座談会があった。

今回はグループ分けがいつもと違う。
「進歩的グループ」 何でも新しいものと聞くと使ってみたくなる、新情報に敏感な人たち。
「保守的グループ」 私はこれという定番があり、自分のスタイルをあまり変えない人たち。
このようなこれまでとはちょっと違うグループ分けで行われていた。

何回かあったけど、ある日の「午前:進歩的、午後:保守的」の二連続座談会。
午後の会が始まる前に、ふと気づいてしまったわたし。

「目黒さん、午前・進歩的グループの資料の進行表、保守的グループのになってます」
そして午後・保守的グループの資料には、進歩的グループの進行表がくっついていた。

別に非難したわけではなくて、それで困ったことがあるといけないから、報告したというつもり。
これは目黒さんのミスというより当時第三期のアルバイト板橋さんのミスだ。

でも板橋さんは目黒さんのお気に入りである。
それに準備は目黒さんと板橋さんでやっている。

「え? 違ってる? 違ってるってどういうこと?」
目黒さんに言われて、わたしはもう一回説明する。

「でも、どうせ誰も見てないわよ」――はあ。

「見るのは××さんくらいだけど、あの人は自分で進行表を作ったんだから、分かってるから大丈夫よ」――はあ。

いえ、別に大丈夫ならそれでいいんですよ。
わたしは非難しようと思って言ったわけじゃありません。

文字で書くとニュアンスが伝わらないが、目黒さんはまるでわたしに責められたかのように反応していて、下っ端としては居心地が悪かった。
そういう気持ちだったわけではないのかもしれないけど、そう見える様子だったのだ。

そしてもうひとつ。

目黒さんと板橋さんがいないときに、わたしは出席していた社員さんから指摘された。
「午前の部のAさん、資料には未婚てなってるけど、既婚だと思うのよ。ご主人の話とかしてたし」
――そうですね。それは間違いですね。
でもわたしにはどうにもできなかったので、「伝えておきます」と言っておいた。

翌日、目黒さんにそのことを言った。
「昨日、**さんが、午前の部のAさんは資料では未婚てなってるけど、既婚じゃないかと指摘なさってました。
もう終わってしまったことですけど、一応**さんがそうおっしゃっていたことをお知らせしておきますね」

「どこ? 未婚になってた?」
「Aさんです。お話の中でご主人やお子さんのことを話していたから既婚じゃないかって」
「きっと、これは本人がそう登録してるのよ。だからこうなっちゃってるのよ。うちは何もしてないから~」

いや、わたしはどっちでもいいんですって。
**さんにそう言われたよ、ってことを伝えてるだけだから。

わたしに言い訳しなくてもいいんですよ、と言いたくなるような口ぶりに聞こえて、居心地が悪かった。

板橋さんも言う。
「これは、もともとの登録がそうなってるんです。私は何も変更してないから。
でももしかしたら触れちゃいけないことなのかなと思って、登録のままにしてあるんです」

――どう見ても触れちゃいけないって感じじゃなかったけど。
でも、まあ、そんなことはどうでもいいんです。
ホント、未婚でも既婚でも、どうでもいいんですって。わたしは。

文字にするとニュアンスが伝わらないけれど、こちらが非難したかのようで、大変居心地が悪い。

日野さんが「目黒さんが作った資料だから私は指摘できない」と言ったのもうなずけるな、とこのとき思ったものである。
今後はわたしも口をつぐんでおくことを覚えよう・・・・・・

校正すべき――だけど。

「ハッピーヘルシー」には、小さくサブタイトルのようなものがついている。
「健康なカラダ、美しいカラダがハッピーを呼ぶ ハッピーヘルシー」

さて、座談会の参加者も決まり、会場の手配も済み、参加者には連絡事項を発送済み。
日野さんは資料作りを進めている。

そしてできあがったものは、当日わたしにも渡してくれる。
入力するとき参考に見たりするので、筆記役も資料があったほうがいいのだ。

すると、「健康な体、美しい体がハッピーを呼ぶ ハッピーヘルシー座談会」と書いてあった。

これ、雑誌の名前にも関わることだし、まずいのじゃ・・・・・・?

「体が漢字になってますね。ハッピーヘルシーはカタカナのカラダですよね」
と日野さんに言ってみた。

「分かってるんですけど――それ、目黒さんが作ったフォーマットなので、直せないんです」

そうなんだ~!!

目黒さん、報告書などの校正をするときはすごーく細かいのに、どうしてここ、抜けちゃったんだろう?
ハッピーヘルシー編集部の人に失礼じゃないのかな? 大丈夫かな?

日野さんもわたしも人一倍気を遣うタイプだから言わなかったけど、今から思うと言ってもよかったかも。
荒川さんだったら、言っていたかもしれない。

また目黒さんも、非難するような言い方でなく、「目黒さん、ここ違いますよ、も~」と愛を込めて言えば気にしなかったかもしれない。
墨田さんだったらそうしたと思う。

でも気づいた人間が二人とも、愛を込めようが込めなかろうが、言うタイプではなかった。

だからそのままになってしまった・・・・・・

選抜

やはり参加者の選抜をするのが大変だ。

「この回はハッピーライフを買ったことがある人で、若い人20~30代。主婦」
「この回はハッピーライフをたまにしか買わない人で、若い人20~30代。主婦」
「この回はハッピーライフを買う人で、だけど年齢層は40代。主婦」
「この回はハッピーライフを買う人で、年代は25~45くらいまで広くていいけど、フルタイム勤務」

など、回によって適する人を集めなければならない。

今回はその作業が2つ分ある。

ハッピーライフはハッピーライフで、何回分かの参加者を選抜して、席を埋めていかなければならない。
そしてハッピーヘルシーもハッピーヘルシーで、同じ手順を一からしなければならない。

また、ちょっと厄介なのは、今回のハッピーライフ座談会の中の2回ほどは「ハッピーライフ&ハッピーキッチン座談会」なのだ。
ハッピーキッチンを買っているかどうかも、選抜条件となる。

ハッピーヘルシーの人たちは選抜も丹念で、日野さんがだいたい選抜したが、連絡の前に編集長にも確認をしていた。

部屋の確保もなかなか大変で、なぜか会議が多くて予約できないこともあった。
「ちょっと小さいけど、中会議室Aでやりましょうか」
「そうねぇ。仕方ないわよね」
「その前の時間帯、中会議室Aに会議予定が入ってますから、準備はその後になりますよね」
「急いでやらないといけないわね」

資料もハッピーライフ分とハッピーヘルシー分と、2パターン用意。

この時期の日野さんは大変そうだった・・・・・・

ハッピーヘルシー座談会

今回は、健康雑誌ハッピーヘルシーも座談会をする。

「うちも座談会をしたいのだけど」と言ってきて、目黒さんははりきっていた。
なぜはりきっていたかというと、目黒さんがあれこれ教授していたからだ。

ハッピーヘルシーは初めての座談会。
わたしが知らないだけで、もしかしたら過去にやったことがあるのかもしれないけど、今の編集長や編集部員は初めて。
だから「右も左も分からないので、教えてくださいね」という殊勝な様子。

何事も江戸川さんに気を遣いながらのハッピーライフ座談会より、目黒さんはのびのびしていた。
「こうしたらいいと思うの」「これでいいと思うわ」

ハッピーヘルシー側は「これこれこうしたい」という要望ははっきり伝えてきた。

ハッピーヘルシーにはしっかりした目的があった。
「こういう人たちに、こういうことを聞いてみたい」という希望もあった。

ハッピーライフが「読者とのふれあい」「編集部員ができるだけ触れ合えるように」と言うのとは違う。
もっと具体的に「あれを聞きたい」「これを聞きたい」と言っていた。
ということは、漠然とした結果ではなく、吸収しようという意気込みも強いのだろうと思った。

今回はハッピーライフ数回、ハッピーヘルシー数回と座談会をすることになったが、両者はずいぶん違った。

進め方も違う。
ハッピーライフは話がどんどん広がってもよくて、ぺちゃくちゃお喋りをしているような会を目指す。
ハッピーヘルシーはひとつの質問をとことん掘り下げる。疑問点はとことん突っ込む。

進行表も違う。
ハッピーライフはざっくりした流れだけの進行表で、それさえ守られない。
ハッピーヘルシーは細かく進行を決めていて、「途中でこの資料を配布する」というのさえあって、そして表通りに進めていく。

結果の求め方も違う。
ハッピーライフは、はっきりいって報告書が必要かどうかも分からない。
一応、ベタ打ちしたWord文書を校正して提出したが、それだけで文句もなかったし、役立ったかどうか疑問だ。
ハッピーヘルシーは、ベタ打ちWord文書も提出したが、内容をExcel表にまとめたものも提出した。
後から活用されていたかどうか、実際のところは見ていないけれど、いつものハッピーヘルシーから考えて、何かの形で使われたかもと期待が持てる。

見ているとハッピーライフは、やっぱりハッピーライフっぽい。
いろんな情報があって、楽しく明るく賑やかで――という雑誌ができるのが分かる気がする。

ハッピーヘルシーもやっぱりハッピーヘルシーっぽい。
雑誌だから専門書と比べれば広く浅いけど、まじめにひとつのテーマを調べて記事にして、読むほうもまじめに読む。
明るく楽しく賑やかに子宮筋腫やパニック障害について読みたいわ、という人はあまりいないもの。
いろいろな情報はあるけれど、ハッピーライフほど「あれもこれもいーっぱい!」というふうにすると散漫だ。ハッピーヘルシーはもう少し絞られていた。

編集部もそうなら、集まってくる人たちもそうだ。
ハッピーライフっぽい人たちと、ハッピーヘルシーっぽい人たち。
絶対「ぽい」人しか来ないということではないけれど、なんとなく。

雑誌によって座談会の雰囲気も違うものだねぇ・・・・・・

座談会 二、三年目

わたしが一番最初に筆記をした座談会は、第一期黄金時代の墨田さんのときだった。
このときのお料理教室イベントは足立さんが担当。
二人で均等に仕事を分け合うためか、座談会は墨田さんが担当だった。

次のときは時代が移っていて、第二期黄金時代の日野さんが担当した。
この時代、お料理教室イベントは荒川さんの担当だった。

日野さんは知らないことだらけで迷いながらも、丁寧にこなした。
このときは何回も座談会をしたので、すぐ慣れて、効率よく準備をした。

その後、第三期に入ると板橋さんという人が担当したが、一番丁寧な仕事をしたのは日野さんだと思う。
――これは、勝手なわたしの意見であり、上司である目黒さんはどう評価しているか知らないけど。

日野さんの最初の年、わたしはもう座談会は二シリーズ目で、筆記に関しては慣れていた。
前回やりにくかったところを自分なりに変更するつもりだった。
具体的に言うと、目黒さんから渡されたフォーマットはExcel方式だったが、今度はWordでやってみようと考えていたのだ。
――これについては、また後ほど詳しく語ると思うので、今はやめておく。

右往左往した初回と違い、今度はわたしも少しは勝手が分かっている。
淡々と仕事をこなすことができたと思う。

二回目のシリーズのときの特徴は、ハッピーヘルシー座談会が入ったことだ。
初回シリーズのときはハッピーライフの座談会しかなかった。

そしてその次の年になると、定期刊行ではないムック本の座談会もあった。
このときは逆に、ハッピーライフの座談会がなかった。
この年は第三期の板橋さんの担当だった。

自分としては、変更したWord方式がうまくいって、とても満足だった・・・・・・

Vol.11

座談会 2,3年目

※この章には、参加者の発言が引用されていますが、
実際の発言ではなく、フィクションです。
しかし要点は伝わるフィクションにするよう心がけました。

その後の読者プレゼント

日野さんとは仲良くしてもらった。

同じ時代をアルバイト同士として過ごした荒川さんと日野さんは、とても仲が良かった。
最初の時代の墨田さんと足立さんも仲が良かったが、次の時代のこの二人も息が合っていた。

わたしはいつも、二人の黄金ペアにぶらさがるような形で、仲良くしてもらった。
わたしは心の中で「下っ端仲間」と呼んでいたが、中心はその時代の黄金ペアだった。

でも、わたしのことも仲間に入れてくれて、わたしはぶらさがる形で満足だった。

このふたつの時代は、ランチも一緒に行っていたので、そのときにいろいろな話を聞いた。
仕事のことや、趣味や恋や家庭のこと。その他の話。
でもやっぱり仕事の話が一番多かった。

やがて第二の時代も終わり、第三期黄金時代がやってきたとき、少し形が変わった。

この時代はペアがいなかった。
しいていうなら、アルバイトの板橋さんと、長期派遣の渋谷さんがペアだった。
それは、「二人が仲良し同士」というこれまでの形とは違い、「二人とも目黒さんと合う」という意味でペアだった。
平たく言えば、この二人は目黒さんへの愚痴がもっとも少ない人たちだった。
特に渋谷さんは、一切なかった――少なくとも見えなかったし、聞かなかった。

何度も言っているけれど、上司に対して全く愚痴がないなんて、めったにない。
だから黄金時代ではあった。

そしてもう一人のアルバイト、葛飾さんはできる限り人と関わりたがらないタイプだった。
目黒さんにさえ関わらないし、目黒さんも関わらないことを黙認していた。

お昼は全員バラバラ、別々。
仕事の話を聞くこともなくなった。

日野さんの読者プレゼントの仕事を引き継いだのは、葛飾さんだった。

お昼は別だから、仕事の話は聞かない。
葛飾さんは目黒さんとさえ極力やりとりしない方向性だったから、横耳でも聞こえない。

そういうわけで、日野さんの後の時代の読者プレゼントについては、あまりよく知らない。
どういう物だったかさえ、覚えていないのだ・・・・・・

「一番最初に到着した人を」

日野さんにだったか、杉並さんにだったか――
また、雑誌も、確か家計簿だったと思うのだが――

そういうさだかでない話なのだが、まあ、家計簿としておこう。

あるとき家計簿編集部の人が来て、担当者に言った。
「アンケートの戻りはどうですか?」
「今、倉庫にダンボールを作って、そこに入れてます。半分くらいってとこです」
「お願いしていた一番最初の人は?」
「あ、よけてありますよ。この方です」

一番にアンケート届いたアンケートを別にしておいてくれ、と頼まれていたらしい。

「一番最初に送ってくれた人には当ててあげたいと思って」

暖かい気持ちで言う編集の人。
「そうですよね」と暖かい気持ちで答える担当者。

「なるほどね」と暖かい気持ちで聞くわたし。

そのエピソードを聞かせたら、知人が言った。
「東京の人じゃないと当選しないってこと?」

え?

「だって、そうでしょ。
同じように発売日に真っ先に買って、すぐアンケートを出しても、東京の人のほうが早く着くじゃん。
離島の人だったら何日かかかるだろうし。東京でも都下だったらそのほうが遅いよね」

なるほど、そうか。
思いつかなかったわ。

まあ、悪気でやってるんじゃないし、当選者は一人ってわけじゃないから、他の人は当たらないってわけじゃないよ。

許してやってよ・・・・・・

可愛い巾着袋

小さいものなのである。
それほど高いものでもなく。

家計簿はどれもあまり高い値段ではなかったので、高いプレゼントは用意できない。
だって、高いほうの家計簿と同じくらいの値段のハッピーヘルシーでも、プレゼントは企業の提供品なのだ。

予算が限られた中で、日野さんは可愛らしい巾着を作ることに尽力していた。
どの布がいい、どの柄がいい、どういう絞り紐がいい――

日野さんもアパレルにいたくらいだから、オシャレな人だった。
自分なりのスタイルがあって、それに合った服、アクセサリー、ネイル、バッグがある。

バッグなんて、しょっちゅう違うものを持ち歩いていて、とても感心したものだ。
わたしなんて、入れ替えると忘れ物があるから、と、ダメになるまでひとつのバッグで通すのに。
それにバッグはとても小さかったりするのだ。オシャレだ。
わたしなんて、あれもこれもと詰め込んで、ばかみたいに大きな荷物を持ち歩くのに。

だから「どうしようか」と目黒さんに相談されれば、いろいろ考えて自分の意見を言う。

日野さんに目黒さんへの不満が全くなかったわけではなく、よく愚痴も聞いた。
上司に不満がないことなんて、ほとんどない。
まして、わたしと違って、密に仕事をしている人たちだ。
仕事をすれば、相手に100%いい感情だけを抱くなんて、めったにない。

でも日野さんはそれはそれとして、仕事は真剣に取り組んでいて、どういう物にするかという企画段階を目黒さんと二人三脚で進んでいった。

日野さんにはこういう「ちょっとしたプレゼント」系の物の開発が、合っていたのだと思う。
そして荒川さんにはイベントの仕事が合っていた。

目黒さんのこの適材適所な人材配置は、「なかなかやるな」と認めるべきだ・・・・・・

別の読者プレゼント

毎年のことだったのか、たまたま日野さんの年だけやっていたのか知らないが、別の読者プレゼントもあった。
家計簿用のプレゼントだ。

家計簿は2~3種類発行していて、それぞれにタイプが違った。
たとえば、値段は高いけど、季節の情報や季節のお料理や掃除のことなどが載っている。
そして表紙も写真が綺麗で、紙もカバーも少々豪華。
もう一冊は、値段はとても安いけど、余分な情報ページや表紙写真などはなく、コスト削減。
紙もカバーも少々安そうに見える。
また別な一冊は、たとえば子供がいる家庭用に項目やエッセイを作っていたり、高齢世代用に年金表を入れていたりする。

この家計簿も読者アンケートがついている。
家計簿は人気で、アンケートの戻りはダンボールの数で数えるほど。
入力はそのうちの500枚ずつだが、2冊なら1000枚、3冊なら1500枚。結構大仕事だった。

そんなに戻りがあるから、家計簿アンケートの「抽選で何名様にプレゼント」の数は多い。
ハッピーキッチン、ハッピーインテリア、ハッピーヘルシーのアンケートプレゼントは、Aは8名、Bは5名・・・・・・と、全員合わせても50人に満たない。
なのに家計簿アンケートは、A賞50名、B賞C賞各100名。250人だ。

それに家計簿には広告ページがほとんどない。
ハッピーキッチン、ハッピーインテリア、ハッピーヘルシーのプレゼントは、たぶん広告企業などからの提供品。
家計簿の場合は広告ページがないから、提供もされず、ハッピーが自前で用意しなければならなかった。

A賞は、ハッピーライフで読者プレゼントに出すもの。
スケジュール手帳とかカレンダーとか、家計簿らしい来年に使えるものが多かった。
ハッピーライフが例年の読者プレゼントを作るとき、家計簿分も作るのだと思う。
これは数が少なめ。

B賞C賞は小物だった。
わたしが見た日野さんの最初の年は、巾着袋だった。
だいたいそういう小物で、これは当選者数が多い。
そして、BとCは同じものの色違いだった。
B賞が「巾着袋:赤」なら、C賞は「巾着袋:青」。

これもまた、企画して、見本を作成してもらい、修正。
注文して、抽選が終わったら当選者をとりまとめ、配送業者とやりとりする。

その作業も日野さんがやっていた・・・・・・

次のプレゼントは?

翌年は、ショールを作っていた。
これもまだ日野さんの時代だった。

わたしは入社してから見た3回がバッグだったので、ショールは新鮮だった。
――そういうものも作るのか。

ショールなんて、たいして研究するところはなさそうだけど、とオシャレと縁のないわたしは思う。

でも見ていると、これが結構いろいろなところを考えるものだと感心した。
・素材(もこもこしたものにするか、もっとなめらかな手触りのものにするか)
・色柄(素材によって違っていた。もこもこしたグレーはいいけど、なめらかなグレーな地味、とか)
・飾り(房をつけるとか、ステッチをつけるとか、いろいろと選択肢はあるものだ)
・飾りの色(グレーの生地にはピンクの飾りがいいか、青の飾りがいいか、ということを決める)
・工夫(たたんだとき入れられる袋をつけようとか、いやそれよりまるめて結ぶヒモをつけようとか)

そしてこれもできあがり、募集記事が載り、抽選され、発送された。

評判のほどはまたしても分からない。
わたしは本当に「チラ見」しかしていないのだと、つくづく思う。

目黒さんは冷え症で寒がりだったので、ひとつ自分用にして愛用していた。
「これ、すごくすぐれものなのよ。
ショールだけど、ひざにかけてもいいし、腰に巻きつけてもいいようにできてるの。
あったかいしね~。あたしはすごい冷え症だけど、これはかなりあったかいわよ」

やがて日野さんが退社し、さらに一年が経った。
そのときも目黒さんは、このショールを愛用し続けていた。

その年の冬は寒く、目黒さんは厚着。
そこにショールひざかけを腰に巻きつけたまま、隣の部署の偉い人席にいる千代田さんによく相談に行っていた。
ちょうどその頃、何かの仕事で、千代田さんに話すことが多かったのだ。

目黒さんに批判的な人たちは、「あの格好、なんなの? うちにいるんじゃないんだから」とこっそり陰口。
目黒さんのほうは人目を気にせず、第三期黄金時代のアルバイトさんや派遣に得意げに言う。
「これ、2年前の読者プレゼント。あたしが作ったの」

すごーくお気に入りなんですね・・・・・・

私、当たってます?

賞品開発から始まって、抽選、発送まですべて終わった。
もう読者プレゼントの仕事は終わりである!!

でもまだちらほら、残り火のような問い合わせがある。

読者ホットラインには読者の方からの電話がかかってくる。
そこに毎年必ず一人二人――または三人四人いるものなのだ。

「×月前半号で読者プレゼントのバッグに応募したんですけど、まだ商品が届かないんですが」

――全員プレゼントじゃないのでねー。応募したら必ず届くわけじゃないんですよー。
当選の発表は、商品の発送をもってかえさせていただいてるんですよー。

答えにくいことなので、実際はもっと丁寧に回答している。
そして丁寧にそうっと希望を打ち砕く。
「今の時期でまだ届いていないということですと、もしかすると選にもれてしまった可能性が――」

そこまで大胆でない人もいる。
「私、当たってますか?」
「いつ頃までに届かなかったら、当たらなかったってことですか?」

これはバッグなどの読者プレゼントより、もっと実用的なもののときによくかかってくる。
たとえば、来年のカレンダーだとか、来年の手帳、来年の家計簿、春からのお弁当箱。
もし当たっていないのなら、何か別のものを買わなくてはならないから、という理由だ。

こういうお問い合わせも来なくなると、ついに読者プレゼントの仕事は終わりである・・・・・・

発送業務

配送業者さんは最初から日野さん宛てに電話をしてくる。
先方には担当者がいて、いつもその人とやりとりをしていた。

目黒さんが電話を取ったときも、「日野さんはいらっしゃいますか」と言われる。
目黒さんも平然と「今、席をはずしているみたいなので」などと答える。
相手が急いでいて、その日は日野さんがお休みだったりすると、「私も担当をしているので」と言って話を聞いていた。

氏名や住所など、送り先のデータはDVDかCDに焼いて、渡していたのだと思う。
そういう話をしているのも聞いた。

昨日の記事では、「ちょっと覚えていない」というようなことを書いたけれど、やっぱり個人情報はハッピーで入力していたのかも。

プレゼントを作った業者の納品、配送業者との調整。
そこのところはどうしていたのか分からない。

読者ホットラインの倉庫に納品されたわけではなかった――ような気がする。

直接配送業者のほうにプレゼントは納品されるのか。
それとも、ハッピーが外部に持っている倉庫に納品され、それを配送業者が引き取るのか。
または、まったく違う方法なのか。

いずれにせよ、発送が済むまでは、日野さんは一段落しないのだ。

データは先方で処理すると言ってくれたのに、話が合わなくなったり、それを調整したり。
プレゼントを作ってくれたメーカーとの最終的なやりとりをしたり。

日野さんは丁寧に仕事をする人だったし、人当たりがいいのできつい言い方をしない。
着実で雑なところのない仕事ぶりで、人にも気を使うので、その分大変そうだった。

日野さんの後の、第三期黄金時代 葛飾さんなんて、もっとラフだったものね。
「あー、そうなんですか。それ、×日までになんとかなりませんかね?」
なりませんよ~と言いたいだろうけど、なぜか葛飾さんと話していると押し切られてしまう。
葛飾さんは何も強引なことは言っていないのに。

目黒さんにも同じ。
「目黒さん、これこれこうなってるんで、先方に電話してください」
「あたしがするの? 葛飾さんがしてよ」
「いや、これは、目黒さんからしてください。そのほうがいいと思うんで」

日野さんだったら「え~、そんなことないわよ、日野さんでも大丈夫よ」と言われてしまうところだけど、葛飾さんにはなぜか言えないところがある。

でもそれもこれも、日野さんが自分のときにちゃんと道筋を作っておいたからなのよね・・・・・・

当選者のとりまとめ

編集部が選ぶときには、ハガキはすべて有効なもの。

応募券、よし!
氏名、郵便番号、住所、よし!
電話番号、よし!

不備があるものは除かれている。

だから、選ばれた当選者の住所を一覧表にしようとしたら、「あれ、住所の記載がない」なんてことはない。

選ばれたハガキは日野さんによって取りまとめられる。

当選ハガキ、落選ハガキなどの管理も日野さんが一手に取り仕切っていた。
――たぶん。

最初のうちは細々と教えたり監督したりしていた目黒さんも、すっかり放置。
必要があれば日野さんから目黒さんに聞く。
――良かれ悪しかれ、この放任主義で、目黒さんはこれまで何人ものアルバイトを育ててきたのである。

配送業者さんには宛先を一覧にして渡すのだと思う、たぶん。
でももしかしたら違うかもしれない。

一度「宛先の入力はそちらでやってくださるというお話でしたが――」というやりとりをしているのを聞いたことがある。

でもその「宛先」というのは、一覧にしたデータを封筒に書くことかもしれない。
ハガキごと社外に出すのは問題ありそうだし。

まあ、よく分からない。

当選した人については、何か統計用にデータを入力していたかもしれない。
または、わたしが入力したりした1000人分は、この当選者だったかもしれない。

こうして自分の記憶を整理してみると、やっぱり知っているようで知らないものだなぁ・・・・・・

抽選――後年の様子

読者プレゼントの抽選会は、かなり大々的な行事だった。

編集部はただ来て好きなものを選ぶだけ。
皆さんが選びやすいようにお膳立てする仕事は読者ホットラインで、日野さんは調整からテーブルセッティングまで、大変そうだった。

でも、そういう大抽選会みたいなものは、第三期黄金時代になると見なかった気がする。

この頃、わたしのダブルワークのもう一方が増大し、ハッピーに行く日が少なくなって見なかっただけかもしれない。
だから「なくなっていた」とは言い切れないのだが――。

恣意的に選ぶことをやめたのかもしれない。
何か法律上の問題などで。それとも他の理由で。

または違う方法で選抜していたのかもしれない。

それとも編集部が「なるべく30代で、主婦の人多めで」とか条件を言ってきて、それに合わせてアルバイトさんが抽出していたのかも。

時期すらはっきりしない。

見ないようになったのは、日野さんの二度目の読者プレゼントのときだろうか?
それとも第三期黄金時代になってからだろうか?

直接関わりのないわたしは気楽で、あの大抽選会の前後の喧騒が懐かしいような気もする・・・・・・

抽選

ハガキも集まった。
誌面に書かれていた締切の日付が来て、消印有効のものも終息する。

すると次は抽選をしなくてはならない。

まず、なんといっても押さえなくてはならないのが、編集部の都合だ。

当然、編集長の江戸川さんは参加する。
それから副編集長と、今回はデスクも参加する。
青梅さん、その他の編集部員さんたち。

いつだったらいいか、編集部の予定を決めてもらわなくてはならない。

それが決まったら、次は大会議室の予約をする。
これはちょっと綱渡りになってしまうので、うまくやらなくてはならない。

大会議室を予約しようと思ったら、その日はもう埋まっていた、なんてことになっては困る。
ハガキは多いので、小さい会場では抽選はできない。
もう一度、編集部の予定からやり直しになってしまう。
「ごめんなさい、この日、大会議室埋まってたので――」なんて。

だから「この日かこの日」となったらどちらも予約してしまうとか、そういう手を使う。
後から予約しようと思った誰かが聞きに来ることもある。「この予約って動かないですよね」
そうしたら、編集部に「どうですか?」って確認すればいい。

会場のセッティングはすべて日野さんがした。

わたしは会場を見たことがないので、実際は知らない。
勝手な想像では、会議室のテーブルに、何かのルールに従ってハガキが並べられている。
土地ごととか、年代ごととか、そんな基準で。
その中から編集者が選ぶ。
一人何枚と決まっていて、自分の割り当て分の当選者を選ぶ。

日野さんは知っている。

編集者も人間だから、天使や聖人のような選び方はできない。
やっぱり、余白に読みやすい可愛らしい字で、「ハッピーライフをいつも楽しく読んでいます。私の大切な生活の友です」みたいなことが書いてあるものに惹かれる。
または、イラストが描いてあって、可愛らしくデコレートされたハガキなどにも惹かれる。

年賀ハガキで送ってきているのは、若干熱意に欠けるように思えたりする。
必要事項だけを淡々と書いてあるのは、すごく欲しいと思っていないように見えたりする。

「あたし、年賀ハガキで送っちゃいますよ、フツーに」日野さんは言っていた。

わたしだったら絶対あげたいな、と思ったのは、この年ではなくてその前のいつか。
おばあちゃんと言っていい年代の人が送ってきたハガキ。
「年のせいで物忘れがひどくなって、財布でもバッグでもお店などに忘れてきてしまいます。
主人が忘れないように肩から斜めにかけるようなカバンにしろ、と言いますので、応募しました」
と書いてあった。
そのときのプレゼントは、肩から斜めがけするタイプの布製バッグだった。

あの人は当たったのかな・・・・・・

応募数は?

応募数は大変気になるところだ。

毎年、「今どのくらい?」と大田さんから質問が出る。
やはり前年を大きく下回るようなことは、避けたい。
どうしてなのか、鋭く突っ込まれてしまうだろうからだ。

どのくらいの数が応募してきたかというのは、社長をはじめ偉い方々にも報告される。
――なにしろ、とにかく、社長に報告される。
社長はなかなか畏れられている人だった。

目黒さんとしても気になるところだ。

特にこの日野さんとの初めての年は気にしていた。

今回、目黒さんは新しい業者に切り替えた。
また新しい企画も通した。
これまでとは趣向の違うレザーバッグに着手したのだ。

それで応募数がもし去年までよりだいぶ少ないなんてことになったら――
目黒さんとしても大変困った立場になってしまう。

途中、伸び悩んだときは、「でもこれからかもしれないわよね」と言っていた。
下回るかな?と思えたときは「休みが入ったから、休み明けかしらね」などと言っていた。

はっきり覚えていないけれど、言おうと思えばいろんな理由をつけられる。
このときの特集がね。プレゼントのことが、表紙に目立つように書いてなかったからね。
ちょうどそのとき他の雑誌が特別付録をつけてたから、とられちゃったのかもね。

結果としてどうだったか、お伝えできないのが辛いところだ。

わたしは末端なので、いわゆる「数字」については全く情報が来ない。
売上も、販売部数も、いつもどのくらいなのかなぁ?と思うが、分からない。

ときどき品川さんあたりに、言ってみることはある。
「秋号のハッピーキッチンは、アンケートの戻りがすごく少なかったんですけど、売れることは売れてたんでしょうか?」
皆さんが書いてこなかっただけで、売れてはいたのかもしれないし、アンケートが多いからといって売れたとも限らない。

品川さんはとても気さくな人で、会社の話も人の話も面白いことをよく聞かせてくれる。
でも「数字」になると、上手にお茶を濁す。
「ん~、そうねぇ~、そんなすごく多いとか少ないとかは――ねぇ。戻り、少ないんだ。何枚?」

というわけで、目黒さんの冒険は、無事報われたのかどうか分からない。
様子を見ていた感じでは、どーんと飛躍的に伸びたということはなさそうだった。

伸びていたらきっと、「すごく伸びた」っていう話をどこからか聞くと思うから・・・・・・

応募ハガキ回収

応募ハガキについては、入力のことを書いたときも触れた気がする。

今回、形はすべて同じ、色は3色用意されていた。
応募してくる人は、ハガキの一番上に「ピンク」とか「グリーン」「ブルー」と書いてくる。

「ブルーが結構多いのねぇ」
「ピンクは少ないですね。グリーンが思ったより多いんですよ」

日野さんは色ごとにハガキを分けておく。
ハガキは一日に大量に届くので、荒川さんや杉並さんもよく手伝っていた。

応募券を貼り忘れた人、せっかく全部記入したのに名前を書いていない人。
そういう無効ハガキは取り除かれる。――可哀想に。

500枚集まると、入力する。
どういう土地の人が何枚送ってきたのか? どういう職業の人が応募してきたのか?
など、統計をとるためにデータを入力するのだ。

墨田さんや足立さんの時代はわたしがやっていた。
荒川さんや日野さんのときも、できるときはやっていたと思う。

この後の第三期黄金時代になると、アルバイトさんが自分でやることが多かった。

集まったハガキは、編集部が抽選を行うときまで、読者ホットラインの預かりだ。

ハガキの量は多いので、その日の郵便物を配って歩く総務部の人も、両手に抱えてきたりした。
こういう企画が盛況なのは、いいことだろうね・・・・・・

1000名様にプレゼント

ついに誌面に載った。
誌面に載ったということは、撮影されたということだ。

そういえば日野さんは、そのことで振り回されて大変そうだった。

見本品はきちんと管理されている。
先方からいくつもらったか、どこにあるか。
「いただいたものだから自由にしていい」ということではない。
後から返していたのだろうか? 詳しいことは知らないけど、見本品の管理も日野さんの仕事だった。

ところがいよいよ決定すると、見本品は引っ張りだこになる。

「今度の読者プレゼントはこちらです」と何かの会議で社長など偉い人にも報告するらしい。
大田さんは偉い人会議の準備をする仕事なので、よく日野さんに確認していた。
「日野さん、×月×日が会議だから。見本、大丈夫だよね?」「はい」

編集部の青梅さんが撮影については担当している。
「日野さん、撮影、×日になったんだけど、見本借りられる?」「はい、大丈夫です」

でもある日、日野さんは倉庫(と呼ばれる部屋)に見本がなくて、驚いて探す。

倉庫は棚の数より物が多すぎて、いつも整理されていない。
使うものを引っ張りだしたり、預かって来たアンケートがどんどん増えたり、増えたからと適当に整理してみたり、何かと置き場所が変わっている。

どこにいってしまったのだろう? と焦る。
どこにまぎれていてもおかしくない物があふれている倉庫なので、日野さんは一生懸命探す。

挙句におそるおそる言ってみる。
「目黒さん、見本がどこを探しても見つからないんですけど、もしかして使ったりしました?」

「あ、見本ね~。青梅さんが編集会議で使うって言うから、貸したのよ~」

「――貸してたんですか!?」
「おとといね~。言ってなかった?」
「聞いてませんでした。それ、いつまでですか? ×日の会議までに返ってこないと困りますよね?」
「ああ、そうね~、大丈夫じゃない? ×日でしょ。一応、聞いてみるわ~」

これで終わりではない。
日野さんは一日、二日待つ。
上司が「聞いてみる」と言っているのだから、それ以上は突っ込めないから。

で、もう一度言ってみる。
「目黒さん、見本の返却日のこと、青梅さんに聞きました?」
「あ、忘れてたわ。ちょっと今から聞いてくるわね」

そういった苦労をしながら、ついに誌面に載った。

何月だったか忘れてしまったけど、前半号。
それからまた次の号、後半号。

合計で1000名様に当たることになっている・・・・・・
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