FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

生徒さんの意識の変化

昔はインストラクターなんだから何でも知っていて当然と思われていた。

「どのメーカーのパソコンが一番いいですか?」
「今度パソコンを買おうと思っているんですけどね、何を買ったらいいですか?」
なんて質問はよくされた。
――そういうのは家電量販店の店員さんのほうがよく知ってそうですよ。

わたしなんて、パソコンを買うのも設定するのも夫まかせ。
dellだとかhpだとか、ソフトもあまり入ってないものを買うので、いまどきの家庭用パソコンはよく分からない。
でもそんなこと自慢にならないから、知ってるふりして「そうですねぇ」なんて言わなきゃならない。

「なんだかプログラムっていうのは難しいそうですねぇ。JAVAってどんなものなんですか?」
「こういうことをやるにはどういうプログラムを作ったらいいんですか?」
「DTP用ソフト(とかCADとか)の使い方を教えてください」
そんなことを聞いてくる人もいた。
――わたしも詳しくは知りませんよ。

OAインストラクターはプログラマーじゃないし、ちょっと勉強したくらいで複雑なプログラムなんてできない。
特殊なソフトは使う機会もないし、見る機会さえない。
一応「名前やだいたいのことは知ってますよ」風にするけれど、具体的に答えられるわけがない。

「インストラクター」と言うからには、コンピュータのことは何でも知っていて当然、と思われた。
あんなに幅広いコンピュータの世界、何でも知っているなんて無理だ。

今はそんなことは全然ない。

教わる側もコンピュータやパソコンに慣れていて、自宅でも会社でも使っている人が多い。
もちろん中には使ったことがないという人もいるけれど、コンピュータ知識も以前より広く知られている。

だから「どのパソコンがいいか?」と聞かれたとしても、相手も「参考程度にこの人の考えを聞いてみよう」と思っている。

「そんなことがWordだのExcelだのを教えている人に分かるわけがない」と思われて、難しい質問も聞かれなくなった。
聞かれたとしても「もしかして知ってます?」程度であり、「そういう方面には詳しくなくて」と言っても驚かれなくなった。

そう、「知らない」なんて言おうものなら、「インストラクターなのに!?」という目で見られる時代もあったのだ。

今はあるべき状態になった。
それはインストラクターのステイタスが下がったということで、その点を悲しみ憂える人もいるだろう。
インストラクターの良い時代を知っているベテランの先生方は、ちょっと寂しい思いをしているかも。

でもわたしはホッとしたかな・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


スポンサーサイト

現役にこだわりたい

わたしは現役にこだわりたいという気持ちを持っている。

――仕事してるんだから、現役じゃないの?
誰が現役じゃないっていうの?

と、自分で自分にツッコむときもある。

わたしが思う現役というのは、単にわたしのホームグラウンドである職業訓練所での話だ。
ホームでしか仕事をしないようにはならないようにしよう、と思うのだ。

パソコンスクール、大学や専門学校の情報授業、ずっとこの職場で働くという人はたくさんいる。
その職場の授業スタイルや雰囲気があって、それに合わせているのだから、ずっと同じ職場であってもいいと思う。
むしろ、他に手を伸ばして、その場所の空気に染まりきれないのはよくないかもしれない。

だから、どんな場合でも一個所に留まらずに働くべきだ、とは言わない。

わたしがホームとする場所は、少し特殊だから、自分に対して戒めをと思っているのだ。

第一に大切なのは障害のある受講生とうまくやっていけることだったり、人柄だったりする。
知識があるかとか、どれだけ上手に教えられるかは、その次の問題だ。

また、インストラクターを専門的に派遣している会社なら、営業やコーディネーターなどの社員もインストラクター上がり。
こちらを見る目もしっかりしていて、ある意味、厳しい。
けれど、わたしがホームとするところは、事務員さんが担当をしている。
パソコンに詳しい事務員さんが入ってくることもあるけれど、それほど詳しくない事務員さんのときもある。

あまり詳しくない担当事務員さんにとっては、100の力がある先生も60の力がある先生も、どちらも知識があるように見える。
50点さえ越していれば、あとは違いが分からない、ということもある。

そうすると、怠け者のわたしは70程度に頑張れればいい、となるかもしれない。

自分を磨くために、居心地のいい慣れた場所を離れて、ときどきは仕事をしてみよう。
そう考えて、機会があったらいろいろな仕事を受けるようにしてきた。
一般事務の派遣のほうが条件がいいときも、できるだけインストラクターの仕事を優先してきた。

それを今後どこまで続けられるか分からないが、できるだけ続けていきたいと思うのだ。
それがわたしにとっての、「現役」である・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


体調管理も仕事のうち

もちろんどんな仕事でも、体調管理も仕事のうちだ。
でも最悪の場合は、「大変申し訳ありません」と言って病欠することもあるだろう。
もちろん、仕事によって「病欠なんてあり得ない」っていう仕事もあるだろうけど。

講習会インストラクターをしていたら、病欠はあり得ない。
厳密には「あり得る」けれど、「あり得ない」というくらいの気持ちが必要である。

講習会は待ったなし。
今日になって熱が出たから急に休みました、なんていうのは間に合わない。
時間になったら始めるものだし、代わりがそこにいるわけではないのだ。

「今日休みます」という連絡があって、それから代役を探すのでは、派遣会社もたぶん無理だ。
パソコンスクールを持っている会社なら、スクール講師を急遽行かせることができるかもしれない。
でもスクールにはスクールの授業があるから、それも難しいかもしれない。

とにかく、講習会というのは穴をあけないものだ。

風邪はひきそうになったところで止める。
具合が悪くなったら翌朝までには治す。
当日具合が悪くても、終了時間までそれを見せない。

体調もそうだし、喉もそうだ。
インストラクターは声を出すことが多いから、喉を嗄らして仕事に行くのはまずい。
自分もつらいし、受講者さんも聞きづらい。

わたしは風邪をひくと咳が長引く体質なので、風邪をひかないようにしている。

――そう言うと、「どうやって風邪をひかずにいられるの?」と聞かれることがある。
自分が緊張感を持っているときは、風邪もあまりひかない。
ひきそうだな、と感じたら、その時点で対処する。(暖かくするとか、早く寝るとか)
風邪をひいている人に近寄らないようにもする。

でも結局、もともと体が頑丈なんだと思う。

つまり、虚弱な人は講習会インストラクターには向かないと思う・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


分かりやすさ

「分かりやすさ」とひと口に言っても、誰にとっても分かりやすいなんて、あまりないと思うのだ。
目指すべきは「多くの人にとって分かりやすい」「ほとんどの人にとって分かりやすい」こと。
100%になろうと思うなんて、ちょっとおこがましいかな、という気がする。

どんなやり方が分かりやすいかは、人によって違いもあるだろう。
誰かが「この人は分かりやすい」と言う先生が、他の人にとってもいいとは限らない。
「自分はあの人のほうが分かりやすいなぁ」ということがある。

いろいろな人が集まっているところで、いかにしてその中の最大多数に最大分かりやすく講習できたか。
それが目指すべき目標だと思う。

そして次のステップは、いかにして集まっている人に合わせるかだと思う。

わたしがホームグラウンドとしている職業訓練所を例にとろう。

プログラムやネットワークなどを学びに来た科の受講生さんたちに、WordやExcelの基礎を教えるとしたら?

「分かりやすく」丁寧にゆっくり進めて、全員が遅れないようにボタンの上に10秒もマウスを置いてから「ではクリックしてください」なんてやっていたら、退屈してしまう。
退屈して眠くなったりぼんやりしたりして、結局、聞かなくなる。かもしれない。
ちょっとぐらい遅れても自分で挽回できる人たちなのだから、早く進んでいいのだ。

また、悟りが早い人たちに言わずもがなの説明を長々しても、やっぱり退屈が増すだけだ。
「これはこういうことです。こういう理由でこうなります」と言えば分かる。

でももし「今回はあまりパソコンの得意な人はいませんよ」という回だったら?

「これはこういうことです。こういう理由でこうなります」というのも、順を追ってゆっくり説明しないと分からない。ことが多い。
できればその後で、「実際にやってみましょう」と正しいやり方と間違ったやり方でやってみるとか、体験を入れたほうがいい。

高次脳障害のある人は、覚えるのに時間がかかったり、覚えても忘れてしまったりする。
そういう人が多く集まっていたら?

これまでパソコンを使ったことがないという人は今はあまりいないから、自分のやり方というのがある。
だから一応言う。「今はボタンを使いましたが、右クリックでもできます。また、こちらのボタンを使ってもできます」
それからすぐに言う。「どれでもいいので、自分が使いやすい方法をひとつだけ、覚えていただければ結構です」
練習問題をしてもらって、自分が教室を回っているとき、誰かがつまずいていたら「このボタンです」と通常は言ってしまう。
でももし高次脳障害の人だったら、「いつも何を使ってますか? 右クリック?」と軽く訊いてみる。
いつも使っているやり方だけを反復したほうが覚えられるからだ。

知的障害のクラスでは、前に通っていた養護学校などの方針か、右クリックを使う人が多い。
たぶん、あちこちにあるボタンを覚えるより、「なんでも右クリック」のほうが一貫していて覚えやすいという配慮なのだろうと思う。

聴覚障害の人が多かったら?
聴覚障害の人の中には、長い文章を読むのが得意でない人もいて、視覚的にものごとを捉えるとも言われている。

聴覚障害の人用に説明を入力するけれど、喋り言葉のように長く入力するだけだと、分かりにくい。
文章を読むのが得意でない人は、退屈してしまう。
そういう人は視覚的に捉えるのに長けているから、テキストの図だけを見てさっさと自分で進めてしまう。
そうならないために、説明を入力するときは短い文章、箇条書きなど、工夫がいる。

しかし逆に、文章が苦手でないという聴覚障害の人は、全部を知りたいと感じたりする。
要約されているより、健常者が聴いているのと全く同じものを文章にしてほしい、と思う。
それが情報保証というものだ。

それはもちろん、それ以外でも同じことで、受講する人の層によって、内容は同じでもやり方を変えていく。

わたしが見てきたベテランの先生方は、自分のやり方が確立していた。
そして、さらに受講する人たちに合わせてバリエーションを展開することができた。

少しずつわたしも、それに近づいてきているけれど、なかなか難しい。
そうこうしているうちにどんどん年をとって、新しい知識を覚えるほうが覚束なくなってきた・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


本当のところ

ときどき、言ってくれる人がいる。
または、アンケートに書いてくれる人がいる。

「先生は教え方が上手ですね。分かりやすい」
「講師の教え方も丁寧で分かりやすかった」

ありがたいと思う。嬉しいと思う。
ときどきは自分でも、「この部分はよく説明できているんじゃないかな」と考えたりする。

でも自分に自信を持ち切れないわたしは、100%の思いで「わたしって分かりやすいんだ!」とは思えない。

なんといっても、毎回多くの人がわたしを取り囲んで「とっても分かりやすかった~!!」と言ってくれるわけではない。
ときどき、そういう人が現れるだけだから、他の人がどう思っているか分からない。

それからもうひとつ、教え方というのは合う・合わないがあるので、その人にたまたま合っていただけかもしれない。
100人いたら80人90人が「分かりやすい」と思う人が、本当に分かりやすい講師なんだと思うし。
わたしのやり方が合っている人が、いったい10人なんだか70人なんだか、その辺は知り得ない。

そして重要なことが、もうひとつ。
講師の評価には、絶対に人柄が含まれているのだ。

「この人、好きだな」と思うと、評価は甘くなる。と、思う。

まぁ――すごくいい人だと思っても、どうしても「分かりやすかった」とは言えないレベルって場合もあるだろうけど。

サービス業の人がお客さまには最高の自分を見せようとするように、営業職の人が取引相手には最高の自分を見せようとするように、わたしも受講する人に「よりよいわたし」を見せようとする。
もちろんそれは、あくまでわたし。「よりよい」わたしということであって、嘘や演技ではない。

だけどやっぱり、家族に見せるような地のままの自分じゃないし、友達に見せるよりちょっといい人のわたしかな。

もしかしたら「いい人だったな」と思ってもらえて、そのために講習のやり方そのものへの評価も上がったかもしれない。
「90点くらいに分かりやすい」という評価は、実は人柄点も混じっていて、人柄点と厳密に分けると「80点くらいに分かりやすい」程度かもしれない。
「70点くらい」かも。

この仕事は一種のサービス業だ。
お客さまが気持ちよく来て、気持ちよく帰れることが、サービス業の大命題だ。
気持ちよく講習が進んだことの中には、雰囲気や講師の人柄や同席した受講者仲間も含まれると思うので、人柄が評価に混じることに否定的な気持ちはない。
楽しかったと感じてもらえるように教室全体の雰囲気を引っ張っていくのも、インストラクター(特にメイン)の役割だと考えている。
だから人柄評価もありがたいことだし、嬉しいことだし、わたしにとって大切なことだ。

でもいつでも忘れてはならないと思うのだ。
「分かりやすい」ことは第一の命題で、そして「分かりやすい」と言われても鵜呑みにしてはいけないことを。
「わたしって分かりやすいんだー」と慢心せずに、常に自分を省みなければならないことを・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


インターネットの有難さ

前回語った単語の読み方でも、インターネットは大活躍。
それ以外にも、いろいろなことをインターネットで調べることができる。

インストラクターと言ったって、プロ養成所のようなものがあって、そこで皆が習ってくるわけじゃない。
現場で少しずつ成長していく場合が多い。
(MicrosoftのMOTなど、機能やボタン配置の完璧な知識を求められる資格を持っている人は、最初からある程度の高いレベルを持っているかもしれないが。)

テキストはじっくりと見た。
参考書などもいくつかは持っている。

講習会で深~~い知識を求められることはあまりないから、その程度で普段は充分だ。
予想外の質問が出たとき初めて、自分の知識が問われることになる。
――ちょっとはずれるけれど、だからやはりサブの経験を積んでおくことは大切だし、いいことだ。
予想外の質問を体験できる。そしてメイン講師が答えているのを覚えることができる。
もし自分に聞かれても、分からなかったらサブはメインにお願いすればいいのだから。

わたしにとって最も知識を求められる仕事は、やはり企業研修や会社員が集まる講習会だ。
仕事で使っている人はやりたいことがはっきりしているし、基礎的なことでできるものなら自分でやっている。

それから「そういえば普段から疑問に思っていたんだけど」ということを聞かれたりするのも、予想外なことがある。
わたしはあまり深く考えずに自然に使ってしまっていて、疑問に思うこともないからだ。
――これはインストラクターとしては致命的な欠点かもしれない。
最近は自分の目線とは別に、そういう目線で見るようになった。「これはもしかして聞かれるかも」

後者の場合、たとえばこんなものがあった。
「図を挿入すると、ここに変なマークが出てくるじゃないですか(碇のマーク=アンカーのこと)。これは何のためのものですか?」
「①②って⑳までしかないですよね。21以降を○で囲むにはどうしたらいいんですか?」

前者の質問は、恥ずかしながら「あ、そういえばそうよね!」と思った。
ついでに言い訳しておくと、一緒に組んでいた先生も知らず、二人でインターネットで調べた。
インターネット様様だ。
「図は文字とは違って独立しているように見えるけれど、実際のところどこかの段落に固定されている。その印である。」

後者の質問は、たまたま「インストラクターが受けた質問を書く」というサイトを数日前に見ていて、答えることができた。
ちょっと違うけれど、「囲い文字をすると1文字しか囲えないが、どうしても2文字囲いたいという方がいらっしゃいます」という項だった。
どうしても囲いたい、なんてあるかな~? わたしの担当する仕事って、そんな深いところまで突っ込む人いないもんなぁ~?
などと思いながら見ていた。
だから、「21以降を○で囲んだ文字というのはないので、外字エディタで作るなどするしかない。たとえばこうすれば21も○で囲めるけれど、○の大きさが20までと異なってしまう」と答えることができた。

またまたちょっとはずれてしまうけれど、「できないです、これしかないんですよ」で納得してもらえない場合は多い。
どうせ使えないのだから、無理に○で囲むやり方の説明はいらないけれど、これを入れると納得してもらえるのだ。
自分の知らない知識や気づかなかったやり方を見ると、なんだかちゃんと説明された気がするものらしい。これはわたしの経験則。

(わたしにとっては)難しい内容のことを聞かれても、ちょっと時間をもらってインターネットで調べると分かる。
単純なことから、難しいことまで、皆さん実にまめにネットにあげてくださっているので、大変有難い。

「え? そんな質問を?」という動揺を顔に出さず、「分かりました。じゃ、ちょっと(他のパソコンで)確認してきますので、少しお待ちいただけますか?」と言ってささっと検索できれば、相手に気づかれずに答えることもできる。
質問と自分の能力を見極める力は必要で、「少し」待てと言って長い時間かかってはダメだけど。
「これはちょっとすぐ分からないな」という質問だったら、「お調べしますので、お時間をいただけますか?」と言ってしまうほうがよい。
少なくとも質問の内容と自分の能力を秤にかけて、客観的に判断できるだけの技量は必要だ。

インターネットに載っていないこともある。
わたしが調べた時点ではフォント名「Batang」の正しい読み方は探せなかった。(疑問に思う人は多かったようで、3年後くらいにまた検索したら載っていた。)
それに、あるひとつの「こうやりたい」という質問に対して、いろいろな人がいろいろな関数式(またはVBAコード)で答えていて、どれがいいのか判別する能力が必要なこともある。

でもたいていのことは分かる。
インターネットでいろいろな情報が公開されているおかげで、わたしでも仕事を続けていける。
「Excel講座をCalcという表計算のフリーソフトで受けたい」というような恐ろしい状況も、インターネットで乗り切ることができた。

ただ、つきつめていくと「あんたいらないじゃん」となってしまうのが、インターネットで何でも分かることの怖さだ。
講習に来なくても、自分でネットで調べればいいんだし・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


読み方の落とし穴

たとえば知っていて使えるものでも、人前で説明をするとなると「あれ?」と思うことがある。

たとえば、フォントの読み方。
テキストにはこうある。「フォント▼をクリックして、一覧からCourierを選択します。」

講習では、わたしはこれを声に出す。
「フォントの下向き三角をクリックして、一覧からクーリエを選択します。」
もっと現場風に言うと、「今、MS明朝と書いてあるところの隣の下向き三角をクリックして、一覧からクーリエ、C、O、U、R、I、E、Rと書いてあるところをクリックします。」

Impactなんてフォントだったら問題ないけれど、読みが分かりにくいものはある。

フォローに入ったとき、教育実習生の若者が「MSみょうちょう」と言っているのを聞いたこともある。
――自分もそういうことがあるかもしれない。

わたしはExcelを使い始めた頃、COUNTAというのは「カウンタ」となんとなく読んでいた。
人が「カウントエー」と言っているのを聞いて、恥ずかしかった。

インターネットで、「DATEDIF(デイトディフ)を、前のパソコンスクールで“デイテッドイフ”と教わってくる生徒さんが結構多い」というのを読んだこともある。
意味が分かっていればそんな読み間違いはしない、とその記事を書いた人はきっぱり言っていたが、気持ちは分かる。
わたしも意味が分からず間違うクチだ。

2010が出たとき、相違点を見ていて「関数ではRANKがなくなり、RANK・EQができた。使い方はRANKと同じ」というのを見た。
それはいいけど、なんて読むの? と慌てた。
「えー、2010からは、ランク関数はランク――」
何? ランクイーキューになりました、でいいのか?

慌てて検索。
今やインターネットには何でも載っていて、大変ありがたい。

なるほど、ランクイコールか。

インターネットでVBAの読み方というのを見ていたら、「Strなど、どう読むか分からない関数名が結構あります」というのがあった。
絶対こう読むという決まりはないから、好きに読めばいいが、基本的には英語からきているものなので、英語読みで間違いはないだろう、とある。

「うちの会社では、スター関数と言っています」という人がいた。
これは、文字列にするための関数だから、Stringの略だろう。
つまり読むならストリング関数だ。

でも別に日常「スター関数」と呼んだからって、大きな問題はないかもしれない。
使えればいいのだから。

でもわたしが講習会で「スター関数を使います」なんて言ったら、問題だろう。

この辺は、使うための知識とは別のものだ。
そりゃ読めたほうが便利だけど、読めなくても使える。
または適当な読み方でも使える。

だけど講習をするとなったら、読み方をチェックしておかないと、いらぬ恥をかくことになる・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


講習スタイル

人それぞれ、講習のスタイルっていうものがある。

偉大なエンターテナーとして、どっとわくような講習会をする人もいる。
まあ、そんなものすごいスタイルは別格として、普通の講師もそれぞれのスタイルがある。

わたしはサブだったらなるべく後ろにいて、全員の画面をチェックしていることを好む。
人によっては、見回り型のサブ法もある。教室内の通路をうろうろ歩くのだ。
椅子に座っているタイプもある。わたしも座ってもよさそうかな、というときは座ることもある。

フォローするときは、受講者さんの机の横に、プロポーズでもするみたいな格好でしゃがむ人もいる。
両膝をついて膝下は後ろに伸ばすような格好になる人もいる。
上からかがみこむ人もいる。
――これは会場による。
プロジェクタのやメイン講師への視線をさえぎらない位置が大切だからだ。

メインの場合は、ずっと前にいる人もいる。
自分に近い席の人は注意していて、すぐフォローする人もいる。
前に立ったら、一個所で講習する人もいる。
教壇に立ったり、プロジェクタを指したり、よく動く人もいる。

わたしはあまり落ち着きのないメインに見えるかもしれない。
「では、同じようにこことここも設定してください」
と言って、各自ちょっと操作をしてもらったりすると、すぐに教室内を見回りに行ってしまう。
前にいてもサブの方が「全員終わりましたよ」と合図を送ってくれるだろうけど、つい自分から出ていってしまう。

わたしは「同じように設定してください」とか「ここにも同じように数式を入れてみてください」とか、自分でやってもらうのが好きだ。
講師によっては、テキストに「***と***も同様に設定します」と書いてあっても、全員一緒にやる。

全員一緒にやるタイプの先生だったら、サブは楽だ。
各自でやってください、と言われると、サブは面倒だ。

それもあって、つい自分もちょろちょろとフォローや確認に回ってしまう。

何がいいっていうことはないと思う。
人それぞれで、それが個性だ。

そしてどんなインストラクターに当たるかは、受講者さんの運だ。
それにどんなインストラクターがいいかは、受講者さんの好みだ。

だから絶対に正しいスタイルというのはない・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


好みのやり方

人それぞれ好みのやり方というものがある。

何でもショートカットキーを使う人、何でも右クリックを使う人、絶対ボタンを使う人。
昔のバージョンにあった浮動ツールバーを必ず固定したい人、いつでも浮動にしておきたい人。
その他、実にさまざまに。

そこまで極端ではないけれど、講師にも好みのやり方というものがある。

もちろん普段ショートカットキーばかり使っているからといって、テキストでボタンを使っているのにすべてショートカットキーで講習するわけがない。
だけど、どことなく好みが出るのだ。

前回の記事で「教わったことなんて、結構忘れてしまう」と書いたが、ときには逆に最初に出会った人のやり方が身について抜けないということもある。

たとえば関数が出てくるレベルになると、先生によってポリシーがあることも多い。
「入力ミスをするので絶対に手入力はしないでください。ダイアログボックスを使いましょう」
と力説する先生。(これは昔の話だ。手入力でも、2007以降は候補が出てくるので間違えない。)
逆に「後からこんなふうにIF関数を付け加えるくらいなら、手入力してしまうほうが早いです」

「オートSUMのアイコンに用意されている関数なら、オートSUMをクリックして入れるのが早いです」
逆に「ここにはない関数もあるので、関数の挿入ダイアログボックスを使うやり方を、早いうちから覚えておきましょう」

その他、いろいろあるのである。

最初というのは吸収力があるので、一番最初に出会った講師のやり方に染まっていることは多い。
――ただし、それも最近は、そうでもなくなってきた。
パソコンを使う頻度が増えているので、いったん染まっても、自分にとってより便利なやり方があればすぐに改宗する人が多くなった。

わたしは特に、この「こういう方法がいいですよ」には敏感になった。
状況によって何がいいかは違う、ということをいつも思い知らされているからだ。

たとえば、高次脳障害があって覚えにくい人には、右クリックにやり方を絞る、とか。
でも障害を受ける前にボタンに慣れていたというなら、ボタンに統一する、とか。

手に麻痺がある人には、ショートカットキーは向かない。2つのキーを同時に押しにくいから。
逆に麻痺の種類によっては、微妙なマウスコントロールが難しいから、ショートカットキーのほうがいい場合もある。

「こうしたほうが断然ラクです」
という言葉を聞いたりしたときに、つい心の中で、「人によるな」とつぶやいてしまう。
これこれこういう人だったらやりにくい、なんて。

そういうわたしにも、やり方の好みや、覚え方のポリシーなどがあって、それに従った講習をしてしまう。
完全に排除することはできないのだ。
また、排除してしまったら、個性も何もなくなってしまう。
その個性がとても合う、良かった、という受講者さんだっているわけだから。

それに、「状況による」と考えるのも、わたしの好みにすぎないとも言える・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


間違って教えちゃうこと

インストラクターなら完全に正しいかというと、当然NOである。
人間だし、その上ピンからキリまでいるのである。
キリのインストラクターだったら、間違って教えてしまうことだって(予想以上に)あるだろう。

一緒に組んだ先生が「あ、違うな」ってことを言っているのに気づくこともあった。
Excelでシートとシートの間で集計をするというもの。
Shieet1~Sheet4までのC5の数値を、Sheet5のC5に合計する。

1.Sheet5のC5をクリック
2.オートSUMのアイコンをクリック
3.Sheet1のC5をクリック
4.Shiftを押しながらSheet4をクリック

そして、5.確定。
「この操作はEnterでは確定できないので、必ずオートSUMのアイコンをクリックして確定してください」

え、できるよ。

また別の先生が別の講習会で、こんなことを言っていた。
「離れたところにある小計を合計するには、カンマで区切ってSUM関数を入れるしかないですからねー」

え、できるよ。このシートなら。

そのときのサンプル表では、小計欄にはSUM関数が入っていた。
SUM関数が入っている小計欄のすぐ下に総計欄があるときは、総計欄にオートSUMでSUM関数を入れればいい。
列の上部にあるSUM関数のセルだけを、自動的に引数として認識する。

こういうのは意外とベテランの先生に多かったりする。
以前のバージョンでの注意点を、新しくなったバージョンでもそのまま継承しているのだ。

わたしはインストラクターになったのが遅かったので、新しいバージョンしか知らないから「え、できるけど」と思うのだ。
今となっては、わたしもバージョンを重ねてしまったので、同じミスを知らぬ間に犯しているかもしれない。

未熟だったり、「キリ」の先生だったりしても、当然間違って教えてしまうことはある。
そういう先生の場合は、間違って教える以外に、変な教え方をしてしまうこともある。

わたしが見た中で一番「え」と思ったのは、Excelの表に罫線を引く問題。
1行おきに点線を引いていきなさい、という問題だ。
格子線は既に引いてある表なので、1行おきに点線に変更する。
実線、点線、実線、点線、実線、点線・・・・・・実線、となるはず。

「これ、ひとつひとつ設定していかないとダメですか?
いっぺんにぱっとできる方法はありますか?」
「そうですねぇ・・・・・・」

サブインストラクターさんが迷っているのを見て、わたしがつい横から口を出す。
「いっぺんにぱっとはできないですね。
まず1ヵ所、点線にして、それから次の範囲を選択してF4キーで繰り返し、また次の範囲を選択してF4キーで繰り返し。
いっぺんに全部ではないけれど、これならひとつひとつ設定するよりは早いです。
または、最初の範囲を選択して、次の範囲をCtrlを押しながら選択して、また次もCtrlを押しながら選択して、全部選択してから下側を点線にする、とか。
これならいっぺんにできますけど、選択はやっぱりひとつひとつすることになります」
(実はデータが入っていなければ、2行分のセルを選択してオートフィルコピーすればいいが、テキストでやらせたいのはF4キーかCtrlキーだから。)

「ああ、そうですか~」
受講者さんのちょっとがっかりした顔を見て、サブインストラクターさん、何かもっといい方法を言ってあげようと思ったらしく――

「それか、まず全部選択して、いっぺんに点線に変えちゃうとか。
ちょっとやってみましょうか。
全部選択してください。
セルの書式設定で、点線にして、このボタンで内側の横線全部を点線にできます。
全部点線になりましたね。
それから、1行おきに実線に変えていけば――」

・・・・・・それ、手間、増えてる。

こういった間違って教えることが、大惨事を引き起こすかというと、そうでもない。

忘れられてしまうのである。

講習会でインストラクターが言ったことを、いちいち細かく覚えているだろうか?
結構、忘れてしまうものである。
ましてパソコン、趣味とは違うから使わないものは忘れていく。

ネットで、あるパソコン教室のオーナー講師が、「前のスクールでDATEDIF関数を間違って覚えてくる人が多い」と嘆いていたから、大惨事になることもあるのだろう。

わたし自身はいったいどんな間違いを教えていたか?
それは大惨事になるようなものだったか?

さすがに恥ずかしいので書けない・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


閑話休題 Access応用 あるエラー

Accessともなると、複雑なので、どこが違うせいでうまくいかないのか、分かりにくい。

Accessの1つのファイルの中には、テーブル、クエリ、フォーム、レポート・・・・・・などのオブジェクトがある。

フォームを作っていてうまくいかないというとき、原因がフォームにあるとは限らない。
もとにしたクエリに間違ったところがあるのかもしれない。
クエリを作っていて、うまくいかないとき、原因はクエリにあるとは限らない。
テーブルにテキストと違うデータが入力されているのかも。
逆に入力し忘れたデータがあるのかも。

Accessをちゃんと分かっていないと、なぜ今こんなふうにトラブっているのか、解決できない。

もっともっと同じテキストで何度も講習をしていれば、エラー経験値も上がる。
「そういえば前にもここでつまずいていた人がいたな」と引き出しの材料が増える。
しかし、悲しいかな、そこまでAccessの講習は多くない。

Accessの応用編、決して得意とは言えないAccess――というか、常にヒヤヒヤする講習。
自習形式でやっているので、わたしは皆さんの画面を見てまわっている。

ある人は、メインサブフォームを作って、さていよいよ入力をしてみよう、というところ。

ところが次に見たときも、まだ入力に手こずっている。

「何か問題がありました?」
「なんか、入力できないんですよ」

入力するとエラーが出る。

フォームを確認。間違いはなさそう。
元にしたクエリを確認。問題はなさそう。

「最初から作り直してみます」
それは面倒だろうと思ったが、本人が強く言うので、とりあえずそうしてもらう。

Accessの面倒なところは、このままフォームを削除してやり直しても、うまくいかないかもしれないことだ。
他のところも書き換わっている可能性があるからだ。
そのために「1章までの完成版」「2章までの完成版」と用意されているので、前の章の完成版から始めてもらう。

今度はうまくできたけれど、講師としては「さっきのはどこがいけなかったか」というのを説明しないわけにはいかないだろう。
ちょうど休憩時間になったので、休憩中に席を借りて見ることにする。

何が問題だったのか、ひとつひとつ可能性を切り離して考えてみよう。

――でも、わたしの知識レベルで分かるだろうか?
心の中に不安が湧きあがる。

「大丈夫。それほど難しいことはしていないのだから、必ず見つかる」
そう自分に言い聞かせていると、はるか昔に思えるクリーニング店員時代がよみがえってきた。

商品が見つからなくて店内を探すときの心構えだ。
「他のお客さんに間違って渡してしまったかも」と思いながら探すと、見つからない。
「絶対店の中にある」と思いながら探すと、見落とさない。
なぁんだ、こんなところにまぎれこんでたのか~、と見つかる。
もちろん、本当に間違って渡していたら見つからないけど、探すときは「ある」と確信して探す。

「わたしでも分かるところに必ず原因はある」
クリーニング時代を思い出して改めて決意すると、なんだか気持ちが楽になった。

まずフォームに原因があるかどうか。
それを確認するには・・・・・・
そうか。他のデータを入力してみればいいんだ。
何も入力できないなら、フォームが原因。
他のものなら入力できるなら、データが原因。
本当はもっといろいろあるかもしれないけれど、とりあえず自分に分かる範囲での判断をしてみる。

他のデータが入ったので、ということはデータの問題かとテーブルを見てみる。
理屈が分かっているというよりも、経験則。
今までの乏しい経験の中でも「項目名が違っているとダメ」とか「参照整合性が設定してあったら、主テーブルにないデータはダメ」なんてミスを見てきた。

デザインビューで開かずデータシートビューにしてみたら、「あれ?」
入力できないとエラーが出たものが入っている。

ということは?

受講者さんは途中まで入力して、中断した。
中断したからデータは入っていないと思ったが、入っていた。(Accessは上書きしなくても入っちゃう)
だから「同じ伝票NOを二重に入れることはできない(主キーが設定されているから)」とエラーになった。

なんだ、分かってみれば簡単なことだったー!!

しかしこの簡単なことも、「大丈夫、わたしは見つけられる」と自己暗示をかけなかったら解決できなかったかも。
華々しい職歴ではないけれど、わたしにとってクリーニング店時代の経験は、いろいろなところで出てくる原点である。

その当時はそうは思わなかったけれど、年をとった今、気づくことが多くなった・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


閑話休題 Access基礎 ある質問

あまり得意とは言えないAccessの講習。
初級編だったけれど、一年ぶりくらいだったので、もともと乏しい知識がさらに欠落。

大丈夫かなぁ?

でもテキスト通り進んでいけば、問題はないはず。
人数は少なかったので、なんとかなるかも。

やってきた受講者さんのうち、「女性」さんは、とても熱心だった。
熱心のあまり、なんだか空回りするくらいだった。

この講習は変則的で、授業形式ではなく、自習形式で進めていく。

それぞれテキストを進めてもらって、適宜補足説明をしたり、フォローしたり、個別に質問を受けたりする。
でも彼女はなかなかテキストが進まない。
途中の操作で際限なく質問が出てくるからだ。

「フィールドサイズを4に変更」とテキストにあったら、「どうして4なんですか? もしほかの数字にしたらどうなるんですか?」
「T集荷NOマスターをクリックして」とテキストにあったら、「どうしてT集荷マスターを選ぶんですか? なぜ他のテーブルじゃダメなんですか?」

聞いたほうが分かることもある。
とりあえず最後まで操作を完了してみると、聞くまでもなく分かることもある。

最後まで操作してみると分かることというのは、途中で「こういうわけだからここでこうしているんですよ」と言われてもピンとこないことがある。
授業形式で進める場合も、とりあえず操作をしてみてから、「さっきのところでこうしたのは、こういうわけです」と言うことがある。

「とりあえず最後までやってみてください。その後で説明したほうが分かりやすいと思うから」と言うことが多かった。

さらに彼女は、聞いたことはすべて、テキストに赤ペンや青ペンや蛍光ペンで書き込む。

「じゃ、こういう場合は、抽出条件にこのBetweenAndという関数を入力するんですね?」
「Between Andは関数というわけじゃないです」
彼女はテキストのBetweenAndの説明のところに、赤ペンで「◎関数ではない!」と書き込む。

何気なく答えてしまったけれど、改めて書き込まれると急速に不安になるわたし。
――関数じゃないよね?

この数日後、たまたまイレギュラーな仕事(後にも先にもこのときだけ)で、ある科の手伝いに行って、たまたまその日が科の打ち合わせがある日で、末席に座らせてもらった。
わたしはその科の常勤の講師ではないので、ただ座っているだけ。
「できる人はもっとできると思うんですよね。AさんとかBさんとか」
「Cさんなんかもね」
「そういう人には、もっと高度なこともカリキュラムに入れていったほうが、いいんじゃないかなって。
Accessなんかも、BetweenAnd関数くらいはいけると思うんですよ」

――BetweenAnd関数!?

あれ、関数だったのか!!
「女性」さん、ごめん、間違ったことを教えてしまったんだね!

Accessの講習はもうとっくに終わって、受講した人たちはそれぞれの会社に帰っていった。

どうしよう。伝えることができない。
事務の方なら連絡先を知っているから、お願いして伝えてもらおうか?
でも面と向かって説明しているときもうまく伝わらなかったときがあったのに、メールで大丈夫かな?

などと悩んでいるうちに、さらに日が過ぎた。
この質問の一件は、忘れることはできず、いつまでも苦にしていた。

そしてある日、Accessの新バージョン(2007用)のテキストを見ていたら、「BetweenAnd演算子」と書いてある。
旧バージョン(2000または3用)には「Between~And」としか書いていなかったのだ。

演算子だったのか~!!

「やっぱり関数でした」って言わなくて、ホントに良かった~~~!!!

早く伝えてあげなくちゃと思っていたけど、自分のフットワークの重さが救いになった。
ホッとした~~! 冷や汗ものだ。

――この一件はいろいろと勉強になった。

・堂々と言えば、間違ったことでも本当に聞こえる。
・自分以外のほとんどの人が優秀に見えてしまうわたしだが、他の人でも間違うことはある。
・人の言葉を単純に信じるのではなく、自分で調べるべきである。
・自分のレベルが低いのに講習を引き受けるのは危険だ。

この話を夫にしたら、呆れられた。
「関数って何か、全然分かってないってことじゃないか。そんなレベルで人に教えてるの?」

もっともなことで、だから本当はあまり話したくない。
でも自分の記憶には、戒めとして残しておきたいと思って、書くことにする・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


閑話休題 インストラクターイメージ

ある職場で、1年も前に辞めた人の噂を聞いた。
「この間さー、会社帰りに**駅で降りて百貨店に行ったら、××さんに会っちゃったよー」

××さんは、派遣で来ていた事務の女性で、かなりぽっちゃり体型。
でも顔立ちはよくて、若い頃は痩せてもいたし、ディスコ(そういう世代)で名を轟かせていたとか。
わたしたちはもうドーンとぽっちゃり型になった姿しか知らないけれど、出産で体型が変わってしまったそうで、それまではかなりほっそりしていたらしい。
今となっては、その時代があまり想像できない、どっしりした大きい体である。

××さんは料理が得意。
お菓子も気軽に作っちゃうし、素晴らしいオーブンも持っている。
味にも敏感だそうで、ちょっと食べると使われている素材や調味料が分かるそうだ。
(わたしは当てている場面を見たわけではないので、本人からの伝聞証拠のみ。)

「へぇ~。今、××さん、何してるの?」
「なんかねー、マクロビオティックの教室で教えてるらしいよ」

え!!

マクロビオティックは少し前にはやっていたので、耳年増でだいたいのことは聞いていた。
簡単に言ってしまうと、玄米や野菜を食べるようにして、肉や卵は食べない。魚も本来はダメ。
当然バターや油は使わないし、砂糖も使わない。添加物ももってのほか。
厳密にやっている団体は、だしは昆布かしいたけで、味付けも少量の塩程度だという。

ひと口に言えば、超超・健康的な食事ということだ。

彼女は料理が得意だったし、食に関してもずいぶんいろいろ知っていたようだし、食を教える仕事は合っているだろうと思う。
この話を聞いた人は誰もが思った。

でもその後に、つけ加わるセリフが、「マクロビオティック?」「教えてるの!?」。
辛口の人はさらに言う。「彼女が?」
さすがに「あの体型で?」と口に出した人は――ほとんどいない。

マクロビオティックは「健康的な食事をしよう」ということであって、「痩せましょう」ということではない。
だから体型は関係ないはずだけど、やっぱり「そういう食事を実践している人は痩せてるだろう」というイメージがある。
ダイエット目的で「マクロビ」を始める人も多いし。

イメージというのは、大切なものだ。
でも実に難しくて厄介なものだ、と思った。

もうひとつ、違う話もしておきたい。

50代女性の美や健康に関する意見を聞く、というある座談会イベントに、仕事で参加したわたし。
わたしの仕事は、ただひたすら皆さんの話を聞いてタイプするのみ。
内容を気にする余裕はなくて、とにかく機械的に文字にしていくけれど、後からふと思い出すことがある。

「あたしはスポーツジムでヨガだとかジャズに合わせてダンスをするとか、そういうのをやってるんですけど、楽しくないと続かないんですよ。
だから自分で目標を設けて――たとえば、あと1キロ痩せたら、あのヨガインストラクターが来ているウェアを買うんだわ、とか。
また、ああいう人たちはとってもオシャレなんですよ。
いっつも、あ~素敵だな~って思うようなカッコして来るから、あたしもあんなふうになりたいわぁ~って思うんですよね」

何を教える人でも、インストラクターってそういうところがあるんじゃないかな。
マクロビインストラクターでも、ヨガインストラクターでも、筋トレのインストラクターでも。
あんなふうに健康的になりたい、あんなふうにかっこよくヨガをしたい、あんなふうに美しく筋肉のついた体になりたい。

でもやっぱり、受ける側はストイックな目的意識だけでやって来るわけじゃない。
高度なヨガポーズができるだけでなく、なんだか綺麗なスラリとした容姿や、素敵なウェアに魅力を感じたり、惹きつけられたりする。
もし宗教的な目的でヨガ行者のところに行ったのなら、古い服に整えていない髪形のほうが信頼できそうに思うかもしれないけど。

「それらしい」格好って、必要で大切なのだ。

それに、ターゲットに合わせた見た目も重要なのだ。

最初の話のマクロビオティックの××さんも、教室の内容がダイエットではなく健康なら、それでいいのだと思う。
いつも、はちきれんばかりの健康そうな頬をしている人だったから。

化粧品カウンターのお姉さんは、やっぱり綺麗にお化粧していて欲しい。
アロマインストラクターと会ったら、ふとアロマの香りを感じるほうが憧れる。
カラーコーディネートを学びに行ったら、先生には素敵なカラーコーディネートの服を着ていてほしい。

じゃあ、OAインストラクターだったら、どんな感じがいいだろう?
対象が会社員の研修だったら、どういう人が講師であってほしいだろう?
学生向けだったら、また違うだろう。

なんて、ちょっと考えさせられた・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 12.人を好きになる

人に好かれようとしても、それはなかなか難しい。
好かれようなんて考えたら、それもマイナス要因になる。
打算が透けて見える人を、誰も好きにはならないからだ。
――「誰も」というのは極端だけれど、打算で近寄ることに、人は意外と敏感なものだ。

わたしは受講者さんに好かれることは、諦めている。
努力が難しいものだからだ。

その代わり、意識していることがある。

それが「相手を好きになること」。

好かれようというのは相手の気持ちを左右しようということなので、こちら側の努力では難しい。
でも相手を好きになるというのは自分の気持ちだから、少しの努力でできるのだ。

わたしは心が狭いので、様々な煩悩からなかなか脱け出せない。
だから努力といってもほんの少しだ。

誰でも自分なりのメソッドがあると思うけど、わたしの場合はふたつ。

いいところを見つけること。
嫌いになりそうな部分には近づかないようにすること。

誰だっていいところがあるものだから、いいところを見つける。
それを素直に「いいなぁ」「こういうところは尊敬するなぁ」と思えたら、相手を好きになれる。

でも人を詳しく知るうちに、欠点にも気づくようになる。
欠点でなくても、自分と合わない部分はあったりする。
そういうところに気づいて、あれこれ見てしまうと、相手を好きな気持ちが減る。嫌いになる。
だから「もしかして」と思う部分には近寄らない、なるべく見ない、見ても流す。

友達を探しているわけではない。
これは仕事なのだ。
わたしはやっぱり、うっすらと線を引いておくことは、仕事上の関わりでは必要なことだと思う。

友達なら、欠点も知って、一度は引いてもまた好きになる、欠点も許容する。
だけど自分が受け持って、担当して、講習中は責任を持たなければならない相手だったら、勝手に友達のように思ってしまうのは無責任だと思う。
友達とは喧嘩できるけど、受講者さんとは喧嘩できない。やっぱり同じではないのだ。

でもわたしは「相手を好きだ」という仮面をかぶっているわけではない。
適切な距離感を保ちながらも、わたしはその人のことが心から好き。
好きであるためにささやかに努力する――素敵なところを見つけるように。

これはわたしの方法。
他の人には他の人の方法があって、距離をどのくらい置くかも人それぞれだと思う。
あまり距離を置かないで、どの受講者さんとも友達になっちゃう人もいると思うし。

他の人にこういうことを話したことはないから、皆さんがどうしているのか分からない。
でも想像するに、どのインストラクターも、多かれ少なかれ同じことをしているのじゃないかな。

人を好きになったほうがいい。
受講者さんを好きになれないと、受講者さんからも好かれない・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 11.人に好かれる

人に好かれることは大切だ。

ちょっとくらい下手だって、不備があったって、受講者さんがこちらにいい印象を持ってくれれば、許してもらえる。
――かもしれない。

それを目的にするわけではないけれど、じゃあ、逆を考えてみる。

上手に教えてくれても、ツンツンしていたり、イライラしていたり、講師が嫌いに思えたら?
楽しかったとは思えないし、そういう意味では講習会は失敗だ。

いつもとっつきにくいと思われる、人に合わせてうまくやっていくのが得意でない。
そういう場合は、人気のあるインストラクターにはなれない。

人気なんて重要じゃない。
たとえ嫌われても私はこの人に知識を叩き込む!
――そういう職場もあると思う。

学校のようなところ。学校の教員のような立場。

しかし多くの場合、インストラクターは人に好かれることを求められる。
小さい子供や、特訓を受けている弟子を相手にしているわけではないのだから。

もう一度、最初のケースを考えてみよう。
自分が受ける立場なら、なんだか好きになれない人の声をずっと聞きながら、ずっと顔を見ながら一日過ごすのは嫌じゃないかな?
もし、ある程度以上の力があって、70点以上の講習をしてくれるのなら、嫌いな80点の人に教わるより、感じのいい75点の人に教わるほうがよくないかな?

そして、「いい評価をもらうためにこの人に優しくしよう」って思ってる人を好きになるかな?
だから結果として、人に好かれたほうがいいとしても、それを目的で受講者さんに近寄っても見透かされてしまう。

つまり、小細工で好かれようとしても、もとがダメならダメってことだ。

これを念頭に置いて、もう一度堂々と言おう。
インストラクターなら、人に好かれることは大切だ・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 10.曖昧さ

融通がきかない人はインストラクターには向いていない。
白と黒の中間を、状況を見て行ったり来たりするのが仕事。
曖昧、状況に合わせる、そのつど判断する、メインでもサブでも常にそう。
そして気配りができない人も、インストラクターには向いていない。

これは、ある若いインストラクター志望の人を見ていて思ったこと。
それまでこんなこと考えたことがなかった。

こういう言い方をすると語弊があるかもしれないが、インストラクターは誰にでもできる仕事だと思っていた。
難しいことはない。
気配りができて、感情的にならずに自分を抑えることができて、優しければいいのだ。
あとは勉強して知識をつけるだけ。

必要な資質はたくさんでなくてもいい。
少しの気配り、少しの抑制、少しの優しさで、普通のインストラクターにはなれる。
良いインストラクター、一流のインストラクターになりたかったら、もう少し必要かもしれないけど。

でも、向かない人というのもいるんだな、と思ったのである。
向かない分、人より時間や努力を費やせば、なれないことはないだろう。
――お金をもらうということが「なった」ということならば、職場さえあればすぐにもなれるし。

ただ、一緒に働いてやりやすいメイン、やりやすいサブには、なかなかなれないだろう。

彼女が誰かをフォローしている。
メインのわたしに近いところで、つまずいている人がいて手をあげている。
彼女は夢中でフォローしているので気づかない。
わたしが進行を中断してフォローする。
彼女のフォローはすぐに終わったが、もう一人はわたしがフォローしているので、そのまま椅子に座ってしまう。
その間、他の全員が、進行せずに待たされている。

「そういうときは、あ見てるからいいや、じゃなくて、代わりますって言ってほしい」
あなたの仕事は全員をフォローすることなのよ、とあまり無理があったので伝えてみる。

すると素直に次のときはすぐ来てくれた。「あ、代わります」
でもたまたまその内容は、あと1つクリックすれば終わるようなものだったので、わたしは「大丈夫」と言って続けようとした。
彼女が「どこまでやりました?」と受講生さんに確認してやるより速いと思ったからだ。
でも彼女は「代わります」を繰り返し、「大丈夫だから」と彼女を退けるほうが時間がかかってしまった。

「あ、今は手を出さないほうがいいんだな」と瞬時に空気を読めるのが、いいインストラクター。
言われなくても最初から、「メインがフォローしていると進行が遅れるな」と気を配ってくれるのがいいインストラクター。

彼女はインストラクターの経験がなかったので、手があがらない限りは椅子に座っている。
「つまずいたとき手をあげてくれるとは限らないので、画面は常に注意していてくださいね。
この教室は広くて、後ろから全部見えないかもしれないから、そういうときは見回ってくださいね」
と言ってみる。

ぐるぐるぐるぐるずっと歩いている。

「ずっと歩いていると大変でしょう?
説明が長い部分てありますよね、そういうときや、簡単な操作で問題がないときは、座っていいんですよ」
と言ってみる。

すると今度は座りっぱなし。

これはちょっと極端に話しているけれど、つくづく「気配りって教えられないものだからなぁ」と思った。
今まで組んだ人は、だいたい教えられなくても普通にできていた。
普段気配りの足りない人でも、仕事だと思って気構えればだいたいできる。自分もそう。

一年経つ頃にはだいぶ慣れたけれど、新しい状況は常に出るし、一番最初の頃に注意したことは忘れていくし、いつまでたっても合格ラインにたどり着かない。
教えて教えられるものじゃないからこその「素質」なんだと思ったし、「この仕事にそんなに素質が必要だとは」と驚いた。

「こうしたほうがいいと思う」と注意するときは、普通だったらそれで終わり。
でも彼女には「でもこういう場合は別だし、別だといっても基本はこうしてほしいし、こういうときはこうだけど、ああいうときはああで――」
説明しきれない。だから彼女も覚えきれない。

彼女の素直な性格は受講者さんにも好かれるようなので、そういう素質はあるのだと思う。
だから後は、残りの半分、頑張ればいい。

けど、半分って、ずいぶん大きい・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 9.いろいろな意識

ある時期、ホームグラウンドにしている職業訓練所で若いママと仕事をした。
若いと言っても29歳くらい。

それほど長い時間一緒に過ごさなかったが、帰り道などに聞いて、意外な経歴を持っている人だと分かった。

OAインストラクターは、パソコンやOfficeソフトから入ってくることが多い。
パソコンが好き、Officeソフトが使える、得意。
――だから、OAインストラクターになる。

ときどき、「教えるのが好き。だからインストラクターになる」という人もいる。

でもこの若いママは違って、もともとは声優やアナウンサーの勉強をし、ナレーターや司会業などをしていた。
(具体的にどういう仕事か聞いたら、家電売り場で商品紹介をするお姉さんとか、博物館で子供たち相手に展示の説明をするお姉さんだそうだ。)
「話す仕事」というところから、インストラクター業にたどり着いた。

と言っても、あまり経験はない。

「子供が小さいので突発的な熱や行事があると思ったから。
インストラクターだったら、休みが取りやすいかと思って」
ということだったので、「むしろ取りにくいと思う」と言ってしまった。
彼女は、その後いろいろなところに登録したりはしていなかった。

彼女の存在は、違う方向からインストラクター業を考えるきっかけになった。

人の講義を聞いていて、「聞き取りやすい声だ」とか「聞き取りにくい喋り方だ」とか、思うことがある。
はっきり喋っていて、声も綺麗でも、癖があってそれが気になる人もいる。
マイクを使う訓練を受けたわけではないから、息の音が聞こえたり、聞き苦しくなることもある。
マイクのない教室のほうが断然多いけど、そうすると今度は後ろまで声を届かせるのが大変だ。

「OAインストラクターに必要なのは、まずパソコンやソフトの知識、教え方の技術、とにかくそれが大事」
周囲も自分もそう思っているから、発声法だのマイクの使い方だのは、二の次になる。

勉強している人ってどれだけいるんだろう?

でも、これって案外重要じゃないかと思ったのだ。
聞きやすさは、受講する側にとっては、大きな比重を占める。

お腹から声を出すとか、滑舌よく喋るとか、抑揚の勉強とか、そういうことを学ぶべきなのかもしれない。
だいたいの人が、自己流で注意してやっていると思う。
自己流でなく、きちんと学んでみると、今後自分に当たる受講者さんにとって、とてもいいかも。

それからマイクの使い方。
マイクがあるときと、ないときでは、声の出し方は違うと思うからだ。
舞台俳優と映画俳優の違いだ。
マイクに雑音を混じらせない呼吸法や、マイクの扱い方も知りたい。

プロとして、そういうことも勉強したほうがいいと思うようになった・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 8.技術とは

一緒に組んだ駆け出しインストラクターは、インストラクターでさえなかった。
わたしがイロハPCスクールに面接に行ったとき並の初心者。――つまり全くの未経験。

その人はわたしと一緒に組んだとき、サブをした。
それ以外には、ほとんど経験がない。
でも彼女は勉強家で、派遣会社の「メインインストラクター養成講座」に通ったそうだ。

「厳しいんですよ。オリジナリティを出さなきゃダメってダメ出しされるんです」
そう言っていたが、オリジナリティ以前に、必要最低限の技能っていうものが要る。

声は聞き取りやすいか?
抑揚は分かりやすいか?

ボタンの位置などを把握しているか?

受講者はプロジェクタや講師用モニターなど、講師の操作画面が見られるようになっている。
「コピーボタンをクリックしてください」と言って、スッとマウスをボタンに合わせる。
そして全員が押せるまで、そこにマウスを置いたまま待つ。

もし「あれ? どこだっけ?」とマウスがさまよってしまったら、それを受講者さんは見てしまう。
すると受講者さんも迷ってしまう。
だから講師は探してはダメだ。迷わずボタンの位置に向かわなければ。

早すぎると分からないことがあるから、マウスはゆっくり動かしていい。
でも「ちょっとズレた方向に向かってしまって、途中で方向転換」は、なし。

時間通りに終わることができるか?

操作につまずく人が多いと時間がかかる。
時間がかかった場合は、「参考」だの「スキルアップ!」だのをうまく省いて、予定に追いつく。
逆に思ったより早く進み過ぎた場合、どこをふくらませて間をもたせるか。

その他にも様々なことが考えられる。
受講者の誰かが「こういうときはどうするか?」と質問などをして、それに対応して遅れることもある。
全員の前で質問をされたら、「それはテキスト外だから後で詳しくお教えします」とは言いにくい。
他の人も「自分も聞きたい」と思うものだからだ。
面倒なことだったりすると、分かってもらうために操作してもらったり。
そんなことをしていたら、だいぶ遅れてしまった――それでも終わりは合わせたい。

サブを走り回らせずに講習を進めることができるか?

なんだかサブの先生が忙しそう、と思ったら、少しペースを落としたり、操作説明を強弱をつけて話したり。

受講者さんが退屈しすぎないようにできるか?

あまりゆっくりすぎて、退屈に疲れてしまうことがある。
そうならないようにペースを調整したり、説明が続くところは適宜操作を入れたりする。
特定の人が遅れるために全体が遅れるようなら、対策を講じる。
(サブの人に頼むとか、自分もチラリと見るようにするとか、その人に向かって話すとか。)

その場その場で臨機応変に対応して、最終的に帳尻を合わせる。
全部を予定通り進めるのではなくて、一日の間で調整できればいい。

そういうことができるか?

基本がなくてオリジナリティがあるメイン講師なんて、サブがめんどくさい思いをするだけ。
最低限のことができてはじめて生きる個性だと思う・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 7.教室を運営する

メインとサブがいるならば、教室運営はメインの仕事だ。

教室運営とは、講習会がうまくいくように、全体を監督、舵をとることだ。
船頭が多いと船は沈むという。
だから、サブは口出ししてはいけない。メインに任せて、従うようにする。

会場の責任者とのやりとりも、基本はメインがする。
ときどき、長くその現場に入っているサブがいて、その人が頼りということもあるが。

準備、後片付けなどの采配もメインがする。

でも一番重要なのは、講習中の教室をうまくまとめていくことだ。

集まっている人たちが高齢者が多くて、ずっとパソコンを見ていると目が疲れたり、肩が凝ったりするようだ。
そういうことなら、休憩時間を頻繁にとったり、長くしたりして、対処する。

講習に関して何らかの問題が起きたり、クレームがつけられた場合は、メインが対処する。
現場には自分たちしかいないから、どういう方法をとるかもメインが決めることになる。
謝るのか、突っぱねるのか、どう対応するのか。

サブだったら、自分の知識では答えられない質問が出たら、メインに助けを求めればいい。
メインは助けを求める人はいない。

受講する人は一般の講習会なら皆さん大人だから、私語がうるさくて、なんてことはあまりない。
でも教室の雰囲気をうまく持っていくのも、メインの腕になる。
これもひとつの教室運営だ。

講習会が、全体として成功だった、少なくとも失敗ではなかった、という状態に持っていくことまで含んで教室運営だ。

難しいけれど、でもこれこそが醍醐味でもある・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 6.誰のために

メインにしろサブにしろ同じだけれど、講習会は誰のためにあるのか意識する必要がある。

「すべては受講する人のために」
――大きな意味で考えればその通りだし、建て前として掲げられる目標もそうだ。

でも講習会は受講する人と講習をする人だけで成り立っているわけではない。
わたしたちインストラクターが受講者さんに仕えれば、それで済むというものではない。

どんな仕事だって、いろいろな人が関わっているものだ。
講習会も例外ではない。

その講習会を主催している人(団体)は、何のためにしているだろう?
就職を目的とする場合と、学生さんなどのレベルを一定にするためとでは、やり方も違ってくるだろう。
教えてほしい内容も違ってくるのだから。

受講する学生さんさえ満足すれば、大学側の目的や思いはどうでもいいか、って言ったら、当然そんなわけはない。

国や都が後押しをして、失業率を減らすために行っている就職支援だったら、実践的な技が必要かもしれない。
Wordだったら論文の書き方なんて必要ないかもしれないし、Excelだったらグラフなどは限られた仕事でしか使わない。
関数をするときは、実際に使う場面はこうです、と説明したほうがいいかもしれない。
この機能はどんな部署でも当たり前に使われているので、覚えたほうがいいですよ、と添えたほうがいいかもしれない。

もしイロハPCスクールのようなパソコンスクールだったら、また違う目的があるかもしれない。
覚えてもらうために叱るようにして厳しく授業をするより、「また来たい」と思える楽しく優しいインストラクターであってほしいだろう。

主催する人と一見同じように感じるけれど、実際の担当者の思いはまた少し違うかもしれない。
現場に来ることもあるし、受講者さんに挨拶することもある。
アンケートを集めて「評価がこうだったな」と管理するのはその人だったりする。
そのアンケートの結果や、その他のいろいろなことで、上から認められたり叱責されたりするかもしれない。

現場担当者には担当者の、思いや目標や希望があるかもしれないのだ。
それも考慮に入れていかなくてはならない。

受講者さんのためと言ったって、受講者さんは一人ではない。
ある人は「時間をオーバーしてもいいから、詳しく教えてほしい」と思うかもしれないけど、別の人は「保育園にお迎えに行くから、ジャストに終わってから荷物をまとめるのでは遅いな」と考えているかもしれない。
「休み時間がありすぎる。時間がもったいないから、あまり休まなくていい」
「疲れるからもっとゆっくり休み時間をとってもらいたい。トイレもゆっくり行けない」
そんなふうに逆のことを考えている人がいるかもしれない。

どうしたら満足していただけるかは、人によって違うから、ひと口に「受講する人のため」と言っても難しい。

一緒に組むサブのためも考えなければならない。
同じ講習会を隣のクラスでする先生がいるなら、その人と足並みをそろえる必要もあるかもしれない。
派遣会社の営業には営業の、思いや目標があるかもしれない。

「誰のために」ということは、広く考えなければならない問題だ。
そしてバランスをとっていかなければならない・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 5.サブのために

サブとはどうあるべきかについていろいろと考えたとき、重要なことのひとつに「メインのために存在する」というのがある。

講習会の主役は受講者、当然受講者様の満足が第一、受講者様が目的を達することが第一である。

であるけれども、サブをするときは一緒に組むメインのことも考えなければならない。
メインインストラクターがやりやすいように、メインが余計なことをしなくて済むように、メインが進行だけに集中できるように。
結局は、それが受講者様にとってもよいことになる。
遅れる人が複数いても、フォローをサブが全部カバーできれば、メインは進行だけに集中できる。
そうすれば受講者様も待たされたり、中断されたりすることなく、操作に集中できる。

もっと言えば、メインを引き立てるように、メインをないがしろにしないように、メインのやり方に合わせるように。
そしてそれも、結局は受講者様にとって、よい結果になる。
教室の空気はよくなるし、メインとサブの息が合っていれば受講者様は内容だけに集中できる。

もう一歩進んで、メインの仕事も多くなってくると、今度は逆に「サブのために」ということも必要になってくる。
メイン講師は進行を主にするわけだが、自分勝手に進んでしまうとサブは非常に困ってしまう。
進めていても、説明をしていても、流れの中にいても、目を配っておくべきだ。

サブ講師がじっと立って皆さんの画面を眺めていたり、特に立ち止まらず画面を見ながら教室内を回っていたりすれば、「今は問題ないんだな」と思う。

でもどこかで誰かをフォローしていたら、「フォローしているな」と思う。
大丈夫そうなら気にしない。「あ、このボタンですよ」程度のようだったら。
少し長く立ち止まっているときは、進行の速度を落とす。
そうしないと、今フォローされている人は、説明を聞き逃してしまうからだ。
(ついでに言うと、メインはそういうことを考えているかもしれないから、サブはできる限り自分なりの説明を加えたりすべきでない。とわたしは思っている。)

サブがどこかに立ち止まっているのを見て、受講者さんが目を泳がせているようなら、注意。
その人もつまずいているかもしれない。
――ということは、つまずいている人は2人3人いるかもしれない。
さらにスピードを落とすか、またはいっそ中断して自分で手近な人を見に行くか。

サブが忙しくならない講習ができれば、メインの進行はある意味成功である。
それは遅れる人が(あまり)いなかったということ、全員が理解してくれたということだ。
「分かりやすい説明」だったということになるし、「進行速度は適度」だったということになる。

でもこれはサブの能力にもよるので、なんともいえないところだ。
遅れている人が3人いてもサッとフォローできる人、遅れている人が2人になるとダメ、1人までしかできない人。
だから自分がサブについたときは、できれば教室の全員を自分一人でカバーしたいとわたしは考える。
同じようにメインになったときは、手近な人は自分がみようと思う。
こうして両側から互いに重なるようにカバーしあっておけば、100%に近付くことができる。

じゃあ、ゆっくり進めて、全員が遅れないようにすればいいかというと、そう言い切ることもできない。
あまり遅すぎると退屈してしまう人が出てくるからだ。
そうなるくらいなら、1人2人だったらサブに任せて、メインは先に進めたほうがいい。
この辺の兼ね合いが難しいところだ。

メインにしろサブにしろ、インストラクターは受講者様のためだけにあらず。
一緒に仕事をする相手のことも考えて行動できないと、優れたインストラクターとは言えない。
と、わたしは思う・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 4.70点を目指す

これは、わたしの心得であって、誰にでも共通のものだとは思わない。

ちょっと話がそれるようだが、夫はスポーツを見るのが好きだ。
「この代表選手は波が激しくて、調子のいいときは鬼神のような働きをするけれど、悪いときは素人にも負けそうなときがあるんだよ」
でも、その選手が好調なときは、天才的で誰にも真似できないプレーをするのだ。

わたしはバレエを見るのが好きだ。
これもまた、肉体を使うものだけれど、オリンピックなどと違ってアマチュアではない。
お客はそのパフォーマンスにお金を出してチケットを買うわけで、プロである。
とても素晴らしいダンサーで、最高のときは100点満点で150点出せる――けど、悪いときは30点という人がいたらどうだろう?
そして、一方には絶対150点は出せないけれど、常に70点以上の人がいたら?

高いチケットを何枚も買って、毎日見に行くことはできない。
たまたま自分が買った日が30点の日に当たったら、ちょっと悲惨だ。

だからコンスタントに70点を出せる人でないと、なかなか主役級にはなれないだろう。
だって、主役が30点だったら目も当てられない。

一流のバレエ団のソリストともなれば、最悪のコンディションのときでも70点は出す。
そして調子の良いときは、100点満点を出したり99点をマークしたりする。
中にはいいときは120点くらい出す人もいるかもしれない。
そういう人たちが、いわゆる超人気のカリスマダンサーなのだろう。

わたしは、インストラクターもこれに近いと思っている。
特に講習会は、あまりリピートがない。
一期一会なのに、たまたま30点に当たってしまったら、申し訳ない。
もちろん、一期一会で150点を引き当てた人はラッキーだろうけれど、翌日の人たちは30点に当たるというのなら、両日とも70点のほうがまだいいのではないだろうか。

よいときは150点を出したい。
それを目指すのは大切なことだし、忘れてはいけない目標だと思う。

でも「150点を出す」ということを第一の目標にするのではなく、「常に70点をキープする」ことこそ、一番に肝に銘じておくべきではないかと思うのだ。
それがその仕事でお金をもらっている者の義務、プロっていうことだと思うのだ。

体調の悪いときだってある。
精神状態の悪いときだってある。
教室の雰囲気とか講習の内容によっては、あまり乗り気になれないときもある。

そういうときにも70点を出すこと。

これは多くの仕事で重要なことかもしれないけど、この仕事でもやっぱり大切だと思う。

わたしはなかなか150点を出せない平凡な講師なのだけれど、70点だけはいつも守りたいと思っている・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 3.どんなときでも

前回まで話していた先生は、ある年とても都合が悪くなり、あまり経験のない若い人が代わりにやってきた。
「若い」といっても、「わたしより」ということだ。世間一般には「若い」とは言わないだろう。

この年、この若い人と組むか、前から一緒に働いていたお子さんのいる先生と組むか、どちらかだった。
お子さんのいる先生が毎日連続でないほうがいいと思われたためか、シフトはバラバラだった。
わたしは前の年からの流れで、全日程出勤することになっていた。
他の二人の先生は、今日はこちら、明日はあちら、という勤務状況のときもあった。

若い方はよく言っていた。
「ひとつのコースをずっと担当するほうがいいですね。
こまぎれに出ていると、教室の雰囲気に慣れるのにも時間がかかるし、どの人を重点的にフォローしたらいいかとかもなかなか分からないし」

そうねぇ――と言いながら、なんとなく違和感を感じていたが、そのまま流していた。

あるとき若い方は言った。
「××先生(お子さんのいらっしゃる)も、きっとそう思ってますよね」

そこで何に違和感を感じていたか、納得したのだった。

お子さんがいらっしゃるほうの先生は、そんなことは思わない。
もともと気にしない性格というのもあるが、ベテランなのだ。
お子さんができてやめたけれど、それまでは大手パソコンスクールの正社員インストラクターだった。
「大手」の「正社員」だ。
ブランクがあったって、それまでにこなしてきた数はなかなか追い越せない。

それはもちろん、ひとつのコースをずっと担当するほうがいい。
だから派遣などでは「全日程できる方優先」という募集ばかりだ。

そのほうがやりやすいに決まっているのだが、それは「できない」ということじゃない。

初めての人たちを前にして、すぐに雰囲気をつかんで、あるいは自分で強引に持っていって、今日一日だけの講習会を成功に導くのが、一流だ。
そこまでできなくても、サブとして滞りなく教室を流れに乗せていくことくらいは、慣れてなんかいなくてもできるべきなのだ。

10日もやってる講習会なんて、そうそうないんだから。
「全日程」と言ったって、ひとつのクラスとは一日や二日のつきあいだったりするのだ。

この若い人が「素人だからできない」「できなかった」ということじゃない。

だいたいいつだって、瞬時に対応していくことが求められるものだ。
それが分からなかった、思いもつかなかった、ということだ。
――そういう状況に出会っていないんだなぁ。
つまり――「あまり経験がないんだなぁ」と思ってしまったのである。

プロとプロ未満を分けるのは、考え方なのかもしれない。
知識が同じくらいあっても、「どんな状況でも私はここまではやれる」と思えるほうがプロ。
もちろん思うだけじゃなくて、ちゃんと実行できるのがプロ。
頑張っているけれど、「これじゃやりにくい。こうあるべきなのに」と状況に意識が行ってしまうのがプロ未満。
そこまではプロだって思うだろうから、じゃあ言い直すと、「こうあるべきなのに」の後に「でも今のままであってもここまでは私の力で持っていくけどね」と付け加てこそプロ。

意識の差ってやつである・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 2.詳細な状況に合わせて

目的、内容、受講者、主催者、組む講師、組む事務担当者、いろいろなことで、その講習の性格は違ってくる。
どんな講習でも、その状況に合わせてうまくやっていくのがプロだ。

同じ職場で働く先生と話していたある日、「わたしもプロになったなぁ」と感慨深く思った。

その先生と別なときに別な話をしているときも、同じようなことを思った。
わたしにとっては、なんといっても仕事は仕事、一番に考えてしまうものだ。
でもこの方は違うのだ。だからハッとするのかもしれない。

ご主人さまは立派な仕事をして、立派な収入を得ている方で、この方は働く必要はなかった。
でも自分の趣味に使うお金くらいは自分で働かないと、なんだか嫌なの、とおっしゃっていた。
だから数ある趣味の中でも一番力を注いでいるもののためには、お仕事も休む。
他にやりたい方がいるなら、仕事を譲ってもいい、とおっしゃる。

この心のゆとりのために、この方は純粋に受講生のことを考えることができた。
わたしが事務の人や偉い人や常勤職員の先生のことを考えるときに、「でも受講生さんにとってはこのほうがいいはずよ」と言える。

これはいい意味で「プロでない」ということなのかもしれない。
わたしはその考え方の違いに、ハッとするのである。

この仕事は二人で組むが、その二人の枠のために三人の人員がいた。
わたしはその期間中全部出ることができた。
この先生は趣味のために来月のコースはお休みすることになっている。
もう一人の先生は、お子さんが小さいので出られない日がある。

「誰か代わりを探すけれど、見つからないかもしれない」
と、事務の方が言った。
わたしは、「以前も何度か一人でやったこともあったし、どうしようもなければ一人でやりますよ」と言った。
一緒にいたその先生が「でも大変よ。無理をしても仕方がないですよ」と言う。
そして「受講生さんがね、大変だと思いますよ。受講生さんに迷惑をかけるのはねぇ」と言う。

そう。それはそうだと思う。

でもいないものは仕方がない。
見つからないというときに、「それじゃできませんよ」と言うわけにはいかない。

「常に100点であること」を目指さない。
「70点を切らないこと」を考えるべきときもある。

与えられた条件の中で最大の努力をするのが、プロじゃないだろうか。
与えられた条件の中で、なんとか70点をたたき出して見せるのが、優れたプロじゃないだろうか。
一流とまではいかないにしても――

いろいろな悪条件はある。大きなものも小さなものも。
中には馬鹿げていると思われる理由によるものもある。
対受講者だけでなく、主催する人の意向もあるし、事務手続きをとる人の都合もある。
このような大きな組織の場合は、わたしたちが担当したコースの後にその訓練生さんたちを見続ける担任の先生の意向というものもある。

この話をして帰るとき、ふと、大人になってから買って何回も読んだ、「エースをねらえ!」というマンガの一場面を思い出した。
主人公に負けた選手が、「審判が公正でなかった」と言って、再試合を求めてきたのだ。
その話を聞いた主人公の先輩、お蝶夫人は言う。
「ばかばかしい。完璧な条件で試合できることなど、一生にそう何度もあるものじゃないわ」

きっとわたしがこれまでに講習会で出会ってきたメインを張るほどの先生方なら、条件は求めないだろう。
こういった悪条件があるとこのような懸念がある、と予告はしたとしても、要求はしない。
これこれの事情でこのような不都合があった、と報告はしたとしても、責めはしない。

わたしはプロになった。
そう思うと同時に、ベテランの先生方と比べると、未熟なところが多かったということにも気づく。

自分が未熟すぎるうちは、どこが足りないかも見えないものである・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


プロの心得 1.状況に合わせて

ある日、ふと、わたしは思った。「わたしもプロになった」ということを。

そのきっかけは、ホームグラウンドとする職業訓練所でご一緒している講師と話したことだった。
でも話の内容は一見何の関係もない。

この職場では、求職中の訓練生に対して基礎的な内容を講習する午前コースと、在職中の社会人に対して講習する一日コースがあった。
午前コースは、その方たちが半年なり一年なり訓練する間の、ほんの10日間。
一日コースは、仕事を休んで「研修」という形でやってくる、数日間。

話をしていた講師とは、午前コースでペアを組んでいた。
その方は初めて一日コースを担当し終わったところで、アンケートの内容に少し悩んでいた。
別に悪いことが書かれていたわけではないが、大感謝されていたというほどでもなく、「労多くして実りの少ない仕事だと思った」と嘆いていらした。

そのとき突然、自分はプロになった、と思ったのだった。
こういう「天啓」みたいなものが、わたしには多い。
たぶん、トロいのだと思う。
いろんな場面で少しずつ蓄積されていた考えなのだろうが、ある瞬間突然のように気づいたりするので、自分で驚いてしまうのだ。
常日頃から自分の考えを把握しておけば、きっと驚くこともないのだろう。

わたしはこの先生より一年半ほど早くこの職場に入ったので、午前コースはもちろん、一日コースももう何度も経験があった。
確かに、ふたつの仕事は違いがあり、一日コースはより労力が必要だ。

一日コースをしている自分と午前コースをしている自分は違う。

それは、企業が介在する一日コースと、訓練生相手の午前コースという、性質の違いによる。
企業は当然、仕事で役立つ能力を求めているし、使わない機能の訓練はいらないくらいに思っている。受講する側も、真剣であるし、また今の仕事では使わなくとも、今後のステップアップのため、または転職のため、などの理由でさらに習得したいという思いもある。

訓練生は、人にもよるが、これは授業の一環、いやでもなんでも受けなくてはならない義務なのだ。

また午前コースに求められているのは、一般的な知識であり、広く浅くまんべんなく訓練することだ。
一日コースは実務、午前コースは知識、という違いがある。

どういう形態での仕事か、ということも違う。
一人で担当する一日コースは自由にできるが、ペアで行う午前コースでは一緒にやる人の意向も関係する。

場面場面に応じて、求められる講習ができる。
意に添わなくても、あるやり方を採用することもある。
それで受講生の習熟度が多少落ちたとしても、講習は受講生だけで成り立っているわけではない。
主催者の満足度も必要な場合もあるのだ。
また、一部の受講生のために、他の一部の受講生に不利益が生じる場合もある。
どちらを優先して、どちらに妥協を強いるのがダメージが少ないか、決断しなければならないこともある。

そういうことができるようになった、と思ったのだ。

わたしはマイクロソフトオフィシャルトレーナーの資格も取っていないし、他のインストラクター養成講座の資格もとっていない。
だからこの仕事に関しては、「若輩者」という気分がいつまでも抜けなかった。
自分をプロ、と断言するだけの自信ももてなかった。

けれど、この日、何の関係もない話をしながらふと悟った。
わたしはプロになった・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


××区 10月土曜 Excel中級 4.驚異の技

ベテラン女性講師は、まず初級の内容を復習・確認するところから始めた。
そしてかなり丁寧にじっくり、時間をかけた。

午前が終わる頃には、今日中に終わるのだろうか?と思うほどだった。

これは考えがあっての計画なのかと想像していたが、お昼休みにそうではないと判明した。
「あたし、つい昨日までゆっくり進めるExcelの講習をやってたのよ。
だから感覚が狂っちゃってて――このままじゃちょっとヤバイわよね。
午後は少しスピードアップするから」

意味するところは「だからフォローが大変になるかもしれないけど、こっちはそれを手助けしてる暇はないから、よろしくね」。

でも午後になっても、目に見えて早くなったわけではない。

いきなり早いスピードで進んでいったら、受講者さんも面喰らってしまうだろうから、少しずつペースを上げていくんだな。
――そう思っていたけど、なかなか上がらない。

ついに午後、最初の休憩。
残り時間は2時間を切った。

これはもう、絶対に終わらない。

だってまだあと、複数シートの操作もあるし、グラフも残しているし、データベースも手つかずだ。
どうするのだろう。

何度か語ったけれど、時間オーバーはよろしくない。
「何時から何時」と告知しているのだから、受講者さんはそのつもりで来ている。
後に予定を入れている人もいるかもしれないし、クラス全体として時間をオーバーするのはダメ。
別に予定もないからって個人的に残って質問をする人がいるのはいいが、終了時間そのものは守る。

かといって、予定の内容まで終わらないのも、あまりよろしくない。
講習によっては、「カリキュラムをこなすことより理解優先」とあらかじめ言われることがある。
でもそうでない場合は、普通は予定の内容をこなすべきだ。
受講者さんはそのつもりで来ているのだから、損をした気持ちになってしまう。

50分ごとの休憩時間は省略するわけにはいかないし、実際は残り1時間40分くらい。

いよいよ休憩が終わったが、ベテラン女性講師はまだ急ぐ様子もなく、ゆっくりと進めていた。
でも、少し違ってきた。
飛ばしたのだ。数ページまるごと。

でもまだ急いでいるふうではない。
――と思ったけど、あっというまにグラフの章になった。

「グラフっていうのは、データを目で見てパッと分かるようにするんです。
じゃ、テキストの××ページですよ~。円グラフを作ります」

作ったし、説明もゆっくりしている。
「グラフを作ると、グラフツールのタブが3つ出てきます。
選ぶとタブが出てくるっていうのは、他にもいろいろあります。
図形なんかそうですね。ワードアートとかクリップアートなんかもそうです。
この選ぶと出てくるタブでは、グラフの3つが一番多いと思いますね~。
少なくとも私は3つ以上は見たことがありませんね~」

でも作った後に、いろいろと編集を加えるところはそっくり飛ばした。
2007は種類を選んだだけでグラフができてしまうから、タイトルを入れるくらいはしたけど、細かい編集はスルー。

操作はしなかったけど、口では言っていた。
「グラフは、いろんな編集ができるんです。
こういうところを細かく設定していくと、だいぶ凝ったものもできちゃいますね~」

――でも操作はしない。
しないけど、文句のありそうな人はいなかった。

その調子でその後、棒グラフを作るところもかなり飛ばしたし、データベースでもバッサリ飛ばしたところがあった。
でも誰も文句は言わない。

まるで「こういうところはそんなにやらなくても大丈夫だからだろう」とか「そんなに必要ないところだから飛ばしてるんだな」なんて思ってしまいそうだ。

そして時間通り、ちゃんと終わったのである。
テキストも一通りやった。
飛ばしたページもあるけれど、一章まるまるやらないということはなくて、なんとなくつまみぐいして操作していたので、まるで全部しっかりやったような印象だった。

そして終わったときには、まばらながら拍手が起きたのだった。

すごい。
こんなの初めて見た。

参考にしてわたしも、なんてことはできそうもないけれど、珍しい光景を見て得した気分。
この仕事を受けてよかった。

帰り道、同じ駅を使うと分かったので一緒に歩いているとき、わたしは言わずにはいられなかった。
「今日は本当に勉強になりました。
まさか、あそこから追い上げてテキストが終わるとは思いませんでした~。
いいもの見せていただきました」
「あたしもどうしようかと思ったわよ」
「勉強にはなりましたけど、真似しようたって、あんなことできません。本当にすごいです」

わたしもメインの前で緊張でガタガタになるという時代も過ぎたし、この仕事はアウェイだから気楽だし、笑いまじりに正直に誉めた。
メインの先生も笑いながら「焦ったわよ~」と言っていた。

でも素晴らしい秘訣を教えてくれた。
「急いでいるっていうのが見えちゃうとよくないのよ。
だからあたしは、急いでいるときほどゆっくり喋るの」

これは奥義だ。

あと3分でチャイムが鳴ってしまうけど、どうしてもこの操作を終えてしまわなきゃ。
なんてとき、こちらが焦って喋っていると、受講者さんにもそれが伝わって焦らせてしまう。
焦って操作するとろくなことはない。
失敗する人が続出して、余計に時間がかかった、なんてことはよくあることだ。

だから「急いでいるときほど、喋りはゆっくり」。

披露するには惜しいくらい「奥義」だ・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


××区 10月土曜 Excel中級 3.お昼休み

昼休み、隣の上級クラスは30分ずれていて、前半は二人しかいなかった。

ベテラン女性講師は、最近の仕事の話をしてくれた。
「新しい試験あるでしょ、あれを受けたのよ。
対策講座をやることになったからさ、合格してないとできないじゃない?
あれね、受けるならやっぱり最初がいいのよ、簡単だから。
ワールドコンピュータ教育もテキスト出してるでしょ」

ワールドコンピュータ教育は、派遣会社PCワールドの親会社に当たる会社。
さらに上には大手コンピュータ関連企業がある。

「あのテキストの内容は盛りだくさんなのよ。
合格するだけならあんなにいらないから、受けてみたら?」

合格には必要なくても、講習会を担当するなら必要になるけどね。

「対策講座ではサブが一人ついたんだけど、することが何もなくてねー。
最終日は模擬試験だったからまだ仕事があったけど、講義のときは何もないからさ。
退屈しないように、適宜受講生に質問を振って答えさせるんだけど、サブの子にもときどき振った」

わぁ、そりゃ大変。
でも教室は楽しい雰囲気になるだろうなぁ。
全員巻き込んでやってる感じがするものね。
答えを間違ったとしても、それもありかも。

「情報セキュリティの講座もこの間ちょっとやったんだけど、大変だったわ。
このテキストでやってください、って渡されて、3日後にはもう本番なの」
「えー、よく間に合いましたね。しかも、どういうことをするんですか、情報セキュリティって」
「操作することがないからさー、もうずっと喋りっぱなし。2時間」
「うゎ、それは絶対無理です」
「どこを重点的にやるとか構成を練って、なるべく面白いようにして、資料を作って。
3日で用意するのはきつかったわよ~」
「そうでしょうねぇ。すごいですねぇ、××先生。
なんといっても2時間ずっと退屈させずに喋ってるっていうのがすごいですよ」

「情報セキュリティも、今度資格を取ろうと思ってるのよ。
やっぱり、少しでもできることの幅を広げておかないとさ。仕事なくなっちゃうから」

そうですね。
やっぱりそうなんですよね。

わたしより10歳くらい年上に見えたけれど、新しい資格はすぐに受けて、今後のために幅を広げて。
見習うべきだと思ったけれど、今に至ってもたいして実践していないのが情けない。

そうしているうちに、男性講師さんと本日のサブさんが入ってきた。

「徳ちゃん! どう? 調子は~?」
とベテラン女性講師が男性講師に話しかける。
「うん、まあまあじゃない?」

そういえば、以前、再就職支援講座で出会ったもう一人のサブ別所さんは、言っていたっけ。
「PCワールドでは、徳さまという男性講師を尊敬しているんです」
「尊敬してるんです♪」という口調で楽しげだった。
徳さま――そんなに素敵な人なのか、とそのとき思った。

そして7月も、そして今も、目のあたりにしているわけだが。
わたし自身の好みとしてはどうだったか、それは秘しておくことにする。

「自分さー、この間、友達と旅行に行ったのよ。
翌朝、目が覚めたらさー、友達が言うわけ。
ねえねえワードアートスタイルって何?、って。
何それ、どうしてワードアートスタイルの話がここで出てくるんだよ、って言ったらさー。
お前、寝言で言ってたぞ、って言われたんだよねー。
ワードアートスタイルについては85ページを見てください、って寝言で言ったんだって」
「何それ、徳ちゃん、仕事しすぎなんじゃないの~!!」と大笑いするベテラン女性講師。
「ワードアートスタイルのことは85ページに書いてある、っていうのは分かった、って言われてさー。
後でページを確認したら、ちゃんとそこに書いてあったんだよねー」
「85ページだったんだ~!」

わたしと隣の教室の本日のサブさんは、とりあえず笑顔だけど、話に参加してるわけではない。
気楽に傍観者で聞かせてもらった。

メイン二人は最近のPCワールドでの出来事や、PCワールドの営業、またはスタッフ講師、または会場となる持ちビルの人などの噂話。
それを聞いていると、やはりこのくらい古株になると、登録講師であってもかなり内部事情に詳しいのだと分かった。

わたしはとてもここまではなれそうにないな・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


××区 10月土曜 Excel中級 2.女性講師

ベテラン女性講師は、ハスキーボイス気味の声で、元気な人だった。
こういうチャキチャキ50代女性って、ハスキーな感じの声が多いのはなぜだろう?

――いや、50代というのは勝手な想像で、もっと若いのかもしれないが。

「あ、そんなこともできたの、なるほどねぇ」ということも1つ2つあって、勉強になった。
わたしはまだ慣れない職場なので、ちゃんと緊張してサブ。
でも午前の大部分は、本来初級でやる内容の復習だったので、難しくはない。

7月に同じ講習に来たとき、この先生は隣のクラスで上級を担当していた。
メイン同士知り合いで、気の置けない会話をしていた。

「応用って言っても、SUMも使ったことないって人も来るしさ~。
あたしは必ず基礎もやるわよ。
テストする。でないと応用なんてできないもの」

今回はテストはしてなかったけど、ゆっくり基礎の確認をしていた。

そして午前が終わり、お昼。
「ではここでお昼の休憩にします。が。
皆さんに大切なお願いがあります」

え? 何か注意事項があるの?
わたしは聞いていなかった。

受講者さんたちも、女性講師の一瞬の間に、注意を惹かれる。

「お腹いっぱい食べてきてください。
午後はもっと難しくなりますからね。
しっかり体力つけてきてくださいね~」

――うーん。なるほど。

このワザは、わたしでは使えまい。
同じことをしても必ずウケるというものではない。
自分のキャラクターを分かっていて、演出もしている人なんだな――まさにベテラン。

後から「あのときは面白かったですよ~」と言うと、気持ちよくコツを伝授してくれた。
伝授されたってできるわけはないし、それが分かっているから気軽に教えてくれたのだと思う。

「もうひとつバージョンがあってね。それは逆なの。
腹八分目にしてきてくださいね。午後眠くなっちゃいますからね。って言うのよ」

――なるほどなるほど~。



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


××区 10月土曜 Excel中級 1.10月の講習

7月の講習会から3ヶ月ちょっと。
忘れた頃に第2回目がやってきた。

派遣会社PCワールドの営業担当も、さすがにメールで確認してきた。
「10月12日土曜は、7月に引き続き、よろしくお願いします」

前後30分の準備時間も拘束時間に入っているので、そんなに早く行かなくてもいいかと思い、着いたのは15分前くらい。
わたしも初心の緊張感を忘れさったものである・・・・・・。

それはともかく。
講習開始は9時半、勤務開始は9時、わたしは8時45分くらいに到着。
と、そういう意味だ。

メインを務めるベテラン女性講師はもう来ていた。
わたしもメインならもっと早く来るだろう。

メイン講師は喋りが楽しい人だった。
これがこの人の持ち味。
多分、受講者さん受けはいいだろう。
ずっと前に似たタイプのインストラクターに出会ったことがある。
教職員向けの講習に来ていた人だ。

この講習は、発売後なかなか普及率が伸びなかった2007を使って行われた。
あまりにもインタフェースが違うので、買い換えはためらわれた。
ファイルの互換性の問題があり、企業も入れ替えは二の足を踏んだ。

インストラクターたちも旧バージョンの講習会が多いうちは、手を出さないでいる人も多かった。
あんなに変わっては、ベテランになるほど覚えるのが困難になる。
PCワールドはベテランが多いと評判の会社だ。
掲示板をたまたま見たことがあるのだ。
情報というものは、どこが伝えるものでも100%ということはなく、まして匿名性の高い掲示板ともなれば、真偽を見抜く目が必要となる。
でもこの「PCワールドはベテランが多く、上がつかえている」というのは、納得だった。

ベテランばかりのPCワールドとはいえ、この頃になると、だいぶ2007の講習会も増えてきたし、インストラクターもほとんどが対応できるようになっていた。

わたしもホームグラウンドでの仕事の半分は2007になっていて、「新しいバージョンの勉強になる!」というほどのこともなかった。
不安でドキドキするということも、特になかった。

それでも聞いていて「なるほど」と思うことはある。
知らない知識だけではなく、思いつかない説明言葉や、進めかたなど、参考になる。

今日も何かが得られるはず・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


××区 7月土曜 Excel中級 4.指名

男性講師さんと休憩時間に話しているとき、同じ現場を経験していることが判明した。

わたしはかつて、都心とはいえないなぁ~という区の産業会主催の講習会でメインをした。
そこにこの男性講師さんも行っているそうだ。
ご本人の話では、継続してずっと行っているという。

「やっぱりねー、ご指名くださるところは大切にしたいですからねー」

男性講師さんが言うには、たまたま近いのでその現場で仕事をした。
すると相手がとても気に入ってくれて、ずっと来てほしいと指名してくれているのだそうだ。

「相手」って誰だろう?
事務室にいた人?――あの男性がどういう役職の方か知らないが、あの人だろうか?
まさか事務員さんぽい女性ってことはないだろう。

事務室にいた担当の男性は、親会社ではなくPCワールドから来ているということでひと悶着あった人らしかったけど、継続指名してくれてるくらいなら今は満足なのかな。

自分と比べたら、この人はとても優秀な人なのだろうと思うけれど、他にも有能な人がたくさん行ったはず。
ずっとシリーズで講習会をしているから、いろいろな人が行ったろう。
それでもこの男性講師さんが特に指名されているというのは、やはり重要なのはテクニックのみではない。
人柄だけでもない。

人柄がいいのなら、「いい」ということをアピールできなくては、相手に伝わらない。
ベテランで素晴らしいテクニックがあるのなら、「優秀だ」ということをアピールしたほうがいい。
アンケートはもちろんあるけれど、ここで評価が良いのは紙の上の話。
休憩時間や講習前後に自分をアピールするのとは、温度が違う。

もちろんアンケートが悪かったら、いくら担当の人にとって人柄が良くても、継続の話はでないだろう。
だから、担当者に取り入ればいいと言っているわけではない。

仕事を得るためには、いろいろな人に自分を印象づけなければならない、ということを再確認したということだ。
受講者、先方の担当者、自分の派遣会社の担当者、他に出会う人がいればその人。
サブはどうでもいい。
または、よくない。もしそのサブが派遣会社とよく接触を持っているようで、言いつけるようなら気をつけなければ。

「なんかそういう、人に取り入るようなことはしたくない」とつい思ってしまうこともある。
なんたって面倒だし、結構大変だもの。
でもこれは、取り入っているわけではないのだ。

仕事は技術のみにあらず。

その案件に関わる様々な人にとって、頼りにされる人材か。愛される人材か。
それはテクニックだけの問題ではない。

なんだか「アピールが重要」と聞こえそうだが、わたしはそうも思っていない。
重要ではあるけれど、何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし。
露骨なアピールは反感を買うことになる。

だから言いたいのは――技術だけではなくて、人柄も磨いておくべき、ということ。
せっかく磨いたのなら、見えるところに飾っておいたほうがいい、ということ。
でも、それを過剰に押し付けたりするのはよくない。

当時はホームグラウンドで、アピールについていろいろ考えさせられていたので、ちょっとした話だが敏感に反応してしまった。
なんだかえらく、納得したのだった・・・・・・



Chapter 3 講習会講師
(IT技術科の講習を皮きりにその後の仕事)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。