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Yさん 11:趣味や楽しみ

YさんはSNSをやっていると言っていた。
主にテレビのこと。テレビ好きなのだそうだ。たくさん見るらしい。

「でも休日は出かけてしまうことが多いので、平日の夜に見てます」

休日、出かける? 一人で?
――と、ちょっと失礼かもしれない驚き。

そう、一人で出かける。
「ちょっと贅沢ランチとかしたり」

Yさんはいつも会社にはお弁当を持って行く。
休日くらいは1000円くらいするランチを食べてみたい。

「この前は錦糸町にあるビルの中のレストランに行ったんですよ」

このときのわたしは、少し前に知人たちと5、6人で集まったイタリアンがおいしくて、印象に残っていた。安いし、おいしいし、イタリアの航空会社の人も利用するという噂。
「あそこはおいしかったですよ」と言ってみると、Yさんはその場でインターネットで調べた。

「**ビル、ビルならエレベーターがあるから行ける」

Yさんがそう言ったとき、ふとどうだったろう?と不安になった。
確か、中2階みたいになっていたかも。エレベーターはあったろうか?

Yさんには「車椅子で行けるところ」という枠がある。Yさんのは電動車椅子だから、がっちりしていて、ちょっと大きく見える。

よく行く店を思い浮かべてみると――
飯田橋の**、地下で、歩道からエレベーターまでの間に3段くらい階段がある。
有楽町の**、2階で、建物の外についた階段しかないから、ダメ。
今はないけれど、家庭料理風のバイキングがおいしかった**、でも車椅子でバイキング、ちょっとバイキングスペースの通路が狭かったな。
それに、あの店の席は椅子じゃなかった。ファミレスみたいなボックスシート風だけれど、車椅子の場合どうなるだろう?

ほかにもいろいろな店を思い出してみたが、これがなかなか難しかった。
エレベーター、トイレ、店内の通路や椅子。
それから食べ物によっては、もしかしたら食べられないものもあるかもしれない。たとえば、口から物がこぼれやすかったり、ホチキス留めが大変だったりするなら、大きなハンバーガーが売りのお店とか。お皿にかっこよく巨大ハンバーガーが、お肉や野菜やフルーツなどで背高のっぽで盛り付けられてくるところって、あるよね。
カレーだったら? ナンをちぎったりするのは大丈夫なのかな。

あれもこれも考えていると、どれだけ門戸が閉ざされてしまうだろう。
どれだけ自分は気軽に考えて、気軽に店を選んでいるだろう。

Yさんによれば、それでも一人で行くときは、行ける店を探して行けるからいいのだそうだ。
会社の人たちがランチに行くときは、彼は置いていかれる。――確かにそうなるかも。行ける場所を考えるのが非常に面倒になってしまう上、行ってから不都合があった場合、1時間の休憩では違う店に方向転換するのが難しい。
きっとYさんのほうも気を遣って、僕も一緒にとは言わないのだろう。

Yさんの歓迎会のようなものは、「Yさんでも行けるホテルのどこどこ」などで行われる。
Yさんにとっては、それも気が引けるらしい。

Yさんとの最後のスキルアップ研修のさなか、休日が入ったので出かけて、恵比寿でなんてことないラーメンを食べて帰った。
ふと、Yさんがこの店に来るとしたら?と、後から考えた。
エレベーターはあったと思う。段差は――あったろうか?
自分が何も考えずに行動していることを思わされた。

Yさんはテレビ好きで、たくさんテレビを見ているので、当然好きなタレントがいる。
まあ彼も若いので、アイドルの女の子なんかのファンだったりするらしい。

なんとかいう女の子アイドルが好きで、握手会にも行った。一人で。
たぶん、CDを買った人は握手してもらえるとか、そういうような企画。
長い行列で、並んでいるとYさんは係の人から、「車椅子だと邪魔になってしまうから、別室で順番が来るまで待つように」と言われて、別室で待ったらしい。

順番が来て、別室から呼ばれていき、大好きなアイドルと握手。
「***ちゃん、やっぱ、めっちゃかわいい」と感動したそうだ。

Yさんは恋もしてみたい。
以前ボランティアの若い女の子と仲良くなったけど、恋人にはなれなかった。

Yさんのひたむきさは、感銘を受けた。
ただ、わたしにとって、こんなふうに深く踏み込んでいくことが正しいかどうか、分からない。
自分の仕事では、受講者さんとの間にきちんとラインがあることが望ましい、と思っている。それは一般の講習会でも同じことだ。サービス業時代に、お客さんとの間にちゃんと一線引いておいたほうが良かったのと似ている。

深く知るということは、プラスもあり、マイナスもある。

・・・・・・この当時はそんなことを思っていた。
でもそれは、仕事として続ける限り、永遠のテーマでもある・・・・・・



●8年目:いろんな出会い
Chapter 4 どこかの誰かのストーリー



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