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優しさと厳しさ

ほんの4日ほどの短い期間だったが、ビジネス演習コースに行っていた間に、知った顔が増えた。
その中に木花先生がいた。アシスタントテンポラリーで、長いこと働いているベテランだった。

わたしよりも年上のようで、いつも笑顔で、優しげな人だった。

いつも笑顔なのは性格だと思うけれど、優しげなのは見た目の問題でもある。

たとえばわたしは眉がスッと上がっていたり、弓なりになったりしていなくて、いわゆる垂れ眉。だからだいたいおとなしそうで、気弱そうで、転じて優しそうに見られることが多い。
実際に人の顔色を窺ったり、衝突を嫌ってきついことを言わなかったりするけれど、たぶん3割増しくらい「おとなしそう」に見えている。

木花先生も声が柔らかめで、話し方が穏やかで、可愛らしいお顔だった。きついと思われるような顔立ちでは全然ないし、美人というより愛らしい感じ。
わたしよりも年上なくらいの人に「愛らしい」も変かもしれないけれど、とにかくそういうソフトな顔立ちなのだ。

もちろん木花先生は穏やかな人なのだ。その上、2割増しになっているということである。

ある日、テキストを借りるという用があって、花咲さんと専門コースのほうに入っていった。
花咲さんがわたしの必要なものを借りる交渉や手続きをしてくださっている間、木花先生がいたのでふらふらっと近寄っていった。わたしは木花先生は優しげで好きなのだ。たぶん実習生さんたちもみなさん、そうなのだと思う。

木花先生は同じコースのアシスタントテンポラリーさん――つまり同僚の方が仕事をしているところで横に座って、話していた。
「優しくちゃダメみたいなのよ~」

ドキッとした。

わたしも木花先生タイプ。優しく見られるし、時にはなめられる。なめられるというと言葉は悪いが、甘く見られるというわけ。
そのことで、ときどき花咲さんに「そこはきっちり言ってもいいと思いますよ」とやんわり注意されることがある。「先生もそういうところはハッキリ言わないと」とあまりやんわりでなく注意されることもある。

相手のアシスタントテンポラリーさんが、何か言った。たぶん「いいじゃないですか」みたいなこと。
「でもダメなのよ~~! 優しいだけじゃダメなのよ~! 自分でも分かってるの」と木花先生。

何かあったのかもしれないが、わたしが質問するのは出すぎているから、聞くことはできなかった。
でもやはり、優しさは害になることもあるのだろうか?という思いが残った。

そんなことを考えさせられたある日、かつてはバリバリ働いていたが、今は定年後の年になりアシスタントテンポラリーをのんびりやっている先生と、駅までご一緒した。
この先生は、優しさには否定的だった。

もともと聞いたことがあった。
「**先生はテンポラリーでずいぶん長くいるね。あの先生は実習生たちに好かれてるよ。あの人もレギュラーになればいいのにね」
「なれるんですか?」
「難しいけどね。でも無理だね、あの人は。レギュラーになるには、優しすぎる」
「優しくてはダメなんですか?」
「ダメでしょ。いや、テンポラリーならいいよ? でもレギュラーとなったら、やっぱり厳しくないと。でないと実習生たちのためにならないよ」
「そうなんですか」
「あの人は、テンポラリーとしてはいいよ。教え方もいい。でもレギュラーには優しすぎる。友達みたいになっちゃってる」

そうなのか・・・・・・じゃあ、わたしなんて、絶対に無理だなぁ。

そしてまた今回も、「スクールは就職したい人が来るんだからね? 仕事に就く人をコーチするには優しくしてたらダメですよ。ためにならん」

人にもよる。
クリーニング店の店員をしていたとき、クレームになるとわたしではダメなのに、「課長」という名刺を持って中高年の男性が行くと「まぁ、わざわざすみません。ああ、そうなんですか、分かりました~」とすぐに納得してもらえるのを、何度も経験した。
同じことを同じ言い方で言ってもダメなのだ。性別にもよるし、年齢にもよるし、見た目や声やしゃべり方や、いろいろなことで左右されるのである。

男性で、明らかに年もかなり上と分かる人が厳しく注意するのと、わたしが注意するのとでは違う。
わたしが30代後半の頃に、もし50代の離職して次の仕事のためにスクールにやってきた人に、何かきつい言い方で注意したら、素直に受け取ってもらえない確率は大きい。今はもうそれから10年も年を取ってしまったけれど、それでも50代で管理職経験者だったら、しがないPC講師がきつい言い方をしたら、「何様だ?」となりそう。

仕事に就くためにスクールに来ているのだから、厳しくコーチする。それも正論だ。
しかし逆に、学生ではなく社会人なのだから、「教師」として接するのは異議があるかもしれない。

わたしの場合は、ほんの2週間程度のPCプラクティスと、現に今働いている人を相手のスキルアップ研修しかしないので、あまり悩む必要はない。
「実習生たちは学びに来ているのに、あまりに丁寧な言葉で接しているのはどうかと思う」と言われても、わたしはですます調だ。ですます調より、ちょっと敬語寄りかな。
「厳しくコーチするべきだ」と言われても、それは半年や一年と長い期間コーチする先生方にお任せで、わたしは社会人同士として接する。

筋の通った言い訳があるので、楽なやり方をさせてもらえる。

わたしはやはり、今の立場がいいようだ・・・・・・



●9年目:ハートの中心
Chapter 1 ハートの中心



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