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ある秋の一連の日記 04:Uさん

片手入力じゃないなら大丈夫。

・・・・・・なんて、そんなことはなかった。
現在仕事でパソコンを使っていながら、必要を認められてやってくるくらいなのだから、難しい問題があるはずなのだ。

あまりうまくいかないので、2日目が終わったとき、家で検索してみた。
「まるわん症候群」――検索しても出てこなくて、ここで初めて「マルファン症候群」だと判明した。

詳しい医学的な説明はくらくらしてくるので、乱暴だけれど簡単にまとめる。

結合組織という組織と組織の間を埋める組織の異常により、奇形が起こる。結合組織は全身にあるため、複数個所に症状が現れる。骨格や肺、目、心臓、血管など。
75%が遺伝で、残りは突発的に変異が起こる。

目:近視、網膜剥離、斜視、緑内障、他
循環器:動脈や動脈弁に問題が起きることがある
骨格:背が高くやせた体格、長い手足と指とつま先、偏平足、曲がった背中、鳩胸または漏斗棟、他

実際にマルファン症候群になっている人のブログや投稿などを読むと、大変そうな病気だった。

調べてみて納得した。
目が悪いため、もともと画面に近寄り気味だ。姿勢が悪くなる。
タッチタイピングができないため、手元を見て入力する。かがみこむようになる。
少し入力して変換したら、今度は画面を覗き込む。前かがみのような姿勢になる。

マルファン症候群の人は、背骨が湾曲してしまい、手術をすることもあるそうだ。
その後も姿勢などに気をつけなくてはならない。

「姿勢に気をつけないと、悪化してしまいますよ」と言われて正しても、手元を覗き込んで画面を凝視しての繰り返しで、あっという間に背中が丸まってしまう。

「タッチタイピングができるようになれば、手元を覗き込むことがなくなる。そうすれば姿勢を保てるのでは?」という考えから、タッチタイピングを勧められたらしい。
スキルアップ研修は、仕事に必要な能力を身に着けるためのもの、ということになっている。
でもUさんの周囲の人が求めているのは「障害に合ったよりよい使い方」。
それはもっと違う専門分野になるのじゃないだろうか。たとえばリハビリの専門家とか―― そういうところでパソコンの使い方を学んだと言って、キーボードを駆使してすごい使い方をしている弱視の人もいた。

江津先生の意見は正しい。
わたしでは無理なのだ。スクールでやるとしても、もっと専門性の高い人がやるべきなのだろう。
それを嘆いても始まらないから、なんとか頑張るしかないけれど。

そんな2日間だが、聴覚障害のVさんとWさんは予想の逆で、なかなかスムーズだった。
Wさんは、手許を見ないで入力できる。スピードは遅いながら、ちゃんとしたブラインドタッチ。
Vさんは1つ打つごとに手を見てしまう。でもまあ、なんとか指はいつも正確な位置にある。だいたいのところ。

日本語入力にも慣れてきた。
今回、キーの位置をひととおり、アメリカ式タイピングでやってもらったら、後はずっと掲示板で自分の言葉で入力してもらった。
これは、ある有名大学のどこかの研究室の報告から得た発想。みっちりキー配置を覚えてもらったら、すぐ日本語入力に移行する。キーは慣れで打っているものだから。
確かに、わたしだって、今英語を打てと言われると、すごく遅い。単語単位で日本語を体が覚えているのだ。
そのためには、紙を見て同じように入力するのではなく、自分の言葉でひたすら入力させるほうがよい、というレポートだった。とにかく、日本語に移行しよう、ということで、2日目はずっと日本語。

しかしUさんはまだキー配置を全然覚えていない。
ようやく2段覚えたところで1日が終わってしまったのだもの。
本当はもっとキーの配置を覚えたほうがいい。でもほかの2人が次のステップに進んでいるのに、Uさんだけ取り残されるというのは、気持ちが難しそう。

――平気な人もいるけど、Uさんはたぶん、嫌だろう。
わたしのこういう人の気持ちに関する勘は、結構よく当たる。

仕方なく一緒に掲示板に入力したりしているが、全然ダメ。また片手一本指(つまり合計2本)に戻ってしまっている。

蜘蛛状指という症状があるそうで、そのために普通に入力するのは難しいのだろうか。
Uさん自身は「指が長いので、キーボードが小さすぎて難しい」とよくこぼしている。
指を守ってもらいたいけど、「指がどうしてもはみ出す」「自分の手の大きさでは、指を守ろうとすると不自然に丸めることになってやりづらい」となる。

しかし「もっとこうしたらやりやすいかも」と提案しても、「関係ないです」と言われたりする。
これも勘だけれど、あまり人と違うやり方を好まないようだと感じた。

それならばとにかく、指の配置を守って入力してもらうしかない。
「何を入力するか」が大切なのではなく、「正しい指でキーを打つ」ことだけを目的に今は入力しているのだから。
でも、指は正確にと言われても、どの指で打つべきか覚えていないから出来ない、と言う。
まあ、確かに。だって本当は、まだ指配置練習をしてもらいたいくらいなんだもの。

しかしうまくUさん一人だけを、気分を害さずに指配置練習に誘導できない。
ただ時だけが無駄に過ぎていくように思えた・・・・・・



●8年目:いろんな出会い
Chapter 4 どこかの誰かのストーリー



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