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ベテランと呼ばれた日

初めてベテランと呼ばれたときのことは忘れられない。

いつもようにスキルアップ研修が始まり、いつものように上級マネジャーが講座の開講を宣言した。
当時は白崎上級マネジャーだった。

玉名上級マネジャーの次の次の上級マネジャーである。

上級マネジャーは部門ごとにいるので、AからDまで4人いることになる。
どの上級マネジャーも忙しい。
担当の上級マネジャーにとって、スキルアップ研修で開講の挨拶をすることなど、ちょっと邪魔なおまけのような仕事だ。それでもなぜか、慣例としてもっと下の立場の人ではなく、C上級マネジャーがすることになっているのだった。

何人もの上級マネジャーのあいさつを見てきたが、そこにはやっぱり性格が出る。
いつも同じ挨拶をする人、日によって違う挨拶をする人。

白崎上級マネジャーは、日によって違う挨拶をする人だった。それも「若干違う」程度の話ではなく、行き当たりばったり、思いついたことを言うようにさえ見えた。
毎回しなければならない注意――「PCルームは飲食禁止」だとか「携帯電話はマナーモードかOFFに」なども、抜けたりすることがあった。

白崎上級マネジャーはその日も、簡単にラフに挨拶をした。
そして、もうちょっと何か言おうかな、と思ったらしく、言葉を続けた。
「ベテランの先生ですから、分からないことは何でも聞いて――」

そんなことを言われたのは初めてで、赤くなるのが分かったし、どぎまぎした。
だって、本当に何か難しいことを聞いてきたらどうするの? 答えられなかったら困る!

そんなそんな、とんでもない――と手を振って、かなり焦った。
けれど、「そんなこと言うの、やめてください!」とか大声で言ったら、それこそ浮いてしまう。

わたしは必死で気を落ち着けた。

まあ、そりゃあ、年を考えれば「フレッシュな先生ですから」とは言えないわな・・・・・・
それに今回の研修はVBAだのAccessだのの応用っていうわけじゃないんだから、何でも聞くといってもとんでもない質問はないだろう・・・・・・

それからときどき白崎上級マネジャーは、「ベテランの先生ですから――」というセリフをはさむようになった。
もちろんそんなの「うちはちゃんとした講師を使ってますよ」というのが半分と、それにどの先生にもそう言ってるのだろうと分かっていたが、やっぱりこそばゆかった。

やがて慣れた。

始まってから、「うそうそ、仕事で使っている皆さんのほうが詳しいことはいっぱいあると思いますよ。こちらこそ勉強させていただくくらいですよ、きっと」と笑って言うことも、できるようになった。
――いや、もちろん、いつもそんな言い訳をしているわけではなく、人や場を見て、会話の一環として、だ。念のため。

白崎上級マネジャーの後も、何人もの上級マネジャーと出会うことになった。
中にはときどき「ベテランの先生ですから――」のフレーズを言う上級マネジャーもいた。

10年も経つ頃には、あの最初に「ベテラン」と言われたときの初々しい驚きはなくなっている。
コンプレックスの強いわたしでも、さすがにいつまでも「自信のかけらもない新人」ではなくなるようだ。

まあね、確かにベテランといってもいいかもね、くらいには思ったりするのである・・・・・・



●9年目:ハートの中心
Chapter 1 ハートの中心



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