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Yさん 05:脳性麻痺

けっこう日が経ってから知ったが、Yさんは脳性麻痺。電動車椅子。本当に若くて、まだ二十歳前。

ところでYさんは脳性麻痺だが、車椅子。健常者とまったく同じように話せる。ただ手足が麻痺していて、特に足は立てるほどにも力が入らないようだ。
脳性麻痺という人で、足がおぼつかない程度で杖の人も知っている。その人は話し方が滑らかではない。筋肉が緊張して、頭が揺れたりするし、言葉もハッキリしないときもある。

脳性麻痺というと、後者の人が多いような気がしていた。筋肉に必要以上の力がかかって、話し方や歩き方が健常者と違う。手に力がうまく入らなかったり、麻痺があったりして、細かい作業や力加減の要る作業が不得手。

でもYさんは健常者と同じように話せるし、話すときに顔に力が入ったりしない。
ご本人が「話は普通にできます」と言っていたが、本当に「普通に」話ができる。そしてそれを言うのも分かる気がする。脳性麻痺というと、発声がスムーズでない人も多いから。

脳性麻痺というのは、「受精から生後4週までに何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害をさす症候群。」ということだそうだ。(Wikipedia)

その後「脳卒中で脳性麻痺になった場合」というような、リハビリについての記事を見たことがあるが、確かにそれも脳性の麻痺だと思った。でもここでは、従来の「受精から生後4週までに」のケースに限って脳性麻痺と考えることにする。

とにかく「受精から生後4週までに何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害」である。
だから一律ではない。
Yさんの場合は、障害がそういう形で出た。ほかの人は、ほかの形で出る。症状はみんな同じというわけではないのだった。

Yさんは話ができて、足はほとんど完全に麻痺していて、杖のあるなしに関わらず歩くことができないので、一見したところ頚椎損傷の車椅子の人と同じように見える。

ただこのときは、わたしはあまり深く考えることはなく、場当たり的に対処していた。
名称が何であるかより、どういう症状があり、どういうふうに進めるのがいいかということが大切だからだ。

後日、わたしは脳性麻痺の症状について検索してみた。
特にスキルアップ研修では、毎日が「今日の、今の進行」「明日以降の対応」に忙殺されて終わってしまい、たとえ必要があって何かを検索しても詳しく見ることは、あまりない。
日が経って、自分が落ち着いてからふと、「そういえば」と思い出すことが多い。

Yさんは脳性麻痺だと言っていたけれど、最初は頸椎損傷の人と同じように捉えていた。
それというのも「発声、発語は健常者同様」「車椅子」――「電動車椅子だったから上半身にも麻痺がある」という特徴だけを見ていたからだ。
Yさん自身「話は普通にできます」と言っていた。実際のところ、脳性麻痺の人は話すことについては、どのような症状があるのだろう?

自身が脳性麻痺で、ブログやSNSなどで活発に情報を発信している人が見つかった。
記事を見ていると、筋肉の不随意運動について、よく書かれていた。力が入らなかったり、逆に入りすぎてしまったり。
それからしゃべるとき、どうしても発音がはっきりしなかったり、なめらかにしゃべれなかったりすることについて。
日頃からできるだけ歩く練習をしているというのも、よく出てきた。散歩などをするようにして、転ばず歩けるよう、バランスをとる練習をしている。(この方は既に20代30代という若さではなかったので、年をとっても歩けるようにと健常者よりも努力していた。)

もう一人、脳性麻痺の人を見つけて、その人の記事もいくつも読ませてもらった。
最初の人は人を面白がらせる語りに長けていて、このもう一人の人は文学的な文章に長けていた。
どちらも読み物として楽しめて、Yさんとの思い出がだいぶ昔のことになってからも読ませてもらった。

文学的な脳性麻痺の人のほうは、麻痺の度合が大きかった。
もちろん多少は手足を動かせるのだと思うけれど、「起き上がる」「ベッドに移動して横になる」などは難しいようで、介助の人が朝や昼や夜に来る。座らせてもらえば、座ってパソコンに向かったり、テレビを見たりできる。寝かせてもらえば、自然に眠ることができる。その「立つ」とか「座る」とかいった動作が一人ではできない。
パソコンは当然手では打てない。自分で工夫して道具を作って、入力している。
なんとサンバイザーに棒を取り付け、サンバイザーを頭に装着すると、額から棒が突き出ているような格好になる。その棒でキーボードを打つという。

自分が今までスクールで出会った脳性麻痺の人たちを思い起こしてみると、面白い語り口調の人に近い人が多かった。

仮名は適当に割り振って、また時代順ではなく思い出した順に考えてみると――
Aさん:自力で歩いていたが、バランスは完全ではなく偏った歩き方。発語に少し麻痺あり。
Bさん:松葉杖のような、両脇に1本ずつはさむ杖。足はまっすぐではなく、ちょっと不思議な方向に曲がった形。足と杖とを交互につきながら、かなり早い速度で歩く。足を怪我した人がこういう杖を使っているときよりも早いペースで、「カチャン、カチャン、カチャン、カチャン」と杖をつく音が聞こえてくる。慣れているのだ。「カチャンカチャン」と音がしていたのだから、木製ではないのだと思う。
Cさん:杖だけど、1本。発語に少し麻痺あり。

ほかにもきっと出会っている。でも全員は思い出せない。

学生時代に有料ボランティアというのをしたとき出会ったDさんは、文学的文章の人に近かった。
なんという種別になるのか知らないが、施設で暮らしている。ほぼ寝たきり。というのはたぶん、文学的文章の人と同じで「起き上がる」「ベッドに横になる」「座る」などの動作ができないため。
本を読むには、ベッドに横になった状態でちょうど読める位置に、装置を使って本を固定する。ページをめくるのは施設の職員。読書中ずっとそばにいてめくってくれるのか、定期的にやってきてはめくっていくのか、聞かなかったので分からない。
その人は高校にも行けなかったので、夜間高校に通うことになり楽しみにしていて、そこに付き添いでついていくのがわたしの仕事だった。――もちろん一人じゃない、もっと分かる人と一緒に。
車椅子は「座る」というより「横になっている」に近いタイプのもの。
話すのはとても大変そうだった。筋肉をスムーズに動かせないので、必死で力を入れて、首を振りながら一生懸命唇を動かそうとして、ようやく一語絞り出す。あまり必死になると、力を入れすぎたあまり硬直してしまう。

もう一人、Eさんという人も、学生時代のボランティアで出会った。
その人は完全に寝たきりというほどではなかった。たぶん、いざって移動できる。でも立つことはできない。たぶん立たせてもらっても、杖などを使って歩けはしない。
トイレ介助で便器に座らせると、体勢を維持して用を足すことはできる。しかし自分で拭くことはできない。

そういえばFさんという人にも出会った。
Eさんとだいたい同じ。でも、やろうと思えば、スムーズではないが自分で拭くことができる。

そしてまたスクールの話に戻ると、スキルアップ研修で出会ったGさんは、症状がとても軽かった。
Gさんは断続的にいくつもスキルアップ研修を受けていて、とても気さくで人当りがよく、いろいろ話もした。
年に1回か2回、多ければ3回4回来た年もあって、何年かにわたってスキルアップ研修を通して会い続けた。が、Gさんがどういう障害なのか、よく分からなかった。
わたしには詳しい情報は伝えられないし、ましてスキルアップ研修はスクール外の会社向けのコースだから個人情報の管理は厳しい。単に「肢体障害」ということしか知らなかった。
でもどこが障害部分なのか分からない。そのくらい軽度だった。
歩くのも健常者と同じように見える。話すのも食べるのも、違いがないように見える。キーボード入力は遅めだったけれど、「あまり得意じゃないのかな」と見える程度。
――今にして思えば、それが障害だったのかもしれない。でも一目で「ああ、手に力が入りにくいから入力が遅いんだな」とか「ああ、手が震えてしまうから入力に時間がかかるんだな」とか、分からないくらいなのだ。たまたま「すごく速い人から比べると、ちょっとゆっくりめかな」と思う程度。

Gさんはずーっとどこが障害なのか分からず、しかし発達障害や精神障害、内部障害など、目に見えない障害ではないことだけ、知っていた。
「CPサッカーという脳性麻痺の人たちがするサッカーがあって、そのチームに入ってプレイしている」と聞いて、脳性麻痺だったと知った。

つまり本当に、どこに症状が出るか、どの程度の症状かというのは、人それぞれ違うのだ。

Yさんは下半身の麻痺が強かった。歩くことはできない。
上半身も若干麻痺がある。でも痙攣することはないようだったし、少し不自由はあっても比較的自然な動きだった。
だから家の中ではいざって移動するそうだ。上半身の力で下半身を引っ張ることができるわけだ。

首から上にはまったく麻痺は見られず、話すときも自然。スムーズ。表情も動かし方も声も健常者と違いはない。

「脳性麻痺」とひとくくりになってしまうと、どうしてもイメージが偏ってしまう。
Yさんと出会って、そのことを知った・・・・・・



●8年目:いろんな出会い
Chapter 4 どこかの誰かのストーリー



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