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偶然の出会い

ある午後、14時からの勤務にぎりぎりで、わたしは急いでいた。
1階のエレベーター前に着いたのが、57分。

エレベーターに乗ろうとしたら、男の人が乗り込んできた。
わたしは「4」を押し、男の人は「3」を押した。

――珍しいな、3階に用のある人なんて。

だいたい乗り合わせた人は、7階と4階が一番多くて、たまに8階、5階の人がいる。
そんな感じだったのに、3階とは。

エレベーターはまず3階に着いて、ドアが開く。
わたしはボタンの前に立っていて、「開く」を押しておく。

男の人は外に出たが、なんとまっくらだった。

――3階ってこんなだったのか。
滅多に3階の扉が開いたところを見ないので、知らなかった。

と思ったら、その人はきょろきょろしている。

わたしは閉まりかけたドアを開けてあげた。
その人は慌ててエレベーターに戻ってくる。

もしかして、ハッピーに来た人なのかなぁ?
「どちらですか?」と聞いてみる。
「ハッピーに来ました」と言う。

「4階です」と言ったら、「もしかしてハッピーの方ですか?」と言われた。
「そうです。でもただの派遣なので」と答える。

4階に着き、ドアを開けて先に通した。

その人は、「あ、でもそうしたら、もしかしたら一緒にお仕事するかもしれません」と言う。
「僕、カメラマンなんで。今日は久々に営業に来てみたんです」

――絶対、ないと思う。一緒に仕事すること。

その人は仕事をするかもしれないが、わたしが関わることは、絶対、ない。

何度目かに思うことだけど、「全員が編集部ってわけじゃないんですよ」・・・・・・
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ハッピーライフも変わる

時代も変わっていく中、ハッピーライフも変化の時が来た。
なんと編集長が変わるという。

ハッピーライフはこの会社の看板雑誌。通称「本誌」だ。

本誌の編集長、江戸川さんは特別な存在だった。
読者の前にも出るし、少しタレントのような色合いもあった。
ハッピーライフの、ひいてはハッピーの顔だったのだ。

「編集長」といえば、ハッピーライフの編集長だ。
いつかは社長にもなるのでは?と下っ端仲間たちは思っていた。

その役職にもついに交代の時が来た。

『ハッピーライフ』にはハッピーライフらしい色というか、性格がある。
だから編集長が変わったからといって、ハッピーライフそのものが変わるわけではない。
むしろ、関わる編集者がハッピーライフ色に染まっていく感じ。

それでもやっぱり、「時代は変わっていくんだなぁ」という感慨を抱く出来事だった。

女性向け雑誌だけれど、対外的にも顔となるなら、むしろ編集長は男性のほうがいいのかもしれない。
タレントっぽくするのなら、同性よりも異性のほうがいい。

そういう意味があったかどうか分からないが、新編集長も男性だった。
そして――結構若かった!

この「若さ」が、やっぱり「編集長」という名のタレントだから、とわたしに思わせたのだ。
爽やか青年で、見た目もなかなか(少なくとも社員の中では上位)。
前編集長の江戸川さんが少し三枚目キャラも混じった役作りだったとすれば、新編集長の国分寺さんは爽やか二枚目キャラで押していくのだろう。

この人はかつては本誌編集部にいたが、別雑誌に異動。
――座談会のときに出てきた、ハッピーヘルシーの男性副編集長である。
今回、編集長としてハッピーライフに戻ってきた。

編集長が交代するというのは、社内人事としてはもちろん事前に分かっている。
だけど、雑誌は何ヶ月か前に作るものだから、誌面などで編集長の名前が変わるのは3,4ヶ月先のことだった。

たとえば3月に「4月1日より異動」という発表がある。
4月になると、人事としては、ハッピーライフの編集長はもう国分寺さんだ。
江戸川さんは4月1日から、編集部の首脳というか、幹部みたいな役職になった。
でも今進んでいるのは6月後半号の制作。
国分寺さんは7月前半号の編集から携わることになり、7月前半号で「交代しました」のお知らせが載ることになる。

まるでダブルヘッダーのようなその期間にイベントがあれば、「編集長」として出ていくのは江戸川さん。
国分寺さんは7月前半号の発売日以降、名実ともに編集長になる。

わたし自身の仕事には、全く何の影響もないことだけど、時代は変わっていくんだなぁ、と思った。
自分の先行きも、少しばかり考えてしまったりして・・・・・・

ハートハッピーメイトの評判

ハートハッピーメイトさんたちが誌面に登場するようになったが、それは読者さんたちから受け入れられたのだろうか?

きちんとした答えはわたしには分からないが、わたしに分かる範囲では概ね好評のようだった。
――わたしに分かる範囲とは、つまり、アンケート内ではということだ。

「こうして読者が参加すると、親近感がわいていいですよね」
「読者の目線で雑誌が作られているという感じがして、親しみが持てます」
「読者が参加することで、実際に一般の人がやってみたらどうなのかというのが分かります」

そういう声がちらほらあった。

大絶賛は見たことがないけれど、批判はひとつも見たことがない。
やっぱり自分たちと同じ読者が参加しているという気持ちは、悪いものではないんだな。
――わたしはその頃はもう雑誌をあまり読まなくなっていたので、人ごとのように見ていた。
でももし、自分がハッピーライフの読者だったら、どう思ったろう?
やっぱり嬉しいかな?

ただ、コストも相当かかると思うので、会社として成功だったかどうか分からない。

いくら身近に感じてもらっても、買ってもらわなきゃ意味がない。
「最近すごく面白いので、いつもコンビニや病院の待合室で読んでます」と言われても、嬉しくないだろうし。
「おいしそうなレシピが多いですよね。病院や美容院でじっくり読んで、気になるレシピは写メしてます」と言われても、複雑な気分だろうし。

そして企業がどれだけ広告を出してくれるか、お金を出してくれるかが重要だ。
売上が上がるのも、部数が増えるのも、読者が楽しんでくれるのも、広告収入につながらないと会社が困る。

逆にそういう収入につながったのなら、コストをかけてハートハッピーメイトを創設、運営した甲斐があるというものだ。

この辺は、どうだったのだろうなぁ・・・・・・

気づいちゃった 2

ブログをチェックしていて、またまた「あれ?」ということに出会ってしまった板橋さん。

「目黒さん、この方、『エンジョイ生活』に掲載されたらしいですよ」
「え?」

『エンジョイ生活』は『ハッピーライフ』のライバル誌だ。
そこにハートハッピーメイトさんが掲載されてしまったとは――!

どうやらブログ記事は、「私の料理が『エンジョイ生活』に掲載されました♪」という楽しい報告だったらしい。
『エンジョイ生活』のネット上の料理コンテストに応募、見事グランプリ――だか準グランプリだか3位だか。
誌面にも堂々と掲載されているらしい。
さらにエンジョイ生活ネットにも料理の写真が載っていて、そのページへのリンクが貼られている。

ご本人は悪気はなかったんだろうなぁ――。

だって、たとえば『エンジョイ生活』の読者モデルとかブログモニターとかに応募したわけではない。
ただ、この一回きりのコンテストに応募しただけなのだ。

でも目黒さんとしてみれば、そういう見方は当然できない。

「ハッピーライフのハートハッピーメイトをしています!」と謳っているブログ内で、リンクをクリックしたらエンジョイ生活のサイトに飛んでしまう――

それはあんまりだ。

でもブログは本来その人のものであり、自由に表現していいものだ。
書く内容についてまでハッピーがどうこう言えるものではない。
しかしこのまま放っておくというのも・・・・・・

目黒さんは港さんに報告して、相談。
やんわりとメールすることになった。

はっきりと「やめてください」とは言えないが、「その辺ご配慮いただけると有難いです」的に言うという。

板橋さんが作成したが、作成中も作成後も目黒さんに相談しつつ進めなければならない。
協議を重ねて、時間も30分1時間と経っていく。

そしてついに文面も完成し、メールは送信された。

後日。
「目黒さん、あのエンジョイ生活に掲載された方から、お返事来てます」
「あ、ホント?」
「そんなこと規約になかったって」
「なかったけど、それは書けないから、だからご配慮って――」以下略。

まぁ、ねぇ。なかったよねぇ・・・・・・

気づいちゃった 1

毎日ブログチェックに何時間も費やすようになった板橋さん。
そりゃ、いろいろな発見もするわけだ。

「目黒さん、Gさんが謝礼がないって書いてますけど」
「え!?」

目黒さんは、椅子ごとガーッと移動して(キャスターがついているから)、隣の板橋さんのパソコン画面を覗きこむ。

――ハッピーライフのハートハッピーメイトになりました。
結構あれこれブログ記事もアップしなくてはならず、大変なのだけど、謝礼はありません。

「え! あるわよ!!」
「ありますよね」
「謝礼、ちゃんとあるじゃない!!」

――わたしからしたらすごーく少なく思えるけど、でも確かにある。
ないわけじゃない。
謝礼のお渡しが任期終了時なのだろうか? だから忘れちゃってる?

とにかくこんなことが誰でも見られるネット上で公開されていたら、大変よ!!
というわけで、目黒さんはとりあえず上の人に相談してみることにした。

ハートハッピーメイトさんに関する上の人とは、広告部の一番偉い人、港さんである。

で結局は、「やんわりと言いましょう」ということになった。
「やんわりと」したメールの文面は、目黒さんに任された。

「ブログ見たら、こんなことが書いてありましたが、ちゃんと謝礼をお渡ししてるじゃないですか!」
とはなかなか言えないところだ。
言い方を考えないと――

そして板橋さんと目黒さんは1時間も2時間も協議を重ね、ようやくメールを出したのだった。

数日後。
「あ、目黒さん、Gさんのブログ記事、訂正されてますよ」

元々の「大変だけど謝礼はない」の記事に、「謝礼はありません」のところに取り消し線が引かれ、「年間いくらいくらあります」と訂正が載っていた。

「削除してくれなかったの?」と目黒さんはちょっと不満そうだった。

でも目黒さん、今はこれが主流のやり方なんですって。
記事や文章自体削除するのではなくて、「自分は前にこう書いたけど、それは間違いでした」という訂正方式にするのをわたしもよく見る。

書き換えてしまったら分からなくなってしまうから、訂正にするのが良識あるブロガー、っていう流れらしいですよ。
と、またしても心の中だけでつぶやくわたしであった・・・・・・

ブログチェック

何かとブログが重要なハートハッピーメイトさん。

商品をモニターしたらブログにアップ。
イベントに参加したらブログにアップ。
何かの特集をしたといってはブログで「作りました」レポート。
何かのキャンペーンだといってはブログで「こんなアレンジしました」レポート。

ブログの記事にすることが大変重要である。

で、目黒さんや板橋さん、「ハートハッピーメイト事務局」としては、ちゃんと記事が上がっているかどうかが、非常に重要である。

世の中のブログモニターさんて、ホントにこんなにチェックされまくってるの!?
それでチェックする人の人件費はどうなってるの!?

そう思うくらい、念のいったチェックだった。
でも誰も「それほどチェックする必要はないんじゃ・・・」とは言ってなかったから、必要なチェックなんだろうな。

「もしもし――Cさんですか? いつもハートハッピーメイトとしてご協力いただき、ありがとうございます。
ところで先日の××イベントの報告記事なんですけど、まだ投稿なさっていないようですので――」
そんな電話がかかるのは、よほど取引先企業が絡んだときだけだろうけど、チェックだけはいつもしている。

「目黒さん、この人は、まだ上げてくださってませんね」
「前もそうじゃなかった?」
「そうですね。前のときも結局上げてくださいませんでしたね」
「その人にはどうしても上げてもらいたいキャンペーンとかは無理ねぇ」

これは大変役に立つときもあって、広告部の人はときどき聞きに来ていた。
「目黒さん、今度、**さんの製品を使った記事をメイトさんに上げてもらいたいんですけど。
えーと、10人にお願いしたいんですが、誰がいいでしょうか?」

すると目黒さんは板橋さんに相談しながら、答える。
「Cさんは絶対に必ず書いてくれる方なんですよ」
「Dさんも間違いなく上げてくださるけど、Dさんは今他の商品をモニターしてるから――」
「Eさんは人柄はいいんですけど、記事となるとサボりがちだから、絶対上げて欲しいならやめておいたほうがいいですね」
「Fさんは、料理には強いんだけど、そういう方面はあまり関心がないかもしれない」

なかなか役に立っていたのである。
また、ときどき思わぬ発見をすることもあった。

それについてはまた、次回・・・・・・

プライドの問題

今日は横浜カズエ先生にふんわりオムレツのコツを伝授していただきました!

ハートハッピーメイトの三人が生徒となって、カズエ先生のテクに迫ります。
aico58さん、ス~パ~マダムさん、Yanosukeさん。

オムレツって簡単なようで奥の深いもの。
ハートハッピーメイトの三人も、撮影スタッフも、興味津々で教室スタート。

――そして基本のふんわりオムレツの作り方を教わり、バリエーションを教わり、教室終了。

記事の途中には写真が添えられている。
生徒役がフライパンを持ってコンロの前にいて、先生がその横で笑っている。
生徒役の顔の近くに吹き出しが描かれ、「うまくできるかな~?」と書かれている。
先生の頭の上あたりに、「注意を守ってやれば大丈夫!」。

記事の最後にもそういう写真がついていて、生徒三人が先生を囲んで、皆笑顔でポーズ。

記事にも書かれていた。

オムレツの作り方、いかがでしたか?
参加したハートハッピーメイト三人も大満足。

yanosukeさん:予想していたよりずっとフワフワにできて、びっくりしました。
aico58さん:オムレツってなかなかうまくフワフワにできなかったけど、こうすればよかったんですね!
ス~パ~マダムさん:子供たちもパパも大喜びすると思います。

ぜひ皆さんも試してみてくださいね。

で、終わり。

ところがこの号が発売されてから、読者ホットラインに電話が来た。
問い合わせ対応係の渋谷さんが、じっと話を聞いていた。
これは単純な問い合わせではなく、苦情かな。

と思っていたら、aico58さんだった。

自分はレシピブログをやっている。
今後は料理教室なども開いていきたいと考えている。
そんな自分が「オムレツってなかなかうまくフワフワにできなかった」と言ったように書かれるのは、少しばかり困るのである。
というか、大変困るのである。

そんなことは自分は一言も言っていない。

もちろん、記事だから仕方のないことだろうが、ブログ読者さんの手前もあり、非常に困るのである。

撮影前に担当編集は一言説明していた。
「誌面では今回の様子がそのまま載るわけではなく、編集される」と。

でもその編集の仕方が、たまたまその方には耐えがたいものだった。

電話を受け付けた渋谷さんが後から言っていた。
「それがまた、ふわふわのオムレツはその人の得意料理で、過去に何度もブログ内でコツを紹介していたそうで」
――あらあらそれは。
「近いうちに始めるつもりのお教室も、オムレツを中心に定番料理をおいしく作るというコンセプトだそうで」
――重なるもんですねえ。
春巻きのときにでも撮影が回ってくれば良かったのにね。
または「いつもうまく作れなかった」のセリフが他の人だったらね。

目黒さんは次にメイトさんを選ぶとき、「野心のない人だといいわねえ」と言っていた。

今はレシピブログ→お料理教室って人、いっぱいいますからねえ。
なんていうかたぶん、意識のギャップがあるんですよね、きっと。

ブログ=単なる個人の趣味、つまり一般人と思う目黒さんたち社員と、情報の発信者としての自負がある最近のブロガーさんたちと。

趣味でやってる一般人もいるけれど、趣味が高じてプライドを持って発信してる人も増えてるから。

なんて、心の中で言ってみるのだった・・・・・・

ハートハッピーメイトの撮影

誌面に登場することになったメイトさんたちは、たぶんハッピーに集まる。
見たことがないので、実はよく知らない。

編集部のあたりには、わたしはめったに行かないのだ。
だから、集まっていたとしても、あまりよく分からない。

L字型になっている会社の、あっちの部分は編集部、こっちの部分はそれ以外。
わたしが属する島は、「それ以外」の中でも、最も編集部から離れた位置にあった。

読者ホットラインの他の人たちは、たまに編集部に用事があることもある。
アンケートのことで用があったり、お問い合わせのことで用があったり。
でもわたしにはそういうことがないので、編集部にはほとんど行かない。

少しだけ接点のあったお便りアンケートの業務も、ハートハッピーメイトが軌道に乗った頃、わたしの手を離れた。
ダブルワークの第一の仕事が忙しくなり、この仕事は他の人に割り振られたのだ。

そういうわけでよく知らないが、たぶん、誌面に登場するための撮影はハッピーでしていたと思う。

「今回は料理研究家の横浜カズエ先生に、上手なホットケーキの作り方を教えていただきました」
「電子レンジを活用して、自宅でおいしいスイーツを作ってみよう!」
「今話題のキッチン家電を使い比べ!!」

なんていうテーマで、その場で作ったりして、その様子を撮影する。

そしてしばらく後の号で、誌面にその記事が載ったとき、いくつかの写真も掲載される。
「今回、お手伝いしてくれたのは、ハートハッピーメイトのヤムヤムさんとミニミニさんです」
なんて感じで。

どのくらいたくさんあったのか知らないけど、これが一番ワクワクする「仕事」だったのじゃないかな。
わたしがメイトさんでもそうだと思うな・・・・・・

ハートハッピーメイトのイベントレポート

広告部のイベントには、ハートハッピーメイトさんの枠が用意されていることがあった。
必ず全部のイベントにではないだろうけど、力を入れたいイベントには用意されていて、あとからブログで宣伝してもらう。

――直截的な宣伝でなくても、認知度が高まるだけでもいいのだろう。

さすがはブロガーたち、必ずカメラ持参でやってきて、何事も写真写真写真、と撮りまくるそうだ。
それを記事にする段になると、写真をたくさん使った詳細な記事って面倒だし、すぐアップされる人となかなかアップされない人がいるみたいだけど。

こういった枠があることも特典のひとつなので、メイトさんたちにもメリットがあるし、用意したからにはブログに上げてもらわなければならない。

大変なのは事務管理で、応募者の管理は面倒そうだった。

異動してイベントチームになった荒川さんが言っていた。
「この人がメイトさんだから申込んできたのか、普通の一般の人なのか、チェックが面倒なんだよね」

帰る方向が同じなので、たまたま電車で一緒になったときに聞いたのだが、長時間ではないので根掘り葉掘り聞いている暇はない。
だから詳しい仕組みは分からない。
いったいどういうやり方で応募を管理しているのだろう?

たぶん、違う部署が絡むと、どうしても若干、縦割り行政的になってしまうのだろうと思う。

応募、当選、イベント運営はイベントチームの荒川さんたちがする。
メイトさんたちの管理は読者ホットラインの目黒さんと板橋さんがする。

「重複チェックがすごく面倒で。それを目黒さんはこっちでやれっていうんだよ?
メイトさんの名前とかメールアドレスとか管理してるのは目黒さんたちなんだからさ。
目黒さんたちがやってくれたら早いのに、あたしにやれっていうんだよ?」
――それは大変そうだね。
「いちいち何百件も応募の動機を読んで、そこに“ハートハッピーメイトだから応募しました”って書いてあったら、その人はメイトさんだって言うんだよ?」
――それはまた、大変そうだね。
「書いてこない人だっているわけだしさ。どうするの?」

メイトさんだと判明するとどうするのか?
メイトさんも他の人たちと同じ応募方法で応募してくるものなのか?
選考基準はどうなっているのか?

いろいろなことがよく分からなかったが、面倒そうだなというのだけは伝わってきた。

「荒川さんができないって言ってるって、目黒さんは聞いたらしいんだよね。
だから、そんなことない、できる、応募動機を読めばいい、って言ってるんだよ」
――目黒さん、手間を惜しまない人だからねぇ。
それをアルバイトにも求めちゃうんだよね。

「それで、あたし、練馬さんに頼んだの」
――練馬さんは、イベントチームにずっといる社員さん。
「たぶん、あたしが言ってるって話になってるからだと思うので、練馬さんからそれとなく話してもらえませんか、って」
――目黒さん、広告部にはあまり強気に出ない人だからねぇ。

「そうしたら、いいわよ、こっちでやるわ~、ってすぐ言ったんだって。
ちょっとうちでは無理なのでそっちでやってもらえませんか、って言っただけですぐ、うちでやるって言ってくれたよ、って練馬さんに言われた」

離れても目黒さんと荒川さんの気持ちのすれ違いは、なかなか解消されないようである・・・・・・

ハートハッピーメイトのお仕事

たぶん、メイトさんたちの一番のお仕事といえば、商品モニターだろう。

誌面に登場するといっても、全ページに登場するわけではないし、枠は1号あたり数ページ程度。
全員ではなく、1号あたり3~4人程度。
遠くて来られない人もいるだろうから、中には2度3度登場している人もいるだろうが、任期中にそうそう何回もはないと思われる。

でも商品モニターはいくらでもある。
メイトさんたちの存在が少しずつ浸透してからは、企業からの依頼も増えたようだ。

商品をモニターしたら、その感想はブログで言わなくてはならない。
何しろブログありきなのだ。

ときどき「商品モニター募集」の案内をネットで見ることがある。
そういうものの中には、「感想をレポートにして提出する」という条件が書かれていることもある。
これらは本当に開発や改良のための意見や感想を求めているのだろうけれど、ハートハッピーメイトでのモニターは宣伝目的だ。

だから「既に販売されている商品を使った新作レシピを記事にする」とか「新商品を食べてその感想をブログに書く」とか、そういうことが多かった。

今やっているキャンペーンを盛り上げるため。
ブログで少しでも知名度を上げるため。
誌面に出たタイアップ広告をさらに盛り上げるため。

などなど、企業のニーズに合わせて、いろいろな「仕事」があった。

――ちょっと補足。
(タイアップ広告とは、どうやら、ハッピーの広告スタッフが記事を作るものらしい。
その会社の製品や商品を使っているけれど、料理研究家が出てきたり、レシピがたくさん紹介されたり、製品の特徴を説明するページもあったり、まるで雑誌の特集記事のように読める広告のことだ。
ただ写真と商品名と宣伝文句があるだけの広告より、わたしが入力するアンケートでの評判は良かった。
それが広告企業の売上につながるのかどうかは知らないが、読む分には楽しく読める。)

ところでこの「仕事」、やっている側は「仕事」感覚ではないだろうから、これらは通称「ホームワーク」だった。
サボっていて、なかなか記事が上がらないメイトさんには、「先日のホームワークですが」なんて電話していた。

ハッピーライフのレシピで料理を作って、「作りました」という記事にする、なんてホームワークもあった。
どうしても料理関係が多かったけれど、中には美容製品や家事用品のモニターもあった。
イベントに参加してレポート記事を書く、というホームワークもあった。

とにかくメイトさんにとって、一番量の多い仕事は、ブログ書きだったと思う。

そしてそれはチェックされる。
普通「ブログモニター」というのになった場合、どれだけ記事をチェックされるものか分からない。
でもハッピーの場合は、目黒さんの指示で板橋さんがかなり執拗に記事をチェックしていた。

「Bさん、いつまでも先日のイベントの記事、上げてくれませんねぇ」
「そうなの?」
「でもなんか、引っ越しなさったみたいなんですよ。だから忙しいのかもしれませんね」
「引っ越したの!?」
「少し前の記事に書いてありました」
「発送の住所とかは変わらないのかしら!?」
「あー、そうですね。電話してみましょうか」
「電話してみて!」

「Bさんでしょうか? 先日お引っ越しされたという記事がありましたよね。
それで、商品発送のご住所などは、変更ございませんでしょうか?」

――ここまで見られているものなのか。
恐るべし、ブログモニター。わたしはできないかも・・・・・・

ハートハッピーメイトの座談会

読者モデル兼ブログモニターというか、読者モデルとブログモニターの中間というか、とにかくそういう存在のハートハッピーメイト。
選考の末、選ばれたメイトさんたちの初仕事は、座談会だった。

わたしは多くの座談会で筆記役をしてきたが、このメイトさんたちの座談会に関しては、まったく関与しなかった。
最初は目黒さんから話があったが、わたしの都合が合わなかった。
しかしどういうわけか、今までとは違って、板橋さんにも渋谷さんにも葛飾さんにも、筆記の仕事は振られなかった。
結局のところ――広告部側の担当者さんがポイントだけ筆記することになった。

そしてその後もずっとそういうルールになった。

メイトさんの座談会は、初めのうち何回もあったから、これは有難いことだった。
ダブルワークの第一の仕事が忙しくなり、ハッピーに出る日が減っていたので、これ以上の筆記やテープ起こしはきつかった。
(メイトさんの座談会ではテープ起こしはしていなかったが、もしわたしが担当していたらやることになっていただろう。)

そして、やり方が確定してから振り返ってみると、筆記はそれほど必要ないと分かった。

この座談会では、一応、「日頃皆さんがお考えになっていることや、ライフスタイルなどを伺う」ということになっていた。
しかし参加人数が10人を超すこともあり、通常の座談会のように事細かに聞いていくものではなかった。

要するに、「座談会」と言っているが、ハッピー側の面接のようなものとでも言うか――
そういう言い方はどうかと思うので言い換えると、「顔合わせ」のようなものとでも言うか――

「意見を聞く」と言ってはいるけれど、どちらかというと、顔合わせに近い性質のものだった。

ハッピー側は、これから担当になっていく編集部員や広告部員やネットスタッフチームメンバーが出席し、メイトさんたちを見る。
そしてメイトさんたちの話を聞く。

ああ、こんな人たちが今回のメイトさんか。
こういう雰囲気か。
――とまあ、そんな感じの集会なのだ。

メイトさんたちのほうも同様だ。
「へぇ、こんな感じなのね」という確認とでもいう集まり。

それに、これから先、誌面に登場することになったら、撮影のためにハッピーに来るわけだ。
そのとき道に迷わないように、今のうちに来ておいたほうがいい。
今日なら遅刻してもいいけれど、撮影のために準備をして撮影スタッフも待っている状態で遅れたら、ちょっと面倒だ。

だからわたしはこの座談会に関しては、何も知らない。

「あのAさんて人は、送られてきた写真の感じと違いましたね~」
「Bさんは写真よりずっと可愛かったわねぇ。あの人なら誌面に出たとき映えるわねぇ」

そんな会話をなんとなく横耳で聞いたくらいの関わりだった・・・・・・

わたしに関係すること

この読者モデル兼ブログモニター、ハートハッピーメイトの仕事は、わたしにはまったく関係のないものだった。
たとえば、担当は××さんだけど、入力だけは請け負っているとか、そういう程度にも関係していなかった。
担当アルバイトの板橋さんとすごく仲が良くて、いつも一緒に帰ったり話を聞いたりしているということさえなかった。

仲が良いも悪いも、接点がない人だった。

板橋さんは毎日いるけれど、終業時間が他の人より早い契約を希望していて、帰りは一緒ではない。
この時代、ランチはそれぞれで食べるようになっていたので、お昼も話すことはない。
話すら聞く機会がなかったのだった。

そんなわたしにとって、このメイトさんの仕事、一番関係したのは島内の雰囲気だった。

目黒さんは絶好調!
板橋さんというパートナーを得て(そしてまだ彼女は入社して半年も経っていない蜜月状態だったので)、さらに絶好調加速!

目黒さんが絶好調なのは、下っ端的にはいいことだ。
絶好調すぎると振り回されてしまうこともあるけど――。

だけど、品川さん的にはあまり良い環境じゃない。

忘れていようと思っても、その声の高さで思い出させられる。

無視していようと思っても、高いテンションで話しているので突っ込みたくなる。
また、品川さんの目から見れば、目黒さんの仕事ぶりはツッコミどころ満載だ。

下っ端の立場から見ても、ちょっとツライくらいテンションの高い日もあったくらいなので、品川さんの心中さぞやと思った。

黙っているのが苦しくなると、品川さんは異動した荒川さんに話しに行く。
またはライトメッセージというその場だけのメールで荒川さんやわたしに話す。
荒川さんは忙しい部署に異動したので、いないこともある。
そういうときは、わたしにたくさんメールが来る。

でもわたしも社内にいない日がある。
ダブルワークなので、第一の職場に行っている日が続くと、品川さんはたまってしまう。

家に帰るとメールが届いていたりして、「え、家にまで?」と思うほど、品川さんはストレスフルだった。

このなんとなく板挟みな立場が面倒になってしまい、第一の職場が続くとホッとした。
でもそういう日に品川さんからメールが届いていたりして、またあの読者ホットラインの島の空気に引き戻される感じがした。

派遣単発時代は「職場の人間関係」から抜け出て仕事をすることができた。
でもこれだけ長く所属してしまうと、もう「派遣です」「末端です」と言えなくなる。

「派遣」で「末端」なりの苦労ができてしまうのだなぁ、としみじみした・・・・・・

選抜

何回も書いているが、目黒さんは新しい仕事が大好きである。

こんな先行きも今後も混沌とした、まったく未知の宇宙みたいな仕事――張り切らないわけがない!!

個人情報一覧で選抜してみたり、ブログをあれこれ見てみたり、実に熱心である。
板橋さんも目黒さんと同じテンションで仕事ができる人だったので、フィーバーは相乗効果でどんどん数値が上がっていく。

これだけあれこれ検討しつくしてもらえば、応募してきた人も応募者冥利に尽きるってものである。

「この人は、写真がすごくいいわねぇ。ぜひこの人に残ってほしいわよねぇ」
「誌面ですごく映えそうですよね」
「この人は、条件が最高なのに、ブログがダメなの?」
「なんか開かないんですよ。開いてるんですけど、すごく重くて、全然表示されないんです」
「画像が重いんじゃない? 画像を使いすぎてなかなか開きませんよって教えてあげたいわねぇ」

――目黒さん、たぶんそれ、違うと思う。

今どきはいろんな要因が考えられるので、「重い=画像サイズが大きい」とはいえない。
ブログサービス側のサーバーの容量が少ないとか、ブログサービスの表示方法の違いとか、わたしが思いつくだけでもいろいろある。
わたしなどの知らない要因もまだまだたくさんある。
教えてあげると言っても、目黒さん・・・・・・
まあ、いいんだけど。

「この人、すごいですよ」
「あら~、すごく細かくやってるのね~。こういう人ならうちのモニターもまめにやってくれそうねぇ~」
「でも妊娠なさってるみたいですね。ここに書いてあります」
「あらま。じゃあ、生まれちゃったらダメかしらね? 時間なくなっちゃうわよね」

――そこまで読み込まれているとは、ブログの持ち主も思うまい。

ここまでしたのに、あくまでもこれは「下読み」というか、事前選考でしかない。
ここで落ちたからといって、編集部やハートハッピーネットスタッフに見せないわけでもない。
正確に言うと、「落ちた」というわけではなく、「疑問符の付箋をつけた」程度でしかない。

選考するのは編集部と、ネットスタッフ。

今後読者モデルとして誌面に登場するのは編集部が管理する。
ブログモニターとして商品やイベントをブログで紹介してもらうのは、ネットスタッフが管理する。
(依頼は広告営業がしてくることもあるだろうが、管理の部署としてはネットスタッフになるらしい。)

だから選ぶのはこの人たち。

目黒さんと板橋さんのテンションはかなり高いが、あくまでも雑用係。
でもいいのだ! 目黒さんは楽しいのだから!!

――これ、もし、荒川さんだったら、絶対言うだろうな。
「こんなに騒いで時間かけてやったって、無駄じゃない?」って・・・・・・

え、あのブログサービスはダメ?

前の記事で「モニター系と懸賞系のブログははずしたい」ということを書いた。
「はずしたい」といっても、わたしがそう思っているわけではなくて、目黒さんが思っているっていうことだ。

これらのブログはさる会員数の多いブログサービスを使っていることが多かった。
そうでなくても、このブログサービスの会員は多かった。
「ここを使っているとアクセスが上がる」とか「有名人はここを使っている」という売りのせいもあったかも。
――本当にアクセスが上がるのかどうかはさておき、そう信じている人がいることは事実なのだ。

「応募してきた人の半分くらいはこのブログサービスなのよ~」と目黒さんは言っていた。

それほど多いこのブログサービス、後からちょっと困ったことが発覚した。

モニターや懸賞のブロガーを多く抱えているのは、わけがあったのだ。
このブログサービスが主催して、モニターブロガー会なども開催してくれる。
企業とブロガーの橋渡しもしている。(きっとそれで利益が出ている)。

というわけで、このブログサービスで「モニターブロガー」として登録している場合、他でモニターをしてはいけないという規約があったのだ。

どうして規約なぞ読むことになったのか分からないが、とにかくなんてことなく規約を読んだ目黒さんは「あら?」と思った。
これは「ハートハッピーメイトになるのもダメ」ということになるのかしら?

これは申し込んだ人たちの責任であって、ハッピーが責められるべきことではない。
その人たちはきちんと規約を読んでいないわけで、もし規約がありながら申し込んだとしても、ハッピーには「あなたは規約違反です」と指摘する義務はない。

しかし。

そうは言っても、それで問題が起こったら面倒である。
一度認定されたメイトさんたちが、続々と退会してしまったら、それはそれで迷惑をこうむる。

というわけで、目黒さんはそれを偉い人に相談。
この件では、「統括する偉い人」は広告部の港さんということになっていた。

目黒さんは、港さんとそのブログサービスに話をしに行くと言っていた。
何を話すのかは知らない。
そして、実際に何を話したのかも知らない。

どう決まったのかも知らないけれど、そのブログサービスを使っているメイトさんも存在していたから、うまく話がまとまったのだろう。
もしくは「心配することないですよ、その規約の意味はこういうことだったんですよ」という話だった可能性もある。

とにかく手打ちというか、示談というか、何かうまい解決がついたらしいが、なるほどと思ったものだ。
そんなこともあるんだなぁ。規約なんてそこまで読んでないかもなぁ・・・・・・

メリット

ハートハッピーメイトにはブログモニターの要素もある。
これは非常に重要な要素で、絶対必要な条件だ。

ブログでも――つまり、ハッピーライフの誌面を離れたところでも、企業の商品紹介が行われるのだ。
どうやってそれを収益に結びつけていたのか知らないが、雑誌斜陽が懸念される時代にあっていろいろな可能性が模索されていた。

できればハートハッピーメイトは、のんびりほんわかしたハッピーライフのイメージに合う人がいい。
ブログもしかり。
モニターブログや懸賞ブログは外したい。

モニターブログは、モニターすることでその商品をもらえたり、謝礼がもらえたりする。
美容商品をモニターすると、高い美容商品や化粧品を使ってみたり、もらえたりする。
でもハートハッピーメイトの場合、必ずしも高い貴重な商品のモニターができるとは限らない。
その上、「この商品は私には魅力がないからやりません」はなし。
「ホームワーク」として必ず参加してもらわなければならない。
興味のない商品、安い商品であっても。

だからモニター系や懸賞系のブログは趣旨に合わないのだ。

こうして任期の間活動することで、メイトさんたちには何のメリットがあるのか?
まさかただ働き!?

いやいや、そんなことはない。
わたしなら絶対やらない額だけど、任期に対していくらの謝礼がある。

でも「わたしなら絶対やらない額」なんだよね?

そう。
だけど、特典は他にもある。

ハッピーの広告系のイベントに優先的に招待される。
結構楽しめるイベントが多くて倍率が高いので、大変お得と考える人は多い。

ハッピーライフの誌面に登場できる。
これは大変魅力と考える人は多い。
斜陽とはいえ、やっぱり「雑誌に載る」というのは人気の特典だ。

レシピブログをやっている人は箔がつく。
なぜ?と問うなかれ。
そう思う人が世の中にはいるらしい。

将来は料理研究家を目指しているブログもあったようなので、「ハートハッピーメイトに選ばれた」ということがキャリアの役に立つと思ったのかもしれない。
またイベントなどに参加することで、経験の幅が広がると思ったのかもしれない。
人脈も広がる――かもしれない。

何でもチャンスは捉えておくべきだ。

わたしのような者にとっては「少ない額」の謝礼でも、それだけではない有形無形のメリットがあるようだ・・・・・・

一体誰を選ぶ?

読者モデルとブログモニター、両方の要素を兼ね備えた中間的存在、ハートハッピーメイト。

わたしは業務にまったく関係していないので詳しいことは分からないが、どうやら募集が開始された様子。
目黒さんと第三期黄金時代の板橋さんがタッグを組んで、事務局を名乗っている。

募集はハッピーライフの誌面やハートハッピーネットなど、いろいろなところで行われたらしい。

ブログモニター的要素もある役なので、メールで申し込み。
今後も連絡事項はメール配信が多い予定。

応募に必要なのは、本名、住所、メールアドレス、電話番号、年齢、その他の基本個人情報。
それから、ブログ名、ブログURL、メイトネーム(ブログで名乗っているニックネーム)。

メイトさんとして活躍する際には、このメイトネームで登場することになる。
たとえば雑誌に読者モデル的に登場するときも、「ヘアモデル役はハートハッピーメイトのハッチャンさんとフワリン425さんです」と紹介される。

そして写真も添付しなければならない。
なぜなら、読者モデル的要素も強いから、写真選考もしなければならないから。

――そうか。わたしなどは応募しても、写真でハネられるな。

しかし最初なので、事務局は混乱を極める。
どういう手順で選んだらいいか、はっきりしたマニュアルも決まっていないからだ。
手さぐりで、すべての要素を板橋さんや目黒さんがチェックしている。

ある程度絞り込んだ状態で、ハートハッピーネットスタッフや編集部に渡すという、事前選考を二人がしているのだ。

まず基本的な個人情報洩れがある人は無理だし(でも有力候補だったら確認とるかもね)・・・・・・
ブログがお料理やグルメ系でない人は無理だし(だって料理を載せてもらうことが多いから)・・・・・・
添付されてきた写真で、あまりにも――という人は無理だし(誌面にも載るから)・・・・・・

どうも第一回目のメイト選考は、カオスのようだった。

「この人は遠すぎて誌面に登場できないのでは?」「この人は年齢が高すぎるのでは?」
と個人情報を見て検討していたかと思うと、
「このブログはあまり更新されてないみたいですよ」「このブログは料理というより懸賞よね」
とブログをチェックしているらしい。

やはり「ブログモニター」という要素があるので、懸賞系のブログが多く応募されてきた。
でも商品モニターだけをやってもらうわけではないので、懸賞系ブログは外したい。
すると――有力候補はそれほど残らない。

とすると、さっき年齢や土地で「この人はちょっと無理かも」とハネた人をもう一度対象に入れて――

カオスだ・・・・・・

写真選考も難航した。
他の条件やブログがいいと思っても、写真が添付されていなかったり。
小さすぎて分からなかったり。
変な拡張子で開けなかったり。
プリクラの写真だったり。

プリクラは困る。これでは本当の顔が分からない。
それ以外に、「写真を添付してくれ」と言われてプリクラ写真を添付してくる人ってどうなの?
今後活動してもらうときに、常識的なことはちゃんと分かってる人なの? という懸念が出てくる。

でも、今の時代の人にとっては当たり前のことで、問題視することではないかもしれないし。

カオスだ・・・・・・

読者モデルらしきもの

よくブログモニターというのを聞く。
企業の商品などを使って、その感想をブログで書く人。

それから雑誌だと読者モデルというのをよく聞く。
読者の中から選ばれて、一年なり何なりの期間活動する。

職業訓練が終わる頃、クラスメイトがある主婦向け雑誌の読者モデルに選ばれたと言っていたので、そういうものがあることは知っていた。
もう終わり頃だったので、誌面で活躍しているのを見たのは一回きり。
すさまじい髪型で写っていた写真が印象に残っている。
なんでも雑誌指定の青山の美容院に行かされて切ったのだそうだ。

ハッピーライフもそういう読者モデルのような人たちを募集することになった。
ハッピーライフはほんわかした雑誌なので、ものすごいスタイリストがいたり、カリスマ美容院に行けと言われることはないだろうが。

この読者モデルさんたちはその名もハートハッピーメイト。

ハートハッピーメイトさんたちは、わたしの職業訓練時代のクラスメイトほど大々的に誌面に登場しない。

そして、わたしの職業訓練時代のクラスメイトにはなかった任務も帯びている。
ブログをすること。
ブログで「ハッピーライフのレシピを作ってみました」レポートや、広告を出してくれる企業の商品を「使いました」レポートを書く。

つまり――読者モデル兼ブログモニター、というか、読者モデルとブログモニターの中間みたいなものだ。

さて、こんなことをするのはハッピーとしては初めてだ。
――いや、訂正しよう。
わたしの知る限りでは初めてだ。
大昔、読者モデルのような存在がいたとしても、そのノウハウは既に失われている。

それに昔と今は時代も違う。
募集の仕方も、メイトさんたちの活用法も、管理の仕方も違ってくるだろう。

うわー、そんなのの事務方になった人は面倒だろうなー。

メイトさんたちが誌面に登場するための企画や撮影は、編集部がするだろう。
でもそれだけしかしないだろう。
細かい煩雑な事務手続きは裏方任せ。

メイトさんたちが広告企業の商品をモニターするのは、広告営業が話を持ってくるだろう。
でもそれだけしかしないだろう。
細かい煩雑な事務手続きは裏方任せ。

事務方は大変だなぁ――

で、そういう仕事は、結構目黒さんに回ってくるものなのである・・・・・・

サイトリニューアル

いろいろな方向性から経営難を乗りきろうとする株式会社ハッピー。
できればリストラよりも収益を上げる方向で。

ハートハッピーネットもリニューアル。

見やすく、楽しく、盛りだくさんのコンテンツで、頑張ってアクセスを上げる。
ハッピーライフに載った過去のレシピなども検索できるようになった。もちろん一部だけど。

でもこのネット、ただアクセスしてもらっても仕方がない。
Web見て楽しんで、もしかしたら過去のレシピ検索して、「あ~今日これ作ろう」って印刷して終わり。
――それじゃあ収益にはつながらない。

雑誌の読者がWebも見てくれる。
そしてWebの読者が雑誌も買ってくれる。
むしろ後者こそ大切なわけで。

どの会社も似たような努力をしているのだろうけど、ハッピーでもやっていたわけだ。

具体的にどういう戦略があったかというと、これまたわたしには不透明なのである。
分かることというと、普通の読者でも推測できそうなことだけ。

だがまあとにかく、雑誌とサイトの連携をしていた。
サイトユーザーが紹介したものを誌面で公開するコーナーをハッピーライフに作ったり。

さらに広告を出してくれる企業とも連携。

その企業の商品を使ったレシピのコンテストをしたり。
グランプリとか準グランプリとかには賞品が用意されている。
だいたいその企業提供の商品とか。

そういう具体的な例以外にも常に何かしらキャンペーンが行われていて、読者が参加できるようになっている。

いつも参加して常に見ていてくれないと、いざ広告企業とタイアップコンテストとなっても寂れたものになってしまう。
それにアクセス数やプレビュー数は常に稼いでおかないと、「そんな人の見てないサイトで広告出しても」と断られてしまう。

ハートハッピーネットの重要性は増した。
力の入れ度合いもかなり増した・・・・・・

広告系アンケートの需要

わたしはこの会社に入って初めて、広告というものについて考えさせられた。

たとえばテレビは視聴料をとらないのになぜ会社が成り立つか?
――そういうことは深く考えたことがなかったのである。

雑誌は「定価×販売部数」が収益だと、なんとなく思っていた。
もちろん、雑誌内の広告ページはお金がかかるということは、知っている。
ただあまりつながりを深く考えたことはなかった。

でも本当は広告料こそ重要で、これが減ると経営が大ダメージを受ける。
むしろ雑誌本体の売上は「うちはこれだけの発行部数がある雑誌です」と広告営業が言うためにある――なんていうのは極論だけど、そう思いそうなくらい、広告は重要だ。

アンケートや座談会でこう言う人もいる。
「広告ページが多すぎる。仕方ないとは思うけど、これがなければその分記事ページが増えるのに、と思ってしまう」
そのたびに心の中で思う。
――気持ちは分かるけど違うんだよ。
広告がなくなったら、そのページを埋めるために記事が増えるんじゃなくて、むしろ減るんだよ。
さもなくば取材費とか人件費とかがかけられなくなって、やっつけ記事が多くなるか。
または価格が高くなるか。

それほど大事な広告だが、不況になると企業もなかなかお金を出せなくなる。
1ページ何十万だか何百万だか知らないが、そんなお金をあちこちの雑誌に出し、テレビCMも流したりすれば大変な金額だ。

そこでハッピーも付加価値をつける。
ここで目黒さん登場だ。

たとえば広告営業の依頼で、ハートハッピーネットの会員にアンケートをとる。
「休日にドライブに行くことはありますか?」「どんな車で行きたいですか?」
そして広告営業は先方の企業に言う。
「こういう結果が出てますから、うちの読者向けに休日ドライブ仕様の車として、お宅の××の宣伝をしたらどうでしょう」

企業にしても、調査会社に恐ろしく高額な調査料を払うより手軽に調査結果が分かる。
そりゃ本物の調査とはレベルが違うだろうけど、ちょっとした傾向や動向がわかって便利。

まあこれは、わたしの単なる想像だ。
実際どう使われていたか断言はできない。

広告部の人がよく頼みに来てるなあ、というところから勝手に推理している。
また、料金の高いタイアップ広告(記事のような広告)では、広告部の人が記事を書くそうだから、そこで資料として使うためにアンケートをとっていたのかもしれない。

それから前にも何回か書いているけれど、広告部は企業とのタイアップイベントが増えた。
イベントをすれば必ず参加者にアンケートをとる。
この入力・集計も目黒さんに依頼された。

目黒さん配下の下っ端仲間も以前より忙しくなり、人員が増えても楽にはならなかったのである・・・・・・

出版斜陽

出版業界は斜陽と言われてずいぶん時が経っていた。

活字離れが声を大にして懸念されたのは、わたしが初めてハッピーに行った日よりずっと前だった。
インターネットなど他の情報取得手段も出てきて、雑誌離れの傾向にあることも、既に指摘されていた。
電子書籍の可能性が出てきて、紙媒体に関わる業界が震撼したのは、わたしが働いている何年かの間のことだった。

一連の流れの中で、インターネットで見られる形で雑誌を作るところも出てきた。
廃刊・休刊になった雑誌もあった。

そんな中、ハッピー社内では、それほどの危機感を感じなかった。
わたしが感じとれなかっただけで、上層部は焦燥していたかもしれないが。

でもハッピーライフ読者たちは、どちらかというと紙を愛する人たちが多かった。
紙とWebでアンケートができるのに、紙で答える人のほうが圧倒的に多かったし、アンケートでも「インターネットはない」「パソコンがない」と言ってくる人は多かった。

さすがに携帯はほとんどの人が持っているから、インターネットの台頭より、携帯で見られる形の電子書籍のほうが脅威に感じられたかもしれない。
――しかしこれもまた、ちょっと違うかな、という気もした。

ハッピーの読者には専業主婦も多い。
フルタイムで働く人もいるけれど、専業主婦やパート主婦のほうが多い。
そうすると、やっぱり家で雑誌を見ることが多いから、家で見るなら紙のほうがいいわけだ。

フルタイムで働く人――正社員でも派遣でも、フルタイム勤務なら、通勤時間の暇つぶしに携帯で雑誌を見るかもしれない。
でも専業主婦が出かけるのは、買い物とか学校や幼稚園の行事やお迎えなどで、暇つぶしが必要なほど暇な用事ではない。
パートというのは、ほとんどの場合、あまり遠くまで通わない。(通う場合もそりゃあるけど)。

確かに紙は場所をとるけれど、雑誌だから捨てればいいわけだし。
小さい液晶画面で見るよりも断然見やすい。

パラパラめくる楽しみもある。

そんなふうに、インターネットの来襲も、電子書籍の脅威も、販売部数が落ちたとしてもなんとかくぐりぬけていた。
しかしさらなる嵐は押し寄せる。
不況による広告の減退――これは厳しい。と、思われる。
雑誌の売上金額より、広告売上のほうが大きいのだろうから。

さすがのハッピーも、何か手を打とうと動き出していた・・・・・・

Vol.14

インターネット時代

ハッピーリポートの使い方

ハートハッピーネット内にできたハッピーリポートは、単なる日記やレシピではなかった。
――ハッピーにとっては。

たとえば例の巨大お料理サイトでもキャンペーンというか、何かのお祭りがあるように、ときどきイベントのようなことをやっていた。

例の巨大お料理サイトでは、「このメーカーのこの商品を使ったレシピを募集」みたいなことがあるらしい。
そこにレシピが大量に集まれば、少なくともその人たちは、その商品を買ったわけだ。
さらに、その人たちの記事を見た人たちが作るかもしれない。そのときまた商品が売れる。

これによって巨大お料理サイトは、どういうふうに収益を得ているのか知らないが、何もないわけはない。
投稿する人たちだって、それが宣伝まじりだと分かっているだろうけど、それはそれでいいのだ。
グランプリになったら特典がもらえたり、そのメーカーの商品がもらえたりするし。

ハッピーリポートはそういう露骨な形は少なかったけれど、多少企業とつながるようなイベントが用意されていた。

それにハッピーリポートに投稿された記事の中から、あるテーマを選んでハッピーの刊行物の誌面に載せるようなこともあった。
それは企業は関係ない。ネットと紙媒体の連動ということだ。

雑誌を売っていればそれだけでいい、という時代は過ぎてしまった。
多角的にハートハッピーネットを使っていかなくてはならない。

わたしはどういう形の計画があるのか、もちろんほとんど知らない。
でもそういう目で見ていると、「あ、また新しいことを始めたんだな」と思うことがよくあった・・・・・・

サクラの役目

ハートハッピーネットに新しくできたハッピーリポート。
自分の夕食の食卓やら、レシピやらを投稿できる。

初期の頃は、いろいろな人がこのハッピーリポートに参加していた。

ハートハッピーネットスタッフの人たち。これは盛り上げるため&動作確認。
この人たちには二種類あった。
「ハートハッピーネットスタッフです」と言ってやっている人たちと、一般の人のようにやっている人たち。

システム会社のハッピー担当チームの人、何人か。
これは完全に動作確認。
しばらくはやってみよう、という感じで、定期的に投稿していた。
料理とかお菓子作りとかしなきゃならないから、料理苦手な人は大変だろうな。

品川さんもやっていた。たぶん、いろいろな確認のため。

当時、品川さんの隣の席だったわたしは、品川さんに教えてもらってその存在を知った。
わたしの「身内ぶり」なんてその程度のものだ。
新しくなったハートハッピーネットもろくに見たことがなく、ハッピーリポートなんて知りもしない。

でも品川さんがやっているのを見ていたら、ちょっと自分もやってみたくなった。

どうやって登録するのだろう? ――ふんふん、なるほど。
どうやって投稿するのだろう? ――ああ、こうやるんだ。

それでしばらく投稿し続けた。

わたしはほぼ完全に一ユーザーとして楽しんだ。
ハッピーの人たちは、お洒落な店や流行や情報や、そういうセンスみたいなものには自負があるけど、わたしは持てない。
完全にユーザー寄りだ。
――というか、ここに投稿してくる普通の人たちの料理上手や写真上手にも、全然かなわない。
完全にユーザー未満だ。

だから楽しかった。
普通に使って、普通によく見る人をお気に入り登録し、普通にコメントした。

サクラっていうより単なるユーザーだったけど、この会社で働いてなければやらなかったろう。
そういう意味ではちょっと特別だったかな・・・・・・

ハッピーリポート

料理雑誌のサイトではどこでもやっている――例の巨大お料理サイトに対抗して、作った写真を載せるというやつ。
新しくなったハートハッピーネットでも始まった。

サイト内に自分のページを持てる。
そこに自分のご自慢のレシピを投稿することもできる。
ハッピーライフやその他ハッピーの刊行物の料理を作って、その写真を投稿することもできる。
ハッピーリポートユーザー同士、コメントをつけあったりできる。
「GoodJob!」ボタンをクリックして、「ナイス!」という気持ちだけ伝えることもできる。

なるほどねぇ。

確かにこれを始めた人は、常にハッピーハートネットを見るわけだ。
自分のところにログインするにも、トップページはどうしても表示されるわけだから。

そのときに「あら、これは?」って何かを発見するかもしれない。
――ハッピー刊行物のお知らせとか、スポンサー企業のプレゼント応募とか、その他いろいろ。
そういうところをクリックしなくても、アクセス数にはなるに違いない。

ハッピーを辞めた後、ある女性向けインターネットサイトを運営する会社に入った足立さんが言っていた。
「何しろネットサイトで重要なのはPV数だから!」
――PVって何?とは聞かなかったが、プレビュー数と思われる。

いろいろと気を惹くコンテンツを作っただけではなく、こうして参加型にして稼ごうというわけね?

時代だなぁ、と思った。
見てみれば、どこも同じようなことをやっている。

いろいろな形でアプローチしていくものだな、と思った・・・・・・

業務内容とシステム設計のすりあわせ

アンケートシステムの変更に当たっても、当然現場とのすり合わせがあった。
現場とは――まさに品川さんの隣に座っている読者ホットラインたちである。

目黒さんも新しいことは好きだ。
全体には関わっていなかったが、現場責任者としてずいぶんSEさんと話し合っていた。

目黒さんとしては、わたしたち下っ端の意見も反映させようと言っていた。
「やっぱり実際に使うのはあなたたちだから。ねっ」

「使う人間に意見を出させたほうが、効率のよいものができあがる」という考えからなのか、「現場のことを思いやる上司」のイメージが心地よかったのか、半々だったのか――
周囲はいろいろな意見を言っていたが、目黒さん自身は純粋に現場のことを考えたつもりだ。

このすり合わせには、主に当時いた日野さんとわたしが関わった。
日野さんはアンケート画面を作成し、集計する業務を代表して。
わたしは入力する業務を代表して。

まず、どのようなやり方をしているか、現在の状況をSEさんに説明。
SEさんは「今後はこういうものになる予定である」と説明。
「ここはこうなっていないと困る」というのを目黒さんとSEさんに説明。

当然、わたしたちには予算のことなど分からないから、目黒さんを通さなければならない。

目黒さん自身は「手間よりもホスピタリティ」の人で、手間がかかることはあまり気にならない。
だから気をつけていないと、とんでもない決定を下してしまいそうで、ヒヤヒヤした。
――わたしは目黒さんと近く仕事をすることがないので、これまで経験したことのない気持ちだった。

「今のところは、アンケート許諾がYESだったら代行して仮登録、NOだったら登録なしで入力」
「今までに登録した人は検索すると出てくるので、もう一度登録する必要なし」
SEさんは、今後は少し変わるという。
「仮登録したデータというのは、ある一定期間しか保存されない」
「次のときに検索しようとしても、データはない。だから毎回新規登録」

ええっ!! それは時間がかかる!

でも目黒さんは平気な顔をしている。
「じゃあ、毎回全員、新規登録すればいいわね」

いや、そんな! それは時間がかかりすぎますって!!
それに次のときには消えているデータを毎回何百と登録するのって、気が滅入りますよ!

最終的には「メールアドレスのない人は仮登録もしない」ということになったので、むしろ楽になったが、一時はどうなることかと思った。
「なんてことを言うんだ、この人は!!」とショックを受けた。

目黒さん、大物すぎる・・・・・・

品川さんの活躍

いろいろな部分でシステムの変更というのは関わってくる。
細かい部分は、使っている現場の責任者とSEさんとで詰めることになっていたが、ハッピー全体としての窓口係が必要だ。
もちろん、下っ端にはできない仕事だ。

で、品川さんがその役に就いた。

――そういえば、かつて品川さんの前にいた町田さんも、経営企画にいる当時、「外国で出版することになったハッピーの刊行物」を取り仕切っていた。
「あれ、この仕事、永続的じゃないんだよな、どこに頼もうかな」となったとき白羽の矢が立つのが、どうもこの部署なのだろうか。

品川さんは忙しくなり、とても生き生きとしていた。
もともと忙しい部署から移ってきて、そういう意味では慣れなくて大変だったと思う。
こういう忙しいほうが向いている人なのである。

細かい部分は現場と相談すると言っても、最終的な窓口は品川さんだ。
いろいろな人が入れ替わり立ち替わりやってきて、品川さんに相談する。
SEさんたちが毎日のようにやってきては、品川さんと打ち合わせする。
チーム全員がぞろぞろとやってきて、社内を横切って会議室に入っていくのも何度も見た。
そのときも品川さんは音頭をとる。

そして、これまでになかった新しいシステムも入れることになっていた。
よく分からないが、バックナンバーや料理や家事などが一覧検索できるというすぐれものらしい。

これは今までの業務があったわけではないので、現場とのすりあわせはない。
一から作るわけだが、その相談はすべて品川さんが相手をすることになっていた。

だから大変である。
そのシステムを使いそうな部署には、希望を聞く。
なるべくそれを盛り込んだシステムにする。
でも予算もあるから、予算がかかりそうな内容については、もう一度担当部署と業務内容を検討する。

忙しそうだったけど、品川さんは生き生きしていたし、楽しそうでさえあった。

やっぱり忙しいほうが合ってる人なんだよなぁ・・・・・・

ハートハッピーネット、リニューアル

時代はネットの時代になっていた。

インターネットは携帯でもできるし、もはや当たり前。
パソコンに全く触ったことがないという人の割合は激減。限りなくゼロに近し。

そんな時代を反映して、ハッピーライフのサイト「ハートハッピーネット」もリニューアルすることになった。

いずこも横並びという感じではあるが、ハッピーも同じようなリニューアルだ。

明るく情報盛りだくさんのトップページ。
最新号や新刊ムック本のご紹介バナーが脇のほうにあって。
女性向けっぽいコラムへのリンクバナーがあって。(料理家とか手芸家とかが書いてたりする。)
通販なんかもそこから申し込めて、バックナンバーも買えちゃう。
動画で作り方を紹介するコーナーなんかもある。
編集部のブログがあったり、ハッピーライフ以外の編集部のブログもあったりする。

それから読者が会員登録すると、このサイト内に自分のページを持てる仕組み。
これもたとえばライバル誌「エンジョイ生活」も同じようなものがあるし、どこでもやっている。
そこで自分の料理やら、「ハッピーライフの料理を作ったよ」というレポートも上げられる。

会員システムの改変と、ハートハッピーネットの充実に伴い、サイト内でのイベントも充実させる。
たとえば「この調味料を使ったおいしいレシピ大募集!」みたいな。
そういった形で、何か今後の広告やスポンサードにつなげられないか、というのがハッピーの考えだった。
――何しろ活字離れが騒がれていた時代で、廃刊になる雑誌も増えていたから、生き残りをかけないといけない。

どうも読者層が雑誌大好きらしく、こういう系統の雑誌はどこものんびりして見えた。
インターネットで調べてみると、どこも部数は落ちているのだけど、まだ大丈夫そう。
以前と比べて厳しくはなっているだろうけど、切羽詰まったところまではいってなさそうな――

いや、あくまで勝手な想像だけど。

そんなわけで、サイトリニューアルは、かなり力を入れて行われた・・・・・・

アンケートシステムの変更

システム会社が変わる。
それに伴って、いろいろな方面で業務システムの使い方に変更がある。

そんな中、わたしに関係があるのはアンケートシステムのみ。
正確には、アンケート画面を作るソフトは現行のまま。
会員システムが変更されるのだった。

つまりアンケートの回答部分入力の際はこれまでと同じ。
その前の段階で、今後のアンケート許諾YESの人を仮登録する部分が変わる。

わたし個人にとって良かった点は2つ。

面倒な仮登録をする人数が劇的に減ったこと。
今までは「YES」と答えた人は仮登録だったが、今度は「YESかつメールアドレスがある人」のみ。
このため、登録人数は以前より激減、5分の1、6分の1となった。

これは大変嬉しい変化だった。
特に第一の職場が忙しかった年は、この作業時間の短縮のおかげで乗り切れたと言っても過言ではない。

良かった点もうひとつ。
会員システムに仮登録する際、郵便番号を入れてボタンを押すと住所が出るようになった。

今までは、言語バーの人名・地名辞書を使うしかなかった。
これだと合併や郵便番号変更などの最新情報がないので、出なかったり古い地名に変更されたりする。

これもなかなか有難かった。

わたしにとって悪い点は。
既に登録済みの人の検索が使いにくいこと。

結局、検索せずに常に新規登録していた。
全部の項目を入力しなければならないので、面倒。
でも検索より早かったし、仮登録データは定期的に廃棄されるはずだったから重複もしない。

やり方が変わって慣れるまでは面倒だったが、慣れたらなかなか使いやすくなった・・・・・・

システムの変更

読者ホットラインが第二期から第三期へと変わっていった間、ハッピーも少しずつ変わっていった。
変化はまだ第二期のうちに始まった。

「今度システムを担当している会社を変えるのよ」
「そうなんですか」

漠然とシステムと言われても、いったいどんなところまでがシステムなのか、分からない。

普通に「システム」と言われると、この会社の場合は、やり方とか方式とかそういう意味ではなくて、IT用語だった。
じゃあ、その「システム」には、ブラウザを起動するとホームとして開く社内サイトは、含まれるのか?
そこには、社員の行動予定表ページへのリンクもあるし、ニュースヘッドライン的に総務部のお知らせが載っているし、クリックすると別ページに飛ぶし、一種のサイトだ。
経理部が使っている(であろう)経理システムは?
販売部が使っている(かもしれない)在庫などを管理するような何らかのシステムは?
読者向けのサイトであるハッピーnetは?

どこからどこまでを変更したのか、わたしには分からない。

しかし大がかりな変更であるのは確実だった。
新しく依頼されるシステム会社のチームが、だいぶ前から何度も打ち合わせに来ていた。

どういう事情でこの会社に変わることになったのか、分からない。

純粋にサービスがいいのか、技量が高いのか、できることが多いのか、料金が安いのか。
それとも何らかの事情があったのか――どんな業界でも多少「でもあそこを使わないと」みたいな裏事情があるだろうから。
このシステム会社は雑誌や出版の業界と関わりのある大企業と関係があったようなので、妙な邪推もわくってものだ。

でも、純粋に安かったのかな・・・・・・

やっぱり末端

今さら言うまでもないけど、わたしは末端の人員だ。
やってる仕事も入力のみという雑用係ぶり。
会社直雇いのアルバイトさんより下の立場。

目黒さんは人からルーズと言われることもあるが、派遣とアルバイトの区別は正しくつけていた。
派遣は即戦力。そして専門職。
たとえば第三期の渋谷さんは、元コールセンターで電話はプロ。
以前にもコールセンター経験ありのアルバイト世田谷さんがいたが、彼女より柔軟に対応できる。

わたしは入力のプロ。
わたしより早く入力できる人はいるだろうが、「飽きずにやる」「日本語修正が(まあまあ)上手」で、プロの名をいただいていた。

プロとして雇っているのであり、教え育てるのは自分たちのすることでない。
そう考えていた。
確かに正しい。

だからわたしは業務の幅は広がらない。
見聞も限られ、知らないことだらけ。

もしこれを荒川さんや日野さんが読んだら、間違いを指摘したくなるのじゃないだろうか。

偉い人たちのいろいろな思惑など、実は的外れな想像をしているのじゃないだろうか。

大田さんと品川さんの話を洩れ聞いたりすると、その気持ちが強くなる。

「港さんの発表の内容は決まったの?」
「まだらしいんですよ。××のほうに今度聞いてくるって言ってました」

――へえ、会社全体の方向性に関わることを××と相談するものなんですか。

「新雑誌の表紙案出ましたね」
「あ、ホント。こんな感じにするんだ」

――新雑誌部の創設って、単に研究するだけかと思ったら、具体的な話だったんですねえ。

わたしには測り知れないことがたくさんあるんだろうなあ。

というわけで皆さん、これは下っ端の見聞記にすぎません。
話半分に聞いてくださいね・・・・・・
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