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Yさん 06:スキルアップ研修 Word

わたしはスクールに向かっていた。
今日からまたスキルアップ研修。Word。
――Wordなんて実に久しぶりだ。パソコンなど当たり前に使える時代が来て、Wordなんてものは教えてもらう必要性がなくなっていた。このときでさえ久しぶりだったし、今ではもう皆無。

受講者は、脳性麻痺で電動車椅子のYさん。少し前にパソコン入門やキーボードタイピングに来ていた、聴覚障害のVさんとWさん。

VさんとWさんは、パソコンを使ったことがほとんどなかった。
当時はスマートフォンではなく携帯の時代。VさんとWさんは、学校で習うという世代からは程遠い。

VさんとWさんについては、少し前にたくさん語り、このWordのスキルアップ研修についてももう語り済みだ。
VさんとWさんは、3ヶ月にわたり断続的に来ていたスキルアップ研修が、ついに最後。
講師としては目が離せない人たちだったので、なんだか感慨深かった。

「わたしの仕事は、こうしていつも送り出していくのだなぁ」などと思った。

秋はスキルアップ研修が多い。
年間を通して行うといっても、実際は5月の連休明けから秋(8月除く)が、スキルアップ研修の時期。
8月あたりは受講者さんの夏休みの都合もあるし、スクールも実習生さんたちがいない夏休み期間は人員が減るしで、あまりスキルアップ研修も入らない。

いろいろなスキルアップ研修の事情で、年が明けてから次の年度まで――つまり1月~3月はスキルアップ研修がない。まれに何かの事情でどうしても開催しなくてはならなくて、なんてこともあったけれど、本当にまれだった。
12月は開催してもいいのだけれど――年の瀬で、企業さんも受講者さんも、スキルアップ研修の利用が減る。
だから秋で終わってしまうことが多かった。

実際この年も、実は12月にもひとつ、スキルアップ研修があったのだが、もともと申し込み人数が2人と少なく、そして申し込んでいた人2人がいずれもキャンセル。
そのコース自体がなくなってしまった。

もうこれでほぼ最後である。
次はというと、連休明け頃から始まるだろうから、半年近く空くことになる。それも「来年度もやってください」という話があれば、だ。

その秋は、なんだかバタバタとスキルアップ研修での対応に追われていて、スキルアップ研修の時期的な終わりと、自分の気持ちとしての「終わり」が同じだった。

Vさん、Wさん、もっと前に送り出していたXさん、さらにその前に来ていたUさん・・・・・・
わたしが未熟なせいもあるし、逆にわたしも気が付くようになって「こうしよう、ああしなきゃ」と対応を考えた部分もあるし、常に今と明日に追われていた。

でもやりがいはあった。ぐったり疲れるときもあるけれど、それがまたこの仕事の醍醐味でもある。

VさんとWさんに気をとられることが多かった。わたしとしても少しでも多くパソコンにさわって、慣れてほしかった。
Yさんは課題を進めるにあたってもそれほどトラブルがなく、VさんとWさんに比べると、わたしが口を出すことが少なかった。

それでもときどきはYさんと話をした。
特に彼は帰り支度に時間がかかるので、VさんとWさんが帰ったあと、花咲さんと3人で話すことが多かった。
花咲さんにとっては息子のような年だったし、わたしと違って動じることがないので、わたしが訊いていいかどうか躊躇するような質問も自然に出た。Yさんも自然に答えていた。

Yさんはちょうどその年の春に、新入社員として働き始めていた。
その前の年は、障害者の就職のための支援をするところに通っていたという。話を聞いてみると、ちょうどわたしが働くスクールみたいなところらしい。

週末をはさんでのスキルアップ研修だったので、翌日は休みだった。
「明日はそこの学校祭なんですよ」とYさんが言う。

通った期間は一年間だが、懐かしの母校。「明日は学校祭に行くんです」

Yさんとは、このあともうひとつスキルアップ研修をした。
このWordのあとに、文書作成術のコースがあったのだ。

しかし申し込みがYさんしかなかった。
・・・・・・こういった場合、わたしはお役御免になる。いろいろな事情のからむルールで、少人数コースといっても1人しかいない場合は、わたしは呼ばれないことになっていた。

それでもやらせてもらえたのは、たぶん、たぶんだけど、花咲さんのおかげではないかと思っている。
秋の一連のスキルアップ研修であたふたしているのを見ていて、最後にごほうびとして、それほど難しくない内容で、人数も少ないやりやすい講座をさせてくれたのではないかと。
公には不可だと思うので、もしかしたら違うかもしれないし、想像通り花咲さんのおかげだとしても、どういう寝技を使ってやってくれたのか分からない。――だって、花咲さんだって、公的な地位は決して高くないのだから。

Yさんとマンツーマンで行う文書作成術で、この年のわたしのスキルアップ研修は終わりだった。
2人しかいない講座の中で、わたしはYさんの話をいろいろ聞かせてもらった。

それはとても印象に残る話だった・・・・・・



●8年目:いろんな出会い
Chapter 4 どこかの誰かのストーリー



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